精神科Q&A

  【1215】産後にひどく攻撃的になった「うつ病」の友人


Q:私の友人の奥様の事でご相談させて下さい。
私の友人は29歳男性で、5年程前に職場の上司の紹介で同じ職場の同年齢の女性と結婚しました。夫婦仲、両家族仲共に良く、2年程たって奥様は女の子を出産しました。産後、ホルモンバランスが悪いとかで首のあたりのリンパの手術をしました。(このあたりの情報はあいまいです)

そして退院後、奥様のご機嫌はいつもすこぶる悪く、旦那である私の友人が仕事から帰宅すると愚痴と罵声を入り交えて、夜中まで旦那に話続けるという日々が続きました。
その話の内容は、旦那を罵倒するものと、旦那の母親が以前に彼女と会話した時におもしろくなかった事がほとんどの様です。(例えば、子供が生まれた時に「昔の子供は生まれた時、手はグーして生まれて来たのに今の子供はパーして生まれてくるのね。」など、他愛も無い事が多いようです)
友人の仕事もかなりハードで、帰宅も遅くなる事が多く、疲れて帰ってきた後に色々聞かされる事が苦痛になり、母親に「もう、家に電話してくるな」とかいうようになり、彼の母親もそんなに気に障ったのかと心配して、彼女に誤解をとく為の電話をしたところ「とにかく、私に土下座してあやまれ」の一点ばりでさすがに彼の母親も切れて、結局大喧嘩になってしまったようです。
また、そこに来て彼女の母親も登場して「あなたのお母さんのせいでうちの子はこんな風なった」と言い始めしばらく冷却期間を置く為、それぞれの実家に戻り別居する事となりました。

ここまでは、ただの家族同士のもめ事と思っていたのですが、別居後の彼女の行動に病的なものを感じました。
毎晩、彼の携帯に電話をし、彼が出なかった場合は実家の家電に電話する。しかも、夜中だろうと朝5時だろうと、出るまで電話をかけ続けるようで、彼の家族もたまったものではありません。
彼が出ると、とにかく抑えきれない怒りの感情を一方的にぶつけてくるようです。
そして、しばらくして離婚の為の家族会議を開いたところ、それまで彼は離婚したくないと言っていたのに「離婚する」の一点張りだった彼女が、彼が離婚を承諾し、離婚後の慰謝料の事などの話になったとたん「離婚したくない」と泣き出し、結局、また二人暮しに戻りました。

その後は連絡がなかったので、安定した日々を送っていたのかと思ったのです
が、そうではなく彼女はアルコールに依存するようになっていったそうで、真昼間から子供を親にあずけ、アルコールを飲む娘を見て、さすがに彼女の親御さんが病院へつれて行きました。
診断は「うつ病」で5ヶ月ほど入院しました。
現在は退院して一緒にくらしているのですが、やはり旦那を責め続けたりの状況に変化は無いようです。

私が今まで知っている「うつ病」とは、とにかく何もする気力がなくなり、ふとんからも出られないほどに意欲が低下するもののように感じていましたが、こんなにも、人に攻撃的になる「うつ病」もあるのでしょうか。
旦那と旦那の母親に対する「怒り」の感情があふれ出て来て、抑えられないようです。
入院し退院しても、結局はまた元の繰り返しとなっており、彼側の家族は「早く離婚したらいい」と思っているようです。(もちろん彼には言っていませんが)彼もかなりまいっているようです。
彼女はうつ病なのでしょうか。良くなる可能性はあるのでしょうか。
病気ではなく、単なる、本人の性格なのでしょうか。リンパの手術との関連はないのでしょうか。
ご助言頂けたら幸いです。


林: 
彼女はうつ病なのでしょうか。

おそらくうつ病ではないと思います。

単なる、本人の性格なのでしょうか。

それも違うと思います。

うつ病ではなく、性格の問題でもないと判断する大きな理由は、明らかに出産をきっかけとして症状が出ていることです。出産によって性格がここまで変化することはまず考えられません。また、うつ病は出産をきっかけにして発症することはあり得ますが、この【1215】がうつ病でないと判断する理由は、一つはうつ病にしてはあまりに攻撃性のみが前面に出ていること、もう一つは:

産後、ホルモンバランスが悪いとかで首のあたりのリンパの手術をしました。

この情報です。ホルモンの何らかの異常による精神障害(症状性精神障害の一種)だとすれば、この【1215】のような症状となることはしばしばあります。

問題はその「ホルモンの何らかの異常」が何であるかということですが、

ホルモンバランスが悪いとかで首のあたりのリンパの手術をしました。(このあたりの情報はあいまいです)

この情報と、それから攻撃性が前面に出ていることをあわせますと、首の手術はリンパではなく、甲状腺だったのではないでしょうか。というのは、甲状腺のホルモンが多く出すぎる「甲状腺機能亢進症 (バセドウ病とも呼ばれています)」では、この【1215】のような気分の不安定は典型的な症状だからです。

もっとも、「首の手術」というだけで、このように断定することはもちろん出来ません。けれども、うつ病でないことはほぼ間違いないと思います。そして症状性精神障害である可能性が最も高いと思います。そしてその中ではバセドウ病が疑われます。だとすれば、

良くなる可能性はあるのでしょうか。

その可能性は十分以上にあります。ただしそれには正確な診断がまず必要です。甲状腺ホルモンを含めた、身体的な検査をまず徹底的に行い、精神症状の原因をつきとめることが第一です。

なお、

診断は「うつ病」で5ヶ月ほど入院しました。
現在は退院して一緒にくらしているのですが、やはり旦那を責め続けたりの状況に変化は無いようです。


このあたり、事実を確認する必要があると思います。まず

診断は「うつ病」で

それは、上に説明した通り、事実ではないと思います。(他人であるあなたには事実が伝えられていない可能性が強いと思います)

また、

状況に変化は無いようです。

5ヶ月も入院し、退院の許可が出たのにもかかわらず、変化が無いというのも不可解です。これについても事実の確認が必要でしょう。


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