精神科Q&A

 【1099】近隣からの違法行為のストレス


Q: 私は67歳の男性です。
住居の周囲の違法行為による騒音や煙害、近隣の犬の無駄鳴き、長時間の布団叩きや衣類の埃払いに異常な反応を意識し始めたのは主には定年後です。それ以前にも周囲の違法行為から発生する精神的なストレスは強いものがありました。解決手段として行政力を期待しましたが何一つ解決することなく、ただ一箇所家の前の広大な土地での騒音、煙害だけは倒産によって消滅したのが現状です。

突き詰めますと近隣とのトラブルが原因に違いはありませんが、発端は6年前まで喫煙の際隣家に近い水道のある場所で吸っていたことです。当初は気付きませんでしたが隣家でけたたましく窓やドアを閉めるのが喫煙のたびに行われました。煙草の煙が届くような距離ではないのですが、臭いもありますことで迷惑を感じ丁度考えていましたので禁煙しました。しかしその家の飼い犬の無駄鳴きには閉口しておりましたので保健所を通じ注意をして頂きました。それがその家とのトラブルの発端になりました。私の姿を見た瞬間といっても過言ではなくけたたましくドアや窓を閉める嫌がらせが始まりました。喫煙から通算しますと7年間に及びます。定年後の園芸や音楽を聴くことの楽しみが削がれたのは事実です。ドア閉めは姿を出来るだけ見せないことで避けられますが、犬の無駄鳴きは「犬は鳴くもんだ」との怒声で避けることが出来ませんでした。また悪いことに他方に接する隣家は貸家で30年に及び迷惑を受けていました、3年前に入居した方は布団叩きと衣類の埃払いを当初は晴れた日は最低でも2〜3時間続けていました。抗議(怒鳴り合いです)をしまして時間と音は少なくなりましたが基本的には変ってはいません。

その他の事実関係はこれも家の前に当たりますが、午前1時まで営業しているゴルフ練習所(市の指導は無視)同じ地主の違法建築による自動車修理工場も隣接しています。また基準法で定められたセットバックを隣家の二軒は無視しています。およそ20年に及び行政に訴え、直接怒鳴り込んでも結局なんの解決もなく悲哀と落ち込みが激しい状態になっておりました。しかしその時点でうつ病であるとか治療を考えるようなことはありませんでした。土日はテニスをして発散もしていました。

状況の説明で長くなりました、一年前隣家の夫婦が再三注意をお願いしている犬を放置して外出する姿を車に乗って外出する時に見つけました。犬は家人が帰るまで何時間でも泣き叫ぶという表現が正しいように連続して鳴いています。夫婦の乗った車を私は追いかけました。強い感情に襲われて猛スピードでバックさせていました。そして大きな立ち木に激突して車を破損、私は軽い打撲で済みました。想念としては相手を殺してもとの憎しみがあって、急に不安になりまして近くの精神科クリニックを受診、うつ病との診断でパキシル20ミリから飲みはじめました。現在は10ミリにしております。

その後隣家との状況は変っておりません、数ヶ月前は5時間、一ヶ月前は3時間同じように間断なく鳴かせています。一ヶ月前はお願いにあがりましたところ、気にし過ぎと非難されて理性も失くし「殺す」と言っていました。実際想念だけでなく実行しそうな恐ろしさを自身感じています。

先生にご相談するのも恥ずかしいのですが、心のなかでうつ病だの被害妄想から統合失調症だのとの疑念が湧きます。これが妄想で、そのために人を傷つけてしまうこともあり得るのでしょうか。つつましやかではありますが、生活に困っている訳ではありませんし、気持を楽に生活したいと願っているのです。
 

林: おそらくあなたは妄想性障害または統合失調症だと思います。うつ病ではありません。
 このメールに書かれているような、あなたに対する嫌がらせ的な行為が、あり得ないとは言い切れませんが、全体としてはやはりあなたの被害妄想である可能性のほうが強いように読み取れます。

妄想で、そのために人を傷つけてしまうこともあり得るのでしょうか。

あり得ることです。事実、あなたは近隣の方々に対して殺意に近いものを持っているようです。
被害妄想のために周囲の人を傷つけるということは、報道される事件の中にも少なからず見られます。そういう場合、もっとも考えられるのは統合失調症なのですが、報道上はなかなかそれが前面に出ないことが多いものです。これは統合失調症に対する無用な差別を避けるためとして理解できますが、そのようにして事実を隠蔽することが長い目で見てプラスとマイナスのどちらが大きいかは難しいところです。「被害妄想を持ち、かつ、適切な治療を受けていない場合には、人を傷つけるおそれがある」ということが十分に知られていないために、治療開始が遅れるケースが少なからずあると思います。ここで重要なのは「かつ、適切な治療を受けていない場合には」という部分ですが、しばしばこの部分が無視されて 被害妄想 = 人を傷つけるおそれがある と短絡的に判断されてしまうことがあるため、事実が隠蔽されることになっているのでしょう。

ところでこの【1099】のケースですが、このような症状があって精神科を受診しているのにもかかわらず、抗うつ薬のパキシルしか処方されていないのは不可解です。うつ病という診断は誤りだと思います。ご自分の体験を医師に十分伝えていないのではないでしょうか。状況をすべて医師にお伝えして、適切な治療を受けられることを強くお勧めしたいと思います。そうすることで、

気持を楽に生活したいと願っているのです。

あなたのこの望みはかなえられるでしょう。


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