精神科Q&A

 【1149】妻のアルコール、うつ、過呼吸


Q私は50歳のサラリーマンです。妻は48歳。息子と娘の4人家族です。
5年間の単身赴任から私が赴任帰省した12年前から、妻は家族を避けるようになりました。私とも寝室を共にしなくなりました。しばらくすると離れの6畳間に引きこもるようになり、やがて対人恐怖症などの症状が出始めました。およそ1年間にわたり鍵を掛け引きこもり、その間数箇所の病院を訪ねましたが、うつ病とか更年期障害・自律神経失調症等と診断されはっきりとした原因は認められませんでした。

外出中に部屋の掃除をしたところ、空き缶や空き瓶を大量に発見し、ここ5〜6年はアルコール依存症と認識。有名な病院なども訪ねましたが本人は入院が嫌だと怒り出し診察中に逃げ出す始末。

飲まなければ別人のように明るく、以前の妻と変わりません。昼間独りになりますと飲むらしく飲み出すと家事全般ができなくなり寝込む日が1週間ほど続きます。目がうつろで左右の焦点があっていないように見えます。怒りっぽくなり人を避けるようになり、ひどい時はトイレと冷蔵庫と間違えて失禁したり一晩中嘔吐したりします。

昨年暮れに発作が起こり救急車で搬送されました。救急車は3回目です。今回は発作がよほど懲りたのでしょう。断酒し健康を取り戻し半年は完治したかに思われました。

一時はパートに通い家族楽しく夕食を頂けるようになっておりましたが、TVのCMに誘われ、たまにはと娘と共にビールを飲みだしたのがきっかけで、少しずつ繰り返すうち習慣となり、2ヶ月前から隠れて飲み寝込むようになりました。

しかし今回は以前とは違う過呼吸の発作に襲われる様になりました。とてもアルコールを飲めるような状態ではないようです。苦しみが日に何回も襲ってきます。また昼間一人で話し相手がいないと泣き出しうつの状態になります。お薬で寝ている以外は怒りっぽく夜中でも気に障ると娘を大声で怒り出すこともあります。

今後を考え心配しておりますが良い治療方法が無いものかと悩んでおります。上の子はいたたまれず今年春に家出し、現在遠い他県で働いています。娘は来年就職を控えています。

1.現在は心療内科に通ってうつ病と過呼吸のやや強いお薬を頂いています。薬で眠っている間は穏やかです。今のお薬で回復するでしょうか?(お薬は2種類を日に3回・2週間分頂いています。)しかし薬が切れると食事もせず連日苦しむ姿はいたたまれません。

2.苦しくても入院は絶対に嫌だといいます。風邪を引いても自分から病院へ行きたがりません。それも病気でしょうか?共に生活する家族が苦しいです。
このままでは皆駄目になってしまいそうです。

追伸
私も長い間の生活の乱れが原因で6年前脳梗塞、5年前は心筋梗塞で治療を受けています。片麻痺があるため力ずくづくでは病院へは連れて行けません。心臓が危ないので何とかしたほうが良いと主治医から診断されています。私もソラナックスを服用するようになりました。
昼間そばについていてやれればいいのですが仕事をしなければ家族を養って行けません。長年の繰り返しに妻の両親は聞きたくないと匙を投げています。TVは一日中点けています。そばにいると頻繁にチャンネルを変えます。病気のことを他人に相談すると怒り心を閉ざします。その繰り返し。ついに誰も相談する相手がいなくなりました。
調子の良い時は面倒見が良く、まるで別人です。アルコールを飲まなければとても好かれる行動派です。落差が激しいです。
断酒は自覚が無いと続きませんね。飲酒に罪の意識はありません。困ったものです。


林: 奥様はアルコール依存症です。アルコールをやめる以外に方法はありません。また、うつ状態もあるようですが、この【1149】のケースでは、アルコール依存症とうつと、どちらが先であったかはよくわかりません。けれどもどちらが先か、どちらが原因といえるかに関係なく、アルコールをやめる以外に方法はありません。

昨年暮れに発作が起こり救急車で搬送されました。救急車は3回目です。

この「発作」とは何か、記載がないのでわかりませんが、けいれん発作でしょうか。だとすれば、アルコールの離脱症状に間違いないでしょう。
そして、このときに

今回は発作がよほど懲りたのでしょう。

とのことですので、この時がアルコールをやめる絶好の、そしてもしかすると唯一の、チャンスだったかもしれません。

断酒し健康を取り戻し半年は完治したかに思われました。

アルコール依存症は完治しません。アルコールをやめることによって、再発が防止されているだけです。もしこの時期に完治したのではないかとあなたやご家族がお考えだったとしたら、非常に甘いと言わざるを得ません。その甘さが次の出来事につながったとも言えます:

たまにはと娘と共にビールを飲みだしたのがきっかけで、少しずつ繰り返すうち習慣となり、2ヶ月前から隠れて飲み寝込むようになりました。

たまにはと娘と共にビールを飲みだした 
こんなことをしたら元の木阿弥になるのは火を見るより明らかです。
先ほど私が非常に甘いと言ったのは、このことにも関係しています。アルコール依存症に対する、ご家族の認識が甘すぎたと思います。

1.現在は心療内科に通ってうつ病と過呼吸のやや強いお薬を頂いています。薬で眠っている間は穏やかです。今のお薬で回復するでしょうか?(お薬は2種類を日に3回・2週間分頂いています。)しかし薬が切れると食事もせず連日苦しむ姿はいたたまれません。

薬では回復しません。アルコールを完全にやめる以外に方法はありません。

2.苦しくても入院は絶対に嫌だといいます。風邪を引いても自分から病院へ行きたがりません。それも病気でしょうか?共に生活する家族が苦しいです。このままでは皆駄目になってしまいそうです。

どんなに嫌でも入院するしかないでしょう。このままではまず間違いなく皆駄目になると思います。

アルコールを飲まなければとても好かれる行動派です。

そんなことは今や重要なことではありません。

断酒は自覚が無いと続きませんね。飲酒に罪の意識はありません。困ったものです。

この最後の文章は、あえて自嘲的に書かれているのかもしれませんが、深刻味が感じられず、まだまだあなたはアルコール依存症に対する認識が甘いように読み取れます。アルコールをやめなければ、あなたがお書きになっているように、あなたのご家庭は間違いなく駄目になるでしょう。


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