精神科Q&A

【1452】癌の末期の父を、嫉妬妄想のために激しく責める母


Q父が76歳で脳腫瘍との診断後、術後入院して9ヶ月後に亡くなりました。
本来でしたら余命の宣告を受けた父が少しでも心安らぐように一人娘の私(42歳結婚して主人と二人の子供がおり実家の母とは別に住んでいます)と母(69歳)とで出来る限りの看病につとめる事が温和でやさしかった父へのせめても恩返し思っておりました。

ところが昨年の術後、母からの電話で父が隣に住んでいる独り暮らしの女性Aさんと7年ほど前に何度か二人で旅行に行っていたらしいという話を母の知り合いの女性Bさんから聞いたと電話で延々と話しだしました。この時父は意識や耳ははっきり聞こえているものの言葉を喋る事は出来ずその父の枕元で何度もAさんの話や恨み事を話していただろうことが母の言葉の端々からうかがえました。母は自分の兄妹、父の妹や叔母に電話をかけ親戚じゅうが知っていた話だったと繰り返し訴え私は全て電話でたしかめましたがそんな話を親戚が知るはずもなく母から言い出した話であり、反対に皆が驚いていることを聞きました。私は間違った情報である事と父がそんな事をするはずがないからと何度も諭しましたが父が何にも話せない状態なのでみんなが何もなかった事ととして逃げているだけと言い張りました。それから父の病状は悪化する一方で不信感を何度も訴える母に情けなさや腹立たしさで病院の裏口ロビーで言い争いになり病院からの帰りの車で何度涙したことでしょう・・・。

私は母にAさんの話をした母の知り合いの女性Bさんに何とか連絡をとり話を聞きたいと思いましたが、怒り心頭気味の私がこの方に失礼なことを言うのではと決して連絡先をおしえてくれませんでした。
母にとってこの方は自分の話をよく聞いてくれて自分の味方になってくれるとても良い人だったようです。もともと神経質で思い込みが激しい母でしたから私の主人は今は何を言っても思い直すことはないだろうし精神的に少しおかしいのでは?という心配もしていましたが私は元々の母の性格もあるのでまさかという思いがまだこの時はありました。

が、つい先日です。父が亡くなり、それでもどうにか表面的にはおちついてきたかのような母でしたが父の百ヶ日の法要の前日に警察から電話があり、母が隣の女性Aさんに自分の腹だたしい思いを綴った手紙を二通送りAさんは事実無根の内容に困惑し警察に相談にこられたという事でした。やはり隣の女性Aさんと父はまったく何もなくその事を直接母に会って話してもらいました。その時母は自分が思い違いをして迷惑かけましたと謝ったにもかかわらず、Aさんが帰られた後にもうお父さん(父)もいないので隣の女性Aさんが一方的に何もなかった事にしただけだと言い出しました。この日最初に母に話したであろう母にとって良い人である知り合いの女性Bさんにも何とか連絡をとり家まで来てもらいこれまでの事の始終を話しましたが、やはりこの方も初めに父と隣の女性の話ををしたのは母のほうであり自分からそういう話はしていない事を母に告げられましたが、母には納得も理解もせずやはりいいように言っているだけと言い張り、ここまで来ると私も愕然となり途方にくれながらもやっとこのサイトにめぐりあえました

精神科Q&Aでいろんな方の相談を拝見して一刻も早く精神科を受診させなければと思い切羽詰まって言いよった私にはどこも悪くないので行かないと言い放っていた母でしたが、私の主人が「娘である私が不眠になり悩んでいるから一緒に病院についてきてほしい」と説得しやっとの思いで連れて行き前もって連絡をしていた事もあり受診することが出来ました。

診察の結果は、妄想障害でありこの母の年齢では薬を飲んでもほとんど妄想は消えることがなく薬を出しても飲まれないだろうしそれより薬を飲ませることで母娘関係が悪くなると言われ、薬をだしてもらえませんでした

精神科Q&Aの林先生のお答のなかに薬の効果を書いておられましたが、薬の効果は歳が関係するのでしょうか?お考えをお聞かせください。

実は母については、この事だけでなく随分前から母の性格に振り回されてきたという思いが多々ありました。これまではすべて性格だと思っていましたが、このサイトを拝見しますと実は精神的な病気が随分前からあったのではと疑問に思ったりもしております。

話が前後するかもしれませんが母についてもう少し書かせて頂きます。
母は近所の方たちと何かしらうまくつきあえない性格で、私が幼少の頃より腹を立てては暗い顔で思い込む事がありました。
30年ほど前新しく建てた家の環境になじめずノイローゼ状態になり、住んでいた6年間大声で泣き叫び父に罵声をあびせ、たまりかねた父も反論しけんかばかりの日々で、その当時私にとって暗く逃げ出したい思いの日々でした。
母本人は、あの頃うつだったと言っていますが、病院にはかかっていません。

その後今の場所に家を建て直しましたが、その後もなお前の家の事で日をおいてですが何度も思い出したように父を責めて、言い出したら気持が治まるまで何度も繰り返し言い続けます。今は父が亡くなりこれも毎日ではありませんが思い出したようにお父さんは自分を大事にしてくれなかったと恨み事を言ったかと思うと、今では感謝していると言ってみたりしています。

5年程前の話ですが・・母が若い頃父とお見合をする前に結婚する予定だった人がいてその男性Cさんとは母の父母(私の祖父母)の反対により結婚できなかったらしいのですがその男性Cさんが急に母と連絡を取りたがっているらしいという話を聞き一時期会ってみようかと有頂天気味な母の話に私も父もびっくりするも、なぜかしばらくしてその男性が隣の女性Aさんとお付き合いしている事になっていて、その当時腹だたしい思いを私や父にぶつけていました。それも近所の方がわざとつき合わせるようにしくんだことだと言っていました、これが原因で隣の女性に罵声をあびせていますが今回初めてその男性の事も隣の女性Aさんにお聞きしましたが何の話だか?と本当に寝耳に水という感じでした。

その時自分がそんな罵声をあびせるような事は言ってないと母は言い張ります。覚えていないのか・・・その当時の母はかなり怒ってお隣のAさんの話を私や父にしていましたのでなぜあの時罵声をあびせられたかわからないというAさんのお話は納得出来ます。

当時母はとにかくその男性Cさんがお隣に泊りに来て笑い声が聞こえたりその男性をマッサージしてあげたりしていて何ともそれが不愉快でその事はお父さん(父)も知っていると言っていましたが母からの話は聞いているも父が直接見たという話は聞いていません。また現在もこの事について同じ話を繰り返しします。私はたとえ事実であったとしても独身のAさんがどなたと付き合おうと既婚の母が腹を立てるべき話ではないと言いましたが聞く耳を持ちません・・・

また、同じころのことですが、父の留守の間税務署から来たと言って男性が家の中の引き出しをあけてみせてくれと上がり込まれたが主人(父)がいないのでと言って帰ってもらったと母が言ったことがありました。税務署に確認したらそんなことはないといわれ、この近所は変な人ばかりいるとますます近所の方たちに不信感を抱き始めました(事実確認は出来てません母からだけの話です)

最近ではその結婚するはずだった方の話がますます飛躍してシナリオライターにでもなれるのではというくらいの話になっています。こまったことに、いろんな方に父の事や結婚するはずだった男性Cさんの事を含めたお隣の女性Aさんを非難するような話をしていて申し訳ない気持ちでいっぱいです・・

私の中では小さい頃より気分屋で激しい面のある母の性格に振り回されてばかりきたとゆう思いがありますが、母は病気なのでしょうか。また私の子供に祖母としての思いやりややさしい一面もあります。それに、他の日常会話はまったく普通に出来ます。するとやはり統合失調症ではなく妄想障害なのでしょうか?ととにかく疑問の日々です。

ここに書いています事は病院でもカウンセラーをとおして医師に伝わっていると思います。母を見て頂いた先生は、統合失調症のような病気であればもっと奇異であるので妄想障害のみとの見解ですやはりお薬は効果がないのでしょうか? 


林: 結論を先に申し上げますと、薬物療法を試みるべきです。

診断としては三つ考えられます。
妄想性障害、統合失調症、器質性精神障害です。
このメールに書かれた症状が本当にすべてであれば、妄想性障害の可能性が最も高そうです。けれども、妄想性障害と統合失調症の違いは、一応は幻覚(幻聴をふくみます)の有無で、お母さまに本当に幻覚がないかどうか、これだけではわかりませんので、その意味では何とも言えません。もし幻覚があれば、統合失調症ということになります。

また、発症年齢が不明です。5年前には発症していたようですが、それ以前の、性格にみえていた部分が、実は病気の症状だった可能性も否定できません。
そうなると統合失調症の可能性のほうが高くなりますが、それでも妄想性障害の可能性が消えるわけではありません。

そして、この年齢の妄想は、器質性精神障害も考えなければなりません。
いえ、器質性精神障害は、どの年齢でもあり得るといえばあり得るのですが、高齢になればその率は高くなりますので、発症が5年前ごろだったとすれば、器質性精神障害も考えるのが常識です。そうなりますと、MRIなどの検査が必要ということになります。

そして、この三つのどの診断名だったとしても、妄想に対して薬の効果は期待できます。妄想性障害は、統合失調症に比べて薬が効きにくいと言われていますが、そうともいえないというデータもあり、真実は不明というのが正しいと思います。
また、妄想性障害と一口にいっても、実はそこにはいくつもの種類の病気が含まれていると考えられています。その中で最も薬が効きにくいとされているのは、パラノイア paranoia と呼ばれるもので、これは文字通り妄想以外に何の症状もない(つまり、人格も全く正常。この【1452】は、パラノイアではないと思います)という、稀な疾患です。しかし、パラノイアには事実上薬物療法を続けて行うこと自体ができませんので(自分が病気とは決して認めませんので、自発的に薬を飲むことはありえません。かといって、強制入院させるほどの症状でもないので、結局は薬を飲んでいただくことが出来ないのです)、本当に効かないかどうかは不明です。

ところで、

この母の年齢では薬を飲んでもほとんど妄想は消えることがなく

などということはありません。高齢だと妄想に薬がほとんど効かないなどというのは、何の根拠もありません。
別の医師にかかることをお勧めします。そして、薬物療法を試みるべきです。


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