精神科Q&A

【1059】リタリンを飲みながらうつ病は回復するものですか


Q: 40歳主人のことで相談いたします。主人はバスの運転手をしており朝早く夜深夜まで働き睡眠時間平均4時間という過酷な労働をしていました。
その結果去年の夏より仕事に行く前そして仕事をはじめる前に毎日ひどい吐き気をもよおすようになりました。
最初は単なるストレスか胃の調子が悪いと思い胃薬をのんでもきかずパニック障害かなと思い私の薬コンスタンをのませてみたところなんか気分よくなりましたがすぐにもとに戻るといったかんじでした。
そうこうしているうちに涙もろくなり(仕事中でも泣き出す)息がきれる、集中力もなくなってきたようでした。それで心療内科を秋に受診したところうつ病と診断されました。

最初は、軽いうつと診断されたようで薬のみなからの仕事をしていましたが、だんだん症状は悪化するばかりでとうとうバスをぶつけるわ乗客から居眠りしてると会社に電話があり、休職を会社からいわれ現在休職して半年が経ちます。
会社から休職をいわれたことを主治医に伝えるとそうですかといって診断書を書いてくれました。
それ以後、あらゆる抗うつ薬を試しましたが半年たった今もあう薬がなく医師からは難治性うつ病といわれました。
最高に薬が多かった時期(今年の3月)
ドグマチール100 朝夕各1錠     デパケンR 100 朝夕各1錠
トレドミン25    朝昼夜各1錠
ワイパックス0.5  朝昼夜各1錠
パキシル20    夕1錠
ナウゼリン     朝昼各1錠
ルボックス50    朝昼夕各1錠
リタリン10      朝昼夕各1錠
ユーロジン2    寝る前2錠  ロヒプノール2 寝る前1錠  ヒルナミン5  1


それ以前の抗うつ薬で、アナフラニールを試しましたがひどい副作用で即中止になりました。(まともに歩けずふらつく、ひどくろれつがまわらない。口の渇きがひどすぎた。)
というわけで三環系のうつ薬はこれから使用しないとのことでした。

上記の薬をのんでも一向によくならず、副作用でふらつきと口の渇きがひどい(舌がひりひりして痛い)と医師につたえるとルボックス、トレドミン、ワイパックス、ヒルナミン、ロヒプノールが中止になりました。
それ以外を今も飲み続けています。
現在、ふらつきもなくなり普通に歩くことができ口の渇きは多少ありますが、ろれつもまわり普通になった感じがします。
吐き気もおさまり 意欲もでて性欲もやっとでてきたようです。テレビをみて楽しくわらっていたり、説明書を読めたり、メールしたり、電話したりしています。
ただまだ外にいけるけど行きたいと思わないそうです。
それとリタリンをのまないと体が動かなくなります。しんどいそうです。最初3錠だったのを今は2錠に減らし朝昼のんでいます。
リタリンは依存性のある怖い薬と聞き努力して減らすようにしています。(自殺念慮がでたためまたひどい憔悴感がでてきたので医師が処方されました)この薬について以前他の精神科の院長に相談したところこの薬は私の病院ではださないといっておりました。かえってうつ病が悪化するともいわれました。そして精神安定薬のヒルナミンもきついといわれ他の薬に代えてもらってはどうかといわれました。
そのことを通っている心療内科の医師に伝えて相談したら、リタリンは最終手段で使いました。そしてヒルナミンはそんなに怖いくすりではないといいます。がヒルナミンを飲むと無理やり体をうごかされないようにされた感じで昼過ぎまで寝ています。本人はなんかしんどいといっています。

上記の経過をたどり林先生に相談したいのは、
1)主人はリタリンを飲んでたんなるまやかしで意欲や性欲やテレビをみれているのでしょうか? うつが回復に向かっていると考えるのは違いますか?

2)睡眠薬でヒルナミンをのまないと何を飲んでも(ユーロジン ロヒプノール ドラール)2〜3時間おきに目がさめます。
 ヒルナミンを飲むべきでしょうか?
 リタリンを朝昼飲むと最近何故か落ち着いて寝れるといって昼寝程度の睡眠を昼とります。

3)リタリンがきれると暴れるという幻覚症状がおきまるのでしょうか?
  (主人の友達が以前うつでリタリン2日に1錠の間隔で飲みきれたときいきなり手足が震えだしそのうち本人の意識がなくなり暴れまくり。包丁を振り回したり、義理の母を殴って失神したり 止めに入った人の手を噛んだり(何度も)救急車になかなかのらなっかたそうです。本人が意識とりもどしたときは、病院で血だらけになっていたそうです。)こんなことはリタリンをやめると幻覚症状でおきるのでしょうか?
  その友人は早くやめたほうがいいといいますし、病院もかえたほうがいいといいます。

4)医師によりリタリンの使用についてこんなに意見が違うものなんでしょうか?
 ヒルナミンも精神科の院長はきついといいますが、心療内科の医師はきつくないといいます。
 確かに主人の場合、自殺念慮がでていましたので、リタリンのんでその考えがなくなり、いまでは普通に生きることを未来に向けて考えるようになりましたので、私としては、飲ませてよかったとおもいます。もしだされなかったら自殺に走っていたような気がします。
 
以上長くなりましたがご回答のほどよろしくお願いいたします。


林: リタリンには確かに依存性がある場合があり(「場合があり」です。常にあるとは限りません)、離脱症状が出る場合もあり(「場合もあり」です。常にあるとは限りません)、幻覚などの副作用が出る場合もあり(「場合もあり」です。常にあるとは限りません)、したがって慎重に使う必要がありますが、依存性も離脱症状も副作用も、リタリン以外のどんな薬でもあり得ることですから、これらが出る場合があるからといって、リタリンを使うことはよくないということにはなりません。どんな薬にもプラスの面とマイナスの面がありますから、効果と副作用のバランスを考えて、効果によるプラスの方が大きいと判断すれば、その薬を飲むべきだということになります。ですから、

 確かに主人の場合、自殺念慮がでていましたので、リタリンのんでその考えがなくなり、いまでは普通に生きることを未来に向けて考えるようになりましたので、私としては、飲ませてよかったとおもいます。もしだされなかったら自殺に走っていたような気がします。

あなたのこのお考えは正しいと思います。この【1059】のケースでは、リタリンが必要であったといえるでしょう。
 問題は、今後リタリンを続けるべきかということですが、結論としては、今の主治医の先生の方針に従うのが最善だと思います。
 
あらゆる抗うつ薬を試しましたが半年たった今もあう薬がなく医師からは難治性うつ病といわれました。

具体的な薬の内容が不明ですので、本当に難治性うつ病といえるかどうかは不明ですが、少なくとも治療が容易ではないタイプのうつ病であることは確かでしょう。しかも自殺念慮がしばしば出ている。このようなケースでは、うつ病の入門書などに書いてある内容はそのまま通用しないことが多いので(たとえば、一般的には抗うつ薬は何種類も同時に処方するのは好ましくないのですが、このようなケースではそうは言えません)、直接この方を診察していない医師の意見をあまり聞いても不安が増すばかりになりがちです。もっとも、治りにくいからこそ他の医師の意見を聞きたくなるというのはわかりますが、残念ながらそれは悪循環になります。

リタリンについては、うつ病の治療にあたって最初から処方することには大部分の医師が反対するところですが(私も反対です)、ある程度治療を続けた結果、どうしても必要と判断されたケースでは積極的に使うべきだと思います。そしてリタリンにはうつ病に対して効果があることもわかっています。ですから、

1)主人はリタリンを飲んでたんなるまやかしで意欲や性欲やテレビをみれているのでしょうか? うつが回復に向かっていると考えるのは違いますか?

まやかしではありません。回復に向かっていると考えるべきでしょう。

2)睡眠薬でヒルナミンをのまないと何を飲んでも(ユーロジン ロヒプノール ドラール)2〜3時間おきに目がさめます。
 ヒルナミンを飲むべきでしょうか?

 
飲むべきです。

3)リタリンがきれると暴れるという幻覚症状がおきまるのでしょうか?
  (主人の友達が以前うつでリタリン2日に1錠の間隔で飲みきれたときいきなり手足が震えだしそのうち本人の意識がなくなり暴れまくり。包丁を振り回したり、義理の母を殴って失神したり 止めに入った人の手を噛んだり(何度も)救急車になかなかのらなっかたそうです。本人が意識とりもどしたときは、病院で血だらけになっていたそうです。)こんなことはリタリンをやめると幻覚症状でおきるのでしょうか?
  その友人は早くやめたほうがいいといいますし、病院もかえたほうがいいといいます。


このような激しい幻覚症状が出ることはきわめて稀です。というよりむしろ、これは本当だったか疑問に思います。2日に1錠というごく少ない量のリタリンを中止したからといって、こんな状態に陥るとはまず考えられないことです。何か他の要因があったと考える方が合理的だと思います。

その友人は早くやめたほうがいいといいますし、病院もかえたほうがいいといいます。

馬鹿げたアドバイスです。

4)医師によりリタリンの使用についてこんなに意見が違うものなんでしょうか?
 ヒルナミンも精神科の院長はきついといいますが、心療内科の医師はきつくないといいます。


リタリンについては、医師によってかなりの意見の相違があります。
しかし、うつ病について十分な治療経験があれば、リタリンも時には必要だということが理解されるはずだと私は思います。精神科の院長をしていた医師の意見だということですが、本当にその医師に十分な臨床経験があったのか、私は大いに疑問です。それは「ヒルナミンがきつい」という意見にもあらわれています。ある薬がきついか、きつくないか、それは一概にはいえないことです。決められている上限の量より多ければ、それは一般にきついといえますが、ヒルナミン5ミリグラムという量は上限の十分の一をはるかに下回る量ですから、これをもってきついというのは全くナンセンスです。そもそもあなたはこの医師に相談したときに、ご主人の症状とこれまでの経過を十分説明されたのでしょうか。処方内容だけをみて、それが適切であるとか適切でないとかいう判断は、まず出来ないものです。にもかかわらず、リタリンやヒルナミンについて、中止を促すようなアドバイスをする医師は全く信用できません。

おそらく、この【1059】の主治医の先生は、あなたに対して内心は怒っていると思います。治療困難なケースを何とか手を尽くして治療し、現に回復に向かっているのに、素人であるあなたが聞きかじりの知識に基づいて治療内容に異を唱えているのですから、怒られても当然でしょう。「そんなことを言うのなら他の医師にかかってはどうか」と言われても当然のケースかもしれません。余計な情報に惑わされずに、今の主治医の先生の治療方針に従うことをおすすめします。あなたは情報収集を中止したほうがいいと思います。これを読み終えたらPCの電源を切り、以後は一切インターネットも見ないことをお勧めします。さようなら。ご主人のうつ病が完全に回復した時点で、よろしければまたこのページにいらしてください。そして回復までの経過をメールでご連絡いただければ嬉しく思います。


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