精神科Q&A

 【1119】統合失調症の脳萎縮について


Q: 私は37歳 女性で、統合失調症の回復期にある者です。
標題の件についてご質問させていただきたく、メールさせていただきました。
統合失調症では、多かれ少なかれ出生直後から脳の形態的変化が始まっていると聞きますが、
@ 私の読んだある本で、クロウU型(陰性症状主導型)について画像で軽度の異常がみつかる、との記載がありましたが、これはあくまで画像で変化が見えるタイプに陰性症状主導型が多いということであり、陽性症状主導型に脳萎縮は起こっていないという意味ではない、という理解でよろしいでしょうか。ひいては、概ねすべての統合失調症について(例外は除くとして)少なくとも投薬を開始する以前は神経細胞の消失が少なからず起きている可能性が高いということでしょうか。

A @の場合、ある部位について進行的に脳の萎縮がおきているとすれば、治療により症状がひとまず消えた段階で以後再発が無ければ 萎縮はストップすると考えてよろしいでしょうか。

B 消失した神経細胞の再生はありえませんか?ない場合でも、最近、脳力アップと称して簡単な計算や音読などで神経細胞ネットワークが密になるという広告を目にしますが、本当でしょうか。

C 統合失調症のどの本を読んでも完治という言葉を見つけることができず、寛解と書かれていましたが、完治(或いは治癒)はありえますよね?

(私について申し上げれば、薬も一種類しかも半錠しか飲んでいませんが、有難いことにそれでも日々症状の漸減を実感しており、このまま完治するのではないか。。。と期待に胸をふくらませています)
以上4点です。

どうぞよろしくお願いいたします。


林: あなたが引用されているクロウによる統合失調症のT型・U型の分類は、高く評価されてはいるものの、一般に認められるところまでは至っておりません。それを前提にお答えしますと、

@ これはあくまで画像で変化が見えるタイプに陰性症状主導型が多いということであり、陽性症状主導型に脳萎縮は起こっていないという意味ではない、という理解でよろしいでしょうか。

その通りです。

ひいては、概ねすべての統合失調症について(例外は除くとして)少なくとも投薬を開始する以前は神経細胞の消失が少なからず起きている可能性が高いということでしょうか。

その通りです。ただし、今のところは、消失が確認できるかできないかという程度の量の消失です。
(しかし、このことの意義は実は重大です。つまり、統合失調症は、広い意味では発達障害の一種である可能性を示唆するものです)

A @の場合、ある部位について進行的に脳の萎縮がおきているとすれば、治療により症状がひとまず消えた段階で以後再発が無ければ 萎縮はストップすると考えてよろしいでしょうか。

それはまだわかりません。これもきわめて意味深いご質問です。現代の治療によって、統合失調症の進行そのものがどこまで抑えられるのか、これはきわめて重大な問題ですが、まだ何ともいえないというのが現状です。つまり、臨床的にみると、進行が抑えられていると判断できるケースもあれば、進行が止まっていないと判断できるケースもあるということです。このようなケース相互の本質的な違いは何か、それはおそらく21世紀を通しての精神医学のテーマとなるでしょう。

B 消失した神経細胞の再生はありえませんか?

神経細胞は、成人においても、従来考えられていたよりは再生することがわかってきています。しかし、その再生はわずかなもので、事実上は「ない」と考えたほうが現実的でしょう。

最近、脳力アップと称して簡単な計算や音読などで神経細胞ネットワークが密になるという広告を目にしますが、本当でしょうか。

嘘です。
この種の広告は、今世紀最大の詐欺として将来は非難を受けることになると私は考えています。

C Bで寛解と書きましたが、統合失調症のどの本を読んでも完治という言葉を見つけることができず、寛解と書かれていましたが、完治(或いは治癒)はありえますよね?

ありえます。しかし、大部分のケースでは、治癒よりも寛解を目指すほうが実際的です。つまり、服薬をそう安易に中断してはいけないということです。



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