精神科Q&A

【1413】自分が病気ではと心配する医学生 


Q:  私は医学生で、今精神科に4週間の予定で統合失調症やうつ病の患者さんの外来、病棟診療のお手伝いをするという実習をしています。
精神医学の勉強をしていて、統合失調症の文献を読んだり、専門家の先生のお話を聞いたりしているうちに自分も少しおかしいのではないかと心配になってきました。私は、昔から金縛りや入眠時の幻覚(特に幻聴)を体験していて、その体験を先生に話してみると「それらは一種の異常体験だ。」と指摘されました。また、統合失調症の初期症状として入眠時の幻覚、睡眠障害が出現することがあるともおっしゃっていました。
以前はそれらの現象を生理的なことだと考えていてあまり気にしていませんでした。しかし、そのようにいわれ、入眠時、出眠時のあやふやな思考(全然関係ない人、場面がみえたり、人の声が聞こえたりする、何の連関のない場面展開など)をすると、目が覚めてしまい、最近、眠るのが怖くなり、安眠できていません。
普段は、幻聴が聞こえることがないのですが、「もしかしたら自分も統合失調症になってしまうのではないか?」と言いようのない不安感に襲われてしまっています。この状態がますます、精神を不安定にして些細なことも「これももしかしたら異常体験なのか?」と気にしてしまっています。
元々、他の疾患を見ても「もしかしたら自分もこの病気になってしまうのではないか?」と悩むことがあるのですが、これも自分の思い込みの一種でしょうか?ちなみに家族・親戚に統合失調症の者はいません。


林: 毎日いろいろな病気の人に接する医学生が、自分もその病気ではないかと心配することは比較的よくあることで、通常は正常範囲の心理です。そしてあなたのご心配も、その範囲のものだと思います。
入眠時の幻覚が生理的な(つまり正常な)体験であることは【1410】をお読みください。

統合失調症の初期症状として入眠時の幻覚、睡眠障害が出現することがあるともおっしゃっていました。

そんなことはありません。(睡眠障害のほうはそうですが、睡眠障害そのものは様々な原因がありますので、これだけでは診断価値はあまりありません)

そして、出眠時幻覚も、やはり生理的に十分あり得るものです。やはり【1410】で説明したレム睡眠の障害(「障害」というと重大に聞こえますが、治療を要するほどのものではありません)によるものです。

もしどうしても原因をはっきりさせたいということでしたら、一晩中脳波をとる、「終夜脳波」の検査によって、睡眠周期(レム睡眠、ノンレム睡眠の周期)を調べればわかりますが、そこまでする必要はないと思います。このメールに書かれた症状だけでしたら、特に心配せずに毎日を送ったほうがいいでしょう。


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