精神科Q&A

 【1377】うつ病は快方に向っているのですが、会社の理解がなく、転職することにしました(【1187】【1232】のその後)


Q【1187】、そして【1232】で回答をいただいた30代後半の男、会社員です。あれから4ヶ月経過した今の状態をお知らせします。

・気分等
 極端な落ち込み(落ち込んだらなかなか元に戻れない状態)は劇的に改善されました。
ただ、これは主に仕事についてのことですが、「自分のこと以外はやらない」ことに徹しているから、というのがいちばん大きな理由だと思います。
実際、それまでは自分の仕事+遅れている仕事のフォローが当たり前の状態だったので、他の人のフォローを排除することで自分にかかるストレスを軽減できたのではないか、と考えています。
 それでも、1日周期位で落ち込み、イライラ、不安感、不眠などの従来からの症状は相変わらず出てきます。改善された、というより回復されるまでの時間が、自分で耐えられる範囲に収まってきた、といった方がいいかもしれません。

 会社として見れば、私の仕事に対しての姿勢が激変したことで評価は急降下です。うつ病である、ということで社内のネットワーク管理者を解任されました。もともと、ネットワーク管理者といっても、日常のパソコンのメンテナンスが主な作業だったのですが、解任の理由に「うつ病だから」と遠回しに言われたことが残念です。
 また、9月中旬に上司(経営側)から遠回しに退職するように勧告されました。
理由としては、うつ病の他に糖尿病(食事制限と運動療法で対処できるレベル)、網膜症、起立性低血圧があるのですが、会社で数回失神発作を起こしていることから、いつ倒れるかわからん者を使うわけにはいかない。1年でも休職しろ、という話でした。
 会社の規定で、休職期間中は一切手当が出ませんから、籍は会社にあっても無職状態になるわけです。さすがに日常の生活費や医療費のことを考えると休職する訳にはいきません。

 以前から現場の上司とのソリが合わず、会社に行くこと自体がものすごいストレスになっていたのですが、この際転職することにしました。主治医にも相談しており、私の場合職場環境が大きな要因となっているのは明らかなので、転職することで別のストレスが出てくるにしても差し引きでプラスになると思う。ただ、リスクはありますよ。という回答をいただきました。

・他の病気等
 7月と8月に起立性低血圧で失神し、頭を打撲しました。幸い怪我はありませんでしたが、上司の「いつ倒れるかわからん者を使うわけにはいかない」発言の根拠になる部分でしょう。会社としてはもっともな主張なのですが…

 また、糖尿病の治療として、食事療法と運動療法を取り入れています。2007年4月に87Kgあった体重が9月には77Kg。10Kg落としました。
一番落とした時は72Kgだったのですが、低血圧症状がかなり頻繁に起きたため、医師と相談の上で75〜80Kgの間を維持しています。
血圧は72Kgだった頃は上が90台、下が50台が多く、今では110台/80台で少し低めですが安定しています。

 糖尿病の合併症で糖尿病網膜症がやはり出ていました。それなりに進行してしまっているのですが、あわてて治療する必要はなく、経過観察でよいとの事でした。

・今後のこと
 30台後半ということもあり、転職は容易なものではありません。しかし、ここしばらくの間の気持ち的な問題(イライラや不安など)も限界にきており、リスクを承知の上で転職する選択をしました。
 新しい職場に行けば新しい問題が出てくるとは思います。しかし、今の会社に行きたくない、上司の姿を見たくないと思う気持ちがなくなるだけでもすごく楽になれます。
うつ病だけでなく、他にも病気が発覚したことから、健康上不安のある者、として会社にマークされ、行動や発言を逐一報告している内通者までいます。それは上司に話していないことを上司が知っていたりするので明らかです。こんな状態で仕事を続けていっても良くなるものも治らないような気がします。
 うつ病=精神病、確かにそうなのですが、相変わらず昔の偏見がそっくりそのまま残っている会社はまだまだたくさんあります。お前はうつ病だから…そういうレッテルを貼られると自分で剥がせない環境はまだまだたくさんあるのです。

 初診の時から考えてみれば、間違いなく快方に向かっています。死にたい、と思う気持ちもほとんど無くなりましたし、そこそこ行動的にもなってきました。
ただ、大好きだった旅行はまだためらっています。運動のために自転車で2時間走ってみたり、そういう行動を起こす意欲は確かに出てきていますが、やはり心のどこかに種火がくすぶっているようです。突然、なにもかも面倒になったり。それこそ、朝顔を洗うのが面倒だったり、風呂に入るのが面倒だったり。だいたい1日2日で元に戻りますが。

気の合う仲間とは馬鹿な話をして盛り上がる事が多くなってきましたが、苦手な相手には徹底して関係を拒んでいます。これは以前より顕著になっています。
もうちょっとつきあうことになりそうですね。焦らずやっていこうと思います。

 社内には「うつ病にならないためには」などと書かれたパンフレットが掲示されています。会社としては心の健康にも配慮していますよ、とでも言いたいのでしょうが、実際の所はあぶり出して排除する手段として使っているようです。最近聞いた話では、過去にも数人うつ病の治療に専念しなさい、という名目で自主退職していった人が何人もいたとか。企業の体質ももちろんですが、社会全体の偏見の目は依然厳しいものがあります。一日でも早くこの偏見が無くなってくれることを願っています。


林: 経過をご報告いただきありがとうございました。
そうでしたか、転職されたのですか・・・

社内には「うつ病にならないためには」などと書かれたパンフレットが掲示されています。会社としては心の健康にも配慮していますよ、とでも言いたいのでしょうが、実際の所はあぶり出して排除する手段として使っているようです。

確かに、こういう事実も社によっては存在することは否定できません。
うつ病の当事者であるあなたにとっては、これは憤懣やるかたない事実だとお察しします。
しかしこれは単純に会社が悪いとか偏見だとか言い切れないところもあります。
たとえば【1301】の質問者の方の職場の他の「うつ」の人々のように、擬態うつ病が一定以上にはびこれば、会社としてはいつまでも仏の顔をしているわけにはいかないでしょう。うつ病の真の姿が把握されれば、それを排除しようとする職場は著しく少なくなると私は考えます。それがかつて擬態うつ病を出版した意図でもありました。

この【1377】の方のうつ病は、改善に向かってはいますが、まだ寛解とはいえない状態であることは明らかです。根気よく治療を続け、さらに改善・安定されることを願っています。


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