精神科Q&A

 【1358】うつ病の義母の全く予期せぬ自殺


Q先生の著作であるうつ病の相談室を読ませて頂きました。素人にも分かりやすく書いてあり感動いたしました。私がうつ病にかかっているわけではないのですが、身近の方がこの病気にかかっていたのでご相談させてください。

さて、うつ病にかかったのは、妻の母親で70歳でした。
4ヶ月前ごろから気分が優れない等の理由で精神科の病院に受診して薬をもらっていました。(薬の種類は、ソラナックス 0.4mg 一回一錠 一日2回、アモキサンカプセル 25mg 一日2回 でした。)

病状が悪化したのは2ヶ月前からでした。けれども、はために会った際にも普通の会話ができるし、診断した精神科の先生が診断した結果もそれほど深刻なものではありませんでした。病状が改善しないようなのでソラナックスを0.4gから0.8gに増やして様子をみようということでした。(高齢でもあるし薬を急には増やせないとのことでした。)

ところが、診察をした当日の夕方にお母様は首をつって自殺してしまいました。

(診察をした精神科の先生に報告したところ大変おどろいておられました。先ほどもお話したように、診察の際に話しているときには笑顔もあり、”希死念慮”のようなものも全くなかったのでこのようなことになるとは精神科の先生にしても想像すらできなかったとのことでした。)

うつ病にかかった原因は、お母様は肺に癌が再発しており、それを苦に自殺されたようです。(以前も別のところの癌を治療して抗がん剤治療が非常に苦しかったようです。)ただし、今回再発した癌はとても小さく、すぐに命にかかわるようなものではありませんでした。

今さら何を言っても結果論なので細かい事はよいのですが、一点だけおききしたいことがあります。

私も、会社の同僚などがこれらうつ病にかかって会社を辞めたり、また自殺してしまった人などを知っています。ところが、これほど急激に症状が悪化した例を見たことがありません。これは、きわめてまれなケースで個人的な性格からくるものでしょうか?
また、このような急激な病状の悪化をあらかじめ予測することは不可能なのでしょうか?

限られた情報でそちらでも何とも言えないこととは思いますが、このような事例がありましたらお教えください。

お忙しいところ誠に申し訳ありませんが以上よろしくお願いします。


林: 治療を開始した矢先に予期せぬ自殺。大変残念なことで、お悔やみを申し上げたいと思います。

このような事例がありましたらお教えください。

それはもちろんあります。しかし、もちろん、例外的なものです。

これは、きわめてまれなケースで個人的な性格からくるものでしょうか?

それはわかりません。わかりませんが、性格よりはやはり病気の症状とみるべきでしょう。

また、このような急激な病状の悪化をあらかじめ予測することは不可能なのでしょうか?

残念ながら、このケースでは予測は不可能だったと思います。
もちろん結果から逆にたどれば、「軽いようにみえてもうつ病なのだから、もっと時間をかけて話を聞けば自殺のサインがあったかもしれない」と言うことはできますが、すべてのうつ病の人にそのような姿勢で臨むことは現実には不可能であり、結論としては予測不可能と言わざるを得ません。

「自殺には必ずサインがある」という考え方もありますが、あとから振り返ればともかく、実際には(この【1358】のケースほど急激ではないにせよ)予期せぬ自殺は少なからずあります。現時点では「予期せぬ自殺はある」という事実を認識することが大切であると私は考えます。


精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る