精神科Q&A

 【1300】71歳の母は統合失調症と思われるが、いまさら治療しなくてもと私は思っている


Q母は現在71歳で、昨年末に父は72歳で亡くなりました。
私は30代後半独身で実家をはなれて仕事をしており、
上の兄は中小企業のサラリーマンで妻子がおり別世帯、
下の兄は母と同居、交通事故後遺症で障害者です。

私は母が統合失調症ではないかと考えています。
母のいわゆる「ひきこもり」のような暮らしぶりは私が幼稚園年中頃はすでにそうでしたので、母の非社会性を「普通」のこととして私は成長してしまいましたので、入院を要するような精神病でないのなら、母の個性としてこのまま老後を送って欲しいと考えています。しかし、統合失調症ならばやはり要治療なのだろうと思っています。

最近の母は、家に近所の人が空き巣に入るといって警備会社と契約し、玄関はオートロックに変え暗証番号と普通の鍵とで3重ロックになっています。
お風呂場や換気扇ほか、通気できるようなところはガムテープや新聞ほかで完全にふさぎ、近所の人から「スプレーでシューっとされる」のを防いでいます。
家の中の扉なども外からの侵入者が開けられないように目張りをして、かつドアノブを紐で柱などにくくりつけ、開けられないようにしています。
夜お風呂にはいるときも暗いまま入りますし、窓には紺色ののれんなどを貼り付け、外から中が見えないようにしています。

近所の人(特定の範囲の人だがメインにする「犯人」・母がつけねらわれる原因は母に会うたびにいろいろ変わります)から、「つけられている」「空き巣にはいられた」ということを地元の警察署や法務局に電話や直接出向いて訴えます。
地元警察が相手にしてくれないと新幹線で大阪や東京まででかけて本省のほうに抗議にいこうとします(しかし、家出人のような扱いで連絡がきます)。
保健所の職員の方は、警察からの連絡を受けたり、または母が直接保健所に電話したときも含め、空き巣に入られた家の中の状況を確認するような表向きで母の様子を見に行ってくださるようです。
保健所の方がいらしているとき、屋根裏で足音がするから見てくるからそこにいてくれといって押入れの入口に職員の方を待たせて、本人は押入れから屋根裏にあがり、「足跡があった」などと話すそうです。
その他、自宅から見える車のナンバーを「監視している」といって控えにいったり、私はこんなことはしていないと言って、クローゼットになかに厚紙をならべていたり、毎日、「シューとされた」時刻を即時にメモしたり、その日にあったことを日記のように書き記しています。

今まで自傷は一度もなく、他害は亡き父や同居している兄を殴る・蹴るをするときがある程度で、ご近所の方にはなく(隣の家の庭の木を無断で切ったことはある)、ご近所の方はほぼ無視でとおしています。(気が向いたら慣れない自己中な世間話を短時間することもある)。

自傷(まったくない)・家族以外に他害がないことが私の中での安心要素で、母は10代のころに心療内科を受診していたことがあり、20代の結婚前にも受診経験があるのだそうで(過去の話として本人より聞く)、昔から母の中で同居してきた病気ならいまさら治療しなくてもと私は思うのです。

母は薬アレルギーがあるといって薬は強く拒否しますし、父がやっとの思いでいかせた精神科も初日だけで続きませんでした。
本人が自ら病院に行くことは考えられませんので、強制以外にありませんが、経済的な負担と、退院後に本人が家族を恨むことが想像されて、病院での治療は考えたくありません。

私が19歳のときに母の笑い方が薄気味悪いのに気がつき、母に内緒で精神科に父と相談にいき、そのときは薬を処方され、母の飲み水にかくれて混ぜて飲ませていました。父がガンで母の面倒を見れなくなるまで続けてくれました。

母のお姉さんは精神病(病名は知らされていません)で通院・入院治療をずっと続けています。母のように薬や精神科の拒否がない分、治療歴はほんとうに長いです。
その他、母の親族に特記する病歴はありません。

長文で申し訳ありませんが、ポイントでかまいませんので、何の病気と思われるか? 要治療か? をご教示ください。
教えていただけたら、母の対応も地元の医療機関と相談する心づもりができます。
ぜひよろしくお願いいたします。


林: あなたのご指摘通り、お母様は統合失調症に間違いないでしょう。発症は、これもあなたのご指摘通り、遅くともあなたが幼少の頃、つまりお母様は統合失調症を発症してから30年以上経過していると思われます。

私が19歳のときに母の笑い方が薄気味悪いのに気がつき、母に内緒で精神科に父と相談にいき、そのときは薬を処方され、母の飲み水にかくれて混ぜて飲ませていました。父がガンで母の面倒を見れなくなるまで続けてくれました。

この薬によって、症状は良くなっていたのですが、お父様の病気によって、薬を飲ませることが不可能になってから、悪化したのでしょう。

入院を要するような精神病でないのなら、母の個性としてこのまま老後を送って欲しいと考えています。しかし、統合失調症ならばやはり要治療なのだろうと思っています。

71歳という年齢を考えますと、「個性としてこのまま老後を送って欲しい」というのも一理ある考え方です。たとえ統合失調症であったとしてもです。治療を今から始めても、生産的な生活が送れるようになるという期待はもう持ちにくいからです。

けれども、今の状態が一定以上に悪ければ、やはり治療は必要です。また、今後さらに悪くなるという見込みが強ければ、その場合も治療が必要です。

「一定以上に悪ければ」の基準は、一つはご本人の悩み・苦しみです。この【1300】のケースは、本人の悩み・苦しみはそれほど重篤でないともみえますが、被害妄想に悩み苦しんでいるともいえます。
また、別の基準として、周囲の悩み・苦しみがあります。

家族以外に他害がないことが私の中での安心要素

とのことですが、暴力が、ご家族に対するものだからそれは容認できるというものではありません。また、ご家族以外に対しては、暴力こそないものの、メールの内容を見れば、周囲の多くの人に迷惑をかけていることは明らかです。あなたは身内をひいき目に見ていると思います。

また、今後さらに悪化する見込みについては、薬を中断してからの悪化の程度からある程度判断できます。このメールからは、いつ中断されたのか、その後症状が変わったのかどうかがわかりませんので、判断できません。

繰り返しますが、

母の個性としてこのまま老後を送って欲しい

というのは一理ある考え方です。
けれども、診断はほぼ確実に統合失調症ですから、上にお書きしたようなことをよくお考えのうえ、今後の方針を決定してください。


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