精神科Q&A

 【1236】妻からストーカー扱いされて離婚を迫られています


Q私は39歳男性です。
去年結婚した妻の統合失調症が悪化し、私もストーカーの一味と思われており最近では実家に帰ってしまい、離婚を迫られています。
私としては、何とか薬を飲み続けてもらいたいのですが、飲んでくれないので強制入院も考えてたりしていますが、先々の家族関係を考えてどうすべきか悩んでいます。どうすべきかアドバイスをお願いします。

去年結婚する前に、障害手帳も持っていて精神安定剤を飲んでおり、過去には何度か入院したりしたことがあるという事は聞いていました。
しかし、普通に会話も出来ており、特におかしなところは感じられなかったため、病名を聞いても良く調べもしないでいました。

今考えると、当時統合失調症についてよく調べておくべきだったと後悔しております。当時、ストーカー被害にあっているとか、音楽サークルでいじめにあっているとか、そういう事は聞いていましたが、本当に被害にあっていると信じていました。ストーカーと言っても、単独のストーカーではなく、集団ストーカーという事で、以下のような被害にあっていると言っていました。
・ほのめかし(本人だけしか知らないようなことを背後や通りすがりに言われる)
・盗聴
・盗撮
・つきまとい

そして結婚後、1ヶ月もしないうちに、「ストーカーなんでしょ?正直に話して」と言われました。正直何のことか分からずに、あっけに取られていました。
よくよく話を聞くと、私がテレビを見て笑っていた笑い声が、妻の元旦那の笑い方にそっくりだったということでした。その時は、たまたま似ていただけだと必死に話し、なんとかその日はおさまりました。

しかしまた何週間かした後、一緒にテレビを見ている時に、私がテレビの状況に対して「そりゃそうだろう」と言ったら、「隣に一緒にいる私の心を踏みにじるようなものの言い方をされた」と言います。
一緒に買い物に行った際に、周りで普通にいる人達の会話を、何かと自分に結びつけて、「○○○というのは、私が△△△ということを知っていて、□□□したらと言わんばかりにあざ笑っているんだよ」というようなことを言っていました。
また、咳払いは集団ストーカー独特の合図といい、私が咳払いをしようものなら、「『お前はストーカーのいじめの的なんだよ。反抗したら、俺がひどい目にあわせるから。』といわんばかりの咳払い」と感じているほどです。

明らかに変に思ったので、自分なりに書籍やネットで統合失調症のことを調べました。
薬について聞いたところ、薬は常用しているが、「デパス」と言うのだけを飲んでいて、以前はもっと強い薬(なんだったかは忘れましたが、リスパダールと言っていたように思います)を飲んでいたが、何もやる気が起きなくなる、眠くなる、感情が鈍くなるなどの理由で、飲むのをやめてしまっているとのことです。

そこで、今までのことは、全て統合失調症が再発したせいだと思い、薬を飲むように勧めました。しかし、妻は自分の両親のこともストーカーの一味と思っていて、「薬を飲め飲めって、私のお母さんみたいな言い方するね」「あの薬は感じ方を鈍くするだけの薬だから、飲んだらむしろストーカーに対して機敏に対応できなくなるだけだよ」と言って飲んでくれません。
肯定することは良くないことは知っていましたが、夫婦の信頼関係を保ち続けることが必要だと思いましたので、そのためにまずは、気長に説得して飲んでもらえるようになるまで、信じているフリを続けようと思いました。しかし、結果的にはそれがいけなかったのだと思いますが、何かちょっとしたことで、私への不信感を持ち、すぐに「離婚して」と言われ、なんとか説得し続けて信頼感を回復、また何かしらで不信感を感じ、の繰り返しとなっています。

結婚後長期出張で、出張先に2人で生活していたのですが、ストーカーが耐えられなくなったとのことで、2月から妻のみ私の実家に帰って、私の父、弟との3人で生活していました。私は週末だけは実家に帰ってきていました。

最近では、私の父親、弟、果てはいとこや親戚もストーカーの一味と感じるようになり、部屋にこもりがちの生活となっていました。買い物も私が週末に一人で済まさなくてはいけない状況です。部屋も荒れ放題で、まさに足の踏み場がない状態。食事も、朝、夜と私が一緒ならば作りますが、昼は台所に行くと父がいるので食べないことが当たり前な状態になっていました。私の父も、一昨年の年末に脳出血で倒れ、現在は右半身が若干不自由なので食事は作れない状態ですし、母は私が幼い頃に他界しておりますので父も昼食は食べられない日が続いていました。

そんなこともあり、4月から私は会社に無理を言って、長期出張を中断させてもらって、私の実家で生活をしていました。
かかりつけの病院を実家近辺に変更してから、なかなか妻の症状で、親身になってくれる先生がいなかったので、病院を転々としていましたがようやく丁寧に対応してくれる先生に出会い、そこに通いはじめました。

先日、私の家で法事があったのですが、そこにいとこが来ると聞いた時に「絶対来させないで」と言っていましたが、そうも行かず、妻にはその日だけ実家に帰ってもらって、いとこには来てもらうことにしました。
そのやり取りは、妻が見ている前でいとこにメールを書かないと駄目で、ひどく中傷する内容のメールを送って、後からお詫びのメールを入れたりしていました。侘びの内容のメールを残したままにしていたのがいけなかったのですが、私の携帯メールをこっそり見て、妻に全てがバレてしまいました。
その日は、若干違和感はあったものの、まぁ普通に会社に送り出してくれましたが、夕方になって、「今家には両親に来てもらっている。」「実はメールを見て、信じられなくなったから実家に帰る。」と電話をよこしてあれほど嫌っていた両親のいる実家に帰ってしまいました。
すぐに今までの顛末を正直に書いた手紙を送って謝ったのですが、離婚するの一点張りです。現状は、両親に対しても「関わらないでくれ」というメモを渡して、部屋にこもっているとのことです。

かかりつけの病院の先生にも相談しましたが、まだ通い始めたばかりで信頼感は薄く、強制入院させてもまともに治療を受けてくれないだろうし、病院のベッドの空きも無いから、もう少し自宅療養を続けて見ようとのことです。
しかし、今までの経験からして、恐らく薬が処方されたとしても、「デパス」以外は飲もうとしないと思います。

本人は、病気なんかではなく、単に精神が不安定になりやすいだけで自分は薬のことも自分で勉強したから、自分の判断でデパスを飲んでいればいいと思い込んでいます。
注射で1ヶ月くらい効き目が続く薬もあるそうなので、数ヶ月それを続けて、回復してきたら薬の常用に切り替えて続けるのが良いのかなぁと考えたりもしましたが、注射を打たせてもらうことを説得することがまた困難ではと思います。

先々の夫婦関係や、先生との信頼関係を考えると、あまり強制的に入院や注射などはしたくないところです。薬の服用をどのように勧めたら飲んでくれ、常用してくれるようになるでしょうか?
アドバイスをいただければ幸いです。


林: 奥様は統合失調症です。症状はきわめて典型的です。ストーカーされているという妄想は統合失調症ではとても多いものです。たとえば統合失調症 患者・家族を支えた実例集の76ページにも紹介してあります。精神科での治療が必要です。

薬の服用をどのように勧めたら飲んでくれ、常用してくれるようになるでしょうか?

統合失調症のご家族の方からこのような質問を頂くことはよくありますが、決定的な良い方法はありません。ひとつだけ言えることは、統合失調症 患者・家族を支えた実例集の14ページにお書きしたように(この【1236】の質問者の方には、この本を是非お読みになるようお勧めします)、症状の核心を少々避けた形で持っていくのがいいということです。しかしその方法が通用するケースとしないケースがあり、【1236】ではちょっと難しいのではないかという印象は否定できません。

病気を自覚して薬を飲んでほしい、そのようにお考えになるのは自然ではありますが、統合失調症の治療開始にはその自然な考え方がなかなか通用しません。つまり、

病気を自覚する → 薬を飲む → 症状が良くなる

というプランはこの【1236】のようなケースでは実現困難で、

薬を飲む → 症状が良くなる → 病気を自覚する → さらに薬を飲む → さらに症状が良くなる

というプランを描いたほうが現実的だということです。

先々の夫婦関係や、先生との信頼関係を考えると、あまり強制的に入院や注射などはしたくないところです。

それはもちろんその通りです。そのようにご家族が苦悩されている例は、統合失調症のQ&Aの中にも数多くあります。しかし、苦悩しているだけでは病気はどんどん悪化していきます。どこかの時点で強制的な治療の決断をしなければならないこともあります。そしてこのケースでは、夫であるあなた以外に決断する人物はいません。

以下は、この【1236】の質問者に言っても仕方ないことですが、読者の方々のために申し上げますと、「もっと前に何とかしなければならなかった」というのが真実です。

今考えると、当時統合失調症についてよく調べておくべきだったと後悔しております。

その通りです。

ストーカーと言っても、単独のストーカーではなく、集団ストーカーという事で、以下のような被害にあっていると言っていました。

この時点で、統合失調症であることと、治療の必要性を認識されていれば、今の事態を招くことはなかったでしょう。
統合失調症という病気についての正しい知識を周囲の方々がお持ちになっていれば、もっと早く何とか出来たはずというケースは枚挙に暇がないのです。統合失調症 患者・家族を支えた実例集の84ページからのケース12もぜひお読みください。



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