精神科Q&A

 【1058】糖尿病なのにジプレキサなどが処方されています


Q:36歳の姉の服薬について質問します。
23歳にうつ病を発病して、27歳より糖尿病でした。
現在統合失調症で、糖尿病(血糖値374 HbA1c11.3)です。

糖尿に関しては服薬のみ。インシュリンはしていません。
インシュリンを避ける為に、何とか食事療法をしております。
けれども、もう5ヶ月間、徹底した食事制限をしているにも関わらず、コレステロール、中性脂肪は改善しても、血糖値、HbA1cが改善しません。

精神薬は、アキネトン2mg リスパダール1mg ジプレキサ5mgが処方されています。
異常なのどの渇きで多量にお茶を飲み、多尿なうえ、幻聴が激しく、一人で叫んで、イライラして自傷行為を繰り返していました。
糖尿病のことは主治医のA医師に伝えてありましたし、幻聴のこと、副作用の事を伝え、薬の変更を頼むと、エビリファイ錠6m リスパダール1% エビリファイ散1% オルガノン、に変更されましたが、私が調べてみたところ、エビリファイも糖尿病にはよくないと書かれていましたので、服用しませんでした。

1週間前に主治医をB医師に変更し、デパス0.5mg パキシル10mg ハルシオン0.25mg ベンザリン5mg を服薬しています。

変薬してから直後は、本人も幻聴が消え随分楽だといっていましたが、1週間した現在、「誰かが私のせいで死んでしまった」等々、「許して下さい」などずっと叫びだしました。
食事は殆ど摂らず、1日にバナナ半分程度。水分は無理やりに摂取しています。
約10日間で5kg体重減少しています。

前の薬がきれて、このようになってきている様子なのですが、まず、血糖のコントロールを行いたいので、ジプレキサ リスパダール エビリファイは服用を避けたいです。

現在の体の状態(食べない等)を医師に伝えても糖尿病だから、仕方がない・・との助言しかありません。
上記の薬の変更の仕方ぐらいしか方法はないのでしょうか。
薬を変更する事すら出来ないのでようか。
教えて頂けますようお願い致します。


林: A医師の処方もB医師の処方もでたらめです。このままでは命にかかわることになりかねません。いわゆる、「医者に薬で殺される」というのはこういうケースです。早急に主治医を変え、適切な治療を受けてください。

A医師の処方がでたらめなのは、糖尿病であるのにもかかわらず、ジプレキサ、エビリファイといった非定型抗精神病薬を出していることです。糖尿病の方がこうした薬を飲んで、昏睡から死に至ったケースが数年前に続出し、以後、これらの薬は糖尿病の方に処方する場合は慎重のうえにも慎重を要するように指示されています。事実上は禁止されているといってもいいくらいです。精神科医でありながらそれを知らないのは、非常識の限度を超えています。しかも、

幻聴のこと、副作用の事を伝え、薬の変更を頼むと、

このようにあなたから指摘された時点で、非定型抗精神病薬と糖尿病のことを調べるのならまだしも、

エビリファイ錠6m リスパダール1% エビリファイ散1% オルガノン、に変更されました

上記のような対応をとったということは、エビリファイ(この薬も糖尿病には危険です)について何も調べずに処方したことは明らかで、これは自己の無知をあらためようという態度が欠如していることを示しています。この医師の治療を受け続けていたら命を落としかねません。ですから、

1週間前に主治医をB医師に変更し、

このように主治医を変更されたのは適切な行動でした。しかし、

デパス0.5mg パキシル10mg ハルシオン0.25mg ベンザリン5mg を服薬しています。

これはA医師に匹敵するでたらめな処方です。
統合失調症の診断が確実についていて、しかも幻聴が激しい時期に、抗精神病薬を全く処方しないというのは実に危険な治療です。さらに、パキシルはこのケースでは症状を悪化させる可能性も捨て切れません。

変薬してから直後は、本人も幻聴が消え随分楽だといっていましたが、

これは決して症状が改善したのではありません。【0741】などにも書きましたが、統合失調症の方が、それまで飲み続けていた抗精神病薬を中断すると、いったんはよくなったように見えることがしばしばあります。そしてご本人やご家族は喜んだりするのですが、まもなく症状が再燃し、しかもそれは以前よりも悪くなることが大部分です。このケースでも、

変薬してから直後は、本人も幻聴が消え随分楽だといっていましたが、1週間した現在、
「誰かが私のせいで死んでしまった」等々、「許して下さい」などずっと叫びだしました。
食事は殆ど摂らず、1日にバナナ半分程度。水分は無理やりに摂取しています。
約10日間で5kg体重減少しています。


このように悪化するのは実に典型的で、B医師の処方を見た時点で確実に予想できたことです。そして、今の治療ではさらに悪化していくことも確実です。自殺行為も出てくるかもしれません。さらに加えて、食事が取れないことで体も衰弱すれば、統合失調症の治療もどんどん難しくなっていくことも、やはり確実です。にもかかわらず、

現在の体の状態(食べない等)を医師に伝えても糖尿病だから、仕方がない・・との助言しかありません。

この助言はとうてい医師によるものとは思えません。無能であるか、やる気がまったくないかのどちらかでしょう。この医師の治療を受け続けていたら命を落としかねません。

以上のとおり、A医師の治療もB医師の治療もでたらめです。即刻、別の医師にかかるべきです。
もう少し前の時点であれば、まともな精神科医を受診さえすれば改善が期待できたと思います。すなわち、

薬を変更する事すら出来ないのでようか。

決してそんなことはありません。糖尿病に禁止されているのは非定型抗精神病薬だけで、定型抗精神病薬と呼ばれる薬(セレネース、コントミンなど)は使えますので、そうした薬に変えるのが適切といえます。

けれども、精神状態と身体状態の両方が悪化し、しかも糖尿病をかかえている現状では、入院して内科治療と精神科治療の両方を並行して受ける必要があります。大学病院など、大きな病院を受診すべき状況といえるでしょう。


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