精神科Q&A

 【1292】74歳の母の毎日の暴言で家族がつぶれそうです


Q:  74歳になる母のことです。我が家は父(75歳)と一人息子の私(44歳)、私の妻(41歳)、2人の子どもという2世帯同居の6人家族です。私は15年前に結婚しましたが、当時から母は妻に不満を持っていました。妻の良くない評判(仕事が遅いなど)を聞いたためです。それでも、表面的には妻と母が言い争うようなことはめったになく、よくある一般的な嫁姑問題で、母の愚痴はよく聞かされていました。
 10年ほど前には、台所を別にし、食事は別々にとるようにしましたが、夕食は妻が作って父母の台所へ並べてやっています。

 母は元来几帳面な性格で、内向的、まじめです。専業主婦ですが、40〜50歳ごろ、パートで働きにも出ていました。
 私の結婚後、耳鳴りを訴え、難聴も伴って、現在は片耳はほとんど聞こえません。やや聴力の残っている耳に補聴器をかけ、何とか会話が出来る程度です。嫁姑問題でのストレスが原因でしょう。妻は母には何も言いません。会話もありません。母は、物事を悪く捉える傾向が強く、耳鳴りと難聴が進んで、7〜8年前から不眠となり、睡眠薬を常用しています。

 4〜5年前から、耳鳴りに加え、胸が苦しい、手足がしびれるとの症状を訴え、内科を転々としました。MRIやCTによる所見に異常はなく、さまざまな検査数値も標準的な結果です。それでも体調不良を訴え続け、父が内科を受診させると、内科医は点滴(栄養剤と鎮静剤?と思われます)をしてくださり、過喚気のお薬を処方され、母も受診直後には一応良くなったと言います。

 しかし、体調不良を訴える間隔が徐々に短くなり、最近では1日おき、時に数日続けて「死ぬほどえらい。どこか病院へ連れて行ってくれ」と言います。それが、夜、昼なく、また、休日でも朝夕2度も病院へ行くに至って、さすがに内科医も、心療内科の受診を勧められ、家族も内科的な問題ではないと考え、これまで何軒かの心療内科を受診させたところ、老人性うつ病とか、自律神経失調症とか、心身症とか、反応性のうつとかの診断で、デパスやドグマチール錠を処方されましたが、状況は良くなりません。
 一時、精神科も受診し、入院させて薬でおとなしくさせてほしいと先生にお願いしましたが、「お母さんはまだまだそんな状態ではないですよ」とやんわり断られたこともあります。
 ここ数ヶ月は、胸が苦しい、手足がしびれるために、父に胸や手足をなでるよう強要し、父も最初は心配して対応もしておりましたが、それが長時間に及ぶこと、また、えらい、しんどいと言いながら、妻の悪口や父母が若かった頃の不愉快な思い出話(40年以上も前の!)を、昨日のことのように延々と父に繰り返し繰り返し壊れたレコードのように聞かせ、そのうち、興奮が頂点に達すると、顔を紅潮させ、父に暴言を吐く、父の眼鏡をむしり取ってなげるなど、手が付けられない状態になります。たまりかねて逃げだそうとする父を後ろから押し倒す、靴を隠すまでしたこともあります。
 それでも父は、イヤホンでラジオを聞きながら、寝たふりをして何とか興奮が静まるのをやり過ごしてきました。しかし、先日、今日もまた続く母の暴言や何十年も前の不愉快な思い出話の繰り返しを隣に寝て知らぬフリを決め込んでいた父に対し、母は「聞いているのか!」と父の頭や顔をこづく、腰を蹴るなどしたため、父もたまりかねて母の髪を鷲掴みにしながら、「もう死ぬ、お前も死にたいなら殺してやる、表に出ろ」と大げんかになり、私と妻や娘が止めに入ったのですが、父はそばにあったハサミを振り上げて、今にも飛びかからんとするに至り、これはもうどうにもならないと痛感しました。このままでは父や私たち家族が本当に弱ってしまいます。
 最悪、父が母に何かしでかすかも知れないと思うと、措置入院でもさせなければ、大変なことになるのではと恐ろしい気がします。
  
 現在、心療内科で、頓服としてデパス錠、朝夕にグラマリール50mgを1錠ずつ、状態が改善しないため追加として就寝前にセロクエル25mgを2錠処方されて、様子を見るよう言われています。その病院には、最初に1度連れて行ったきりです。母は、なぜ、自分が心療内科にかからないといけないのかと不平不満を今も父にぶつけています。胸が苦しくて病院に行ったのに注射もしてくれなかったと言います。今の先生は、本人が申し出るか、自他を傷つける行為が具現化しないと入院は難しいとおっしゃいます。
 
  このままでは家族がつぶされそうです。私たち家族の取るべき方法についてご教示ください。
 

林: 入院すべきです。
 現在のお母様の症状は、さまざまな身体症状の訴えと、不条理な暴言の二つにまとめることが出来ると思います。「さまざまな身体症状の訴え」については、これまでの検査で異常所見が認められないことから、精神症状の一種と一応は考えるべきでしょう。「不条理な暴言」は、身体症状の自覚によるイライラからくるとも解釈できないこともありませんが、むしろ「さまざまな身体症状の訴え」と「不条理な暴言」の両方が、何らかの原因による精神症状とみたほうが妥当でしょう。
 入院すべきであるという判断の理由は二つあります。ひとつは、この「何らかの原因」をつきとめるためです。今のままではいつまでたってもその原因はわからないままでしょう。身体症状を「精神症状の一種と一応は考えるべき」と言ったのは、まださらに精密検査をする余地があると思われるからです。脳についても、MRIとCTでは異常がなかったとのことですが、アルツハイマー病のはじまりの段階では、MRIやCTが正常でも、脳血流の検査(SPECT)を行えば異常がみつかることはよくあります。
 入院すべき理由の二つ目は、当然ながら、

このままでは家族がつぶされそうです。

そのような状態をこのまま続けることがいいはずがないからです 。

今の先生は、本人が申し出るか、自他を傷つける行為が具現化しないと入院は難しいとおっしゃいます。

とのことですが、この先生はやる気がないのではないでしょうか。このケースで本人が申し出ることはまず考えられません。また、実際に傷つける行為が出てくるまで入院できないなどということはありません。法律的にもその前の時点での入院(つまり、「おそれ」の段階での入院)が明文化されています。

私たち家族の取るべき方法についてご教示ください。

お母様を入院させてあげるべきです。



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