精神科Q&A

  【1376】気分の日内変動がないと、うつ病ではないのでしょうか。


Q:友人(女性40歳)についてご相談します。
友人は、去年から会社の合併や母親の入院看護等で疲れているのに眠れない、眠れても早期覚醒してその後眠れないなどの睡眠障害を持っていました。
そしてよく頭痛もあり、歯がどこも悪くないのに歯が痛いと歯医者に行き、歯医者さんから仮面うつ病ではないかと言われたそうです。
でも、それ以外にはうつ病を疑う精神症状もないためただ、眠れてないからだと思っていたんです。

その友人は、この春に会社の早期退職制度に応募し、会社を退職しました。
退職を決めてからの友人は、第二の人生を始めるんだととても意欲的で、海外旅行や、いろんな資格も取りたいと張り切っていました。
それが、退職したのを期に実家に帰ったころ(友人は独身です)から、だんだんと様子がおかしくなりました。
睡眠障害はもちろん、もともと食べることが大好きだった友人が食欲がなくなり何を食べてもおいしく思えないといってきたんです。
そして、楽しみにしていた海外旅行に二人で行ったときも何も感動しないと楽しめていませんでしたし、すぐ部屋でベッドに横たわっていました。
夏になると、「何もしたくない。どうしていいかわからない。八方塞がりだ。私は誰の役にも誰のためにも生きていない」と言い続けるようになりました。
そして夏の終わりには、まったく眠れなくなったうえに食事もほとんど摂れなくなり、心療内科に通い始めました。

友人の精神的症状は、何もしたくない。何かする意欲もない。将来に希望も未来も感じられない。
今まで楽しかったことも楽しめない。自分には価値がない。生きていくのがしんどい。
悲しい。八方塞がりで何も考えられない。
身体症状は、睡眠障害、食欲の低下、胃のむかつき、頭痛。
上記が受診時の状態でした。

しかし、病院では、うつ病ではなく睡眠障害と診断され入眠剤としてマイスリー、そして眠剤補助としてアンデプレ半錠を夜寝る前に処方されたようです。
しかし、眠れても朝早く目が覚めることは改善されず、動悸もはげしくなったため1週間後に、マイスリーはそのままで、眠剤補助の薬がテトラミド半錠になりました。
テトラミドを飲み始めてから少しは長く(6時間くらい)眠れはじめたのですが、頭痛がひどくなり、手足も震え、目も焦点がなかなか合わなくなり、テレビさえ見られなくなりました。
2週間後にやはり、マイスリーはそのままに今度は眠剤補助としてレボトミン半錠(夜のみ)を飲み始めました。
しかし、眠れてもこの間約1ヶ月、うつ状態は悪化の一方でとうとう胃のむかつきから吐き気をおこし食事も一切受け付けなくなり、私には電話で外に出ることもできない、電車にも乗れない、お風呂に入ることも、歯を磨くこともしんどい。普通のことさえできない。
何もできない、寝たきり状態だ、耐えられない、このまま生きていてもみんなに迷惑かけてしまう、死にたい、死に場所を探してしまうと訴えてきます。

この状態でも友人の主治医は、睡眠が足りないからだと言うそうです。
私は、ずっと「うつ病」ではないかと思っていましたから、友人に抗うつ薬は処方されないの?って聞きました。
友人は、先日、先生に「私はうつ状態ではないのでしょうか。抗うつ薬は処方されないのでしょうか」と聞いてみたそうです。
そうすると先生は、「あなたはうつ状態だけど、日内変動がないので抗うつ薬は処方しない。今までの経験上、日内変動がない患者に抗うつ薬を処方したら症状が悪化したから」と言われたそうです。
そして、今は、食事が摂れるようにドグマチールとロンラックスを処方されたそうです。
友人は内科にも行き、血液検査、胃カメラもして内科的に問題ないそうです。
最初のころ、まだ散歩もできてた友人が今は、ベッドに寝たきり(眠ってはいません)で、どんどん状態が悪くなっていきます。
私は、励ますことはしていなくて、友人の話を聞くことに徹していますが、「他の先生の話をきいてみてはどうかな」とは言ってみました。
友人は、「分かっているけど、気力がない」と嘆くんです。
友人は、日内変動はなく一日中しんどいそうです。
日内変動がないと、うつ病ではなく抗うつ薬を使うことはできないのでしょうか。
ちなみに友人は副作用がでやすい体質みたいで、抗うつ薬に耐える自信も体力もないと、治りたいけど耐えられないと堂々巡りをしています。
友人は、日内変動がないのでうつ病ではないのでしょうか。
悪化する友人が心配でたまりません。 


林: この友人の方はうつ病だと思います。現在の症状は重症です。抗うつ薬による治療が必要です。

「あなたはうつ状態だけど、日内変動がないので抗うつ薬は処方しない。今までの経験上、日内変動がない患者に抗うつ薬を処方したら症状が悪化したから」と言われたそうです。

これはあまりにひどい医者です。このような独断的な医者の治療を受けていては、改善は望めません。すぐに病院をかえるべきです。
 
「あまりにひどい医者」と言いましたが、しかし、方針を明言していただいたのはよかったと思います。その意味では良心的と言えるかもしれません。もし明言されないと、はたしてひどい医者かどうかも判断できないことになり、それは文字通り最悪です。

けれどもそんなことを言っている場合ではありません。うつ病は、治ります。しかし、適切な治療を受けなければ、治りません。早く別の先生に診ていただくよう勧めてください。

悪化する友人が心配でたまりません。

心配しているだけでは何も解決しません。


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