精神科Q&A

 【1137】うつ病で退職し、いったんはよくなったのですが・・・


Q: 33歳女性、独身一人暮らしです。
ちょうど1年前に心療内科受診、うつ病と診断されました。

その3ヶ月前に引越し、2ヶ月前に失恋、また同じ頃職場の人間関係にも悩まされるようになり、「明日が来るのが怖い」と思うようになり、「明日」から逃れるために早い時間に寝るのが嫌になり、睡眠時間が1日約3〜4時間という日が1ヶ月ほど続きました。それでも職場で眠くなることはなく、むしろ緊張で目が覚めているといった感じでした。それからまもなく、職場の苦手な人が同部屋にいるというだけで過呼吸が起こるようになり、パソコンを打ちながら涙が止まらなくなったりといった症状が現れ、心療内科を受診したのです。

その後しばらく薬を飲みながら様子を見たのですが、出勤前と職場での涙と過呼吸がおさまらないことで、2週間の休職が必要という診断書を医師に書いてもらい、休みました。2週間後1日出勤したのですが、職場に居ることが怖くてたまらず、もう2週間の休職をお願いしました。
休んでいる間は何をする気にもならず、1日があっというまに終わる感じだったように思います。
休職期間が終わりに近づき、出勤の日が近づいてくると、また恐怖感におそわれるようになり、今度は期限のない「快復するまで休職を要する」というような診断書を書いてもらいました。
それを職場に提出(郵送で)すると、上司に呼ばれました。
職場に行くのは怖かったので、別の場所で会いました。
呼ばれた時点で「クビ」だと感じたし、早く席を空けて新しい人を雇ってもらったほうが良いと思い、退職届を書いて持って行きました。

その日付けで退職となりました。

退職後1週間ほど、毎日悩まされていた頭痛もなくなり「退職しなくてもよかったかな?」というくらい元気になりました。

しかしその後、朝ベッドから起き上がれないほど身体が重く目が覚めないといった状態になってしまいました。午後、やっとベッドからはいあがっても、ソファーでじっとしているといったことが、1ヶ月ほど続いたように思います。それから、午前中はベッドでだらだら、午後座る、といったことがもう1ヶ月ほど続き、春ごろ気分が良くなり(今思うと躁状態だったようです…)独断で身体を動かし始めるも、熱が出てダウンという日を繰り返し、医師に「気分が良くても休養すること!」と言われ、なるべく無理しないように気をつけ、それからは外出してもダウンすることが少なくなりました。今から6ヶ月前頃のことです。

薬は今は、ルボックス25mgを朝・昼・夕1錠ずつ、寝る前3錠の計6錠のみです。

半年前までは
ルボックス25mg1日4錠
デパス 3錠
サイレース 1錠
でした。(いろいろためしながらですが)
それから、寝ぼけて転びケガをしたことで睡眠薬が中止になりました。寝る前のルボックスとデパスでもなんとか眠れるということで・・・

現在残っている症状は、
・寝つきが悪いこと
・熟睡感がない
・生理前になると神経がピリピリしているようでまったく眠れなくなること
・午前中だるい
・人ごみにいると気分がめいる
・午後もだるい日は微熱がある
・新しい仕事をはじめる勇気がない
・気分にムラがある

・・・くらいで、親や友人に会ったり、料理もできるようになりました。職安や役場などで事務的な話をしただけで頭痛がしていたのも大丈夫になりました。寝込むこともなく、用事があれば動けるし、親や友人に元に戻ったと言われます。

自分では比較的早期の受診であったため、3ヶ月ほどで完治するだろうと思っていたのですが、もしかしたら早期受診ではなかったのかもしれません。
そう思う原因は、
・受診の半年ほど前に転職して前職より肉体的精神的にハードになったことで、以前より睡眠・休養時間が減り、また、食事内容も悪くなった
・その1ヶ月後からずっと、めまい、フワフワ感、頭痛、ひどい肩こりがあった
・さらにその1ヶ月後、3年間変化がなかった子宮筋腫が成長していたことで仕事がハードなことが心配になり、精神的に不安定になった   ・・・ことです。

先生にお尋ねしたいことは、

1. 今の状態で新しい仕事についても再発しないか
2. 早期受診ではなかったため長引いたのか
3. もう治っていると言える状態か

一番知りたいのは、仕事につくタイミングのことです。
私の場合、退職してしまったので、新しい職場ですぐに休むわけにもいかないだろうし、毎朝起きられるのかとか、また辛い症状が出たら・・・と考えると怖くて怖くて就職活動ができません。 
「よし!」と思える日が来るものなのか、それとも怠けているだけなのか・・・
どうなったら治ったと言えるのでしょうか。

主治医には、「あまり就職のことは考えないように」と言われるだけです。
半年前からは、2週間に1回の受診が3週間に1回の受診になり、それにともない主治医がそっけなくなったようで、不安に思っていることを聞けなくなりました。
そっけなくなったということは、「もう治っているのだから自分で判断しなさい」と言われているようにも思います。
やはり甘えているだけの擬態うつ病なのでしょうか?


林: 
やはり甘えているだけの擬態うつ病なのでしょうか?

違います。あなたはうつ病です。今は回復期ですが、まだ十分に回復しているとはいえません。この時期には、うつ病の方はしばしば自分は甘えているだけではないかと考えるものです。あなたはその典型的な例だと思います。
 退職していったんはよくなったように思えたというのも、うつ病としては典型的といえます。このように、環境が改善しても、それによる症状の改善は一時的にすぎないのが普通です。うつ病は脳の病気だからです。

1. 今の状態で新しい仕事についても再発しないか

再発すると思います。回復期とはいえ、まだまだ症状が残っているからです。

主治医には、「あまり就職のことは考えないように」と言われるだけです。

この言葉の通りにされたほうがいいでしょう。

2. 早期受診ではなかったため長引いたのか

それはわかりません。
けれども、今の状態をみると、長引いている主な原因は、抗うつ薬の量が不十分なことだといえるでしょう。半年間、あまり改善がみられないまま、ルボックス75mgという処方を続けるのは、適切な薬物療法とはいえません。うつ病が長引く最大の原因は、抗うつ薬の量が不十分なことです。うつ病の相談室のp.64から、それから【1135】などもご参照ください。

3. もう治っていると言える状態か

治っていません。上にお書きしたとおりです。今は復職よりも、薬物療法の見直しを考えるべきです。


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