精神科Q&A

【1039】うつ病の再発の兆候について


Q: 私は42歳女性です。39歳でうつ病を発症し、2年間休職していました。短時間勤務から仕事に復帰し、5ヶ月かけてフルタイムにもどりました。ただし、本来の業務ではなく、デスクワーク中心で、自分の得意分野である、十分能力を発揮できる仕事で、高い評価も受け、ほとんど仕事のストレスを感じることなく過ごしました。フルタイムに戻ってから、1年4ヶ月経過し、3ヶ月前から本来の業務(第一線で、トラブル処理のような業務を含みます)に戻りました。本来業務に戻ったのは、約4年ぶりのことでした。

 その異動の内示を受けた数日後、ひどい気分の落ち込みを感じました。症状は数日でなくなりましたし、また気分の落ち込みは感じながらも、仕事も日常生活も変わりなくできていました。ただ、職場復帰後、特に心配な症状が何もなく、「再発」は自分には無縁なことと思っていただけに、このような症状が出たことそのものに、「本来業務」に戻ることにそんなに不安があったのか、とショックを受けました。

 本来業務に異動してから、1週間後、また症状が出ました。4年ぶりの仕事で、自信を失うようなことがあったためと思います。今回は、気分の落ち込みはありませんでしたが、@朝の寝覚めが非常に不快、A強い疲労感を感じる、というようなものです。この時も、仕事も日常生活も支障なくできており、数日で解消しました。

 復帰の2ヶ月前に、「寛解です」と言われ、通院をやめています。主治医からは、「気になる症状が2週間続いたら、受診してください」と言われました。

 お聞きしたいのは、うつ病の治癒後も、再発とまではいかなくても、このような症状が出ることはあるのか、言い換えれば、受診するまでのことではないのか、ということです。「2週間続いたら」ということは、数日の症状は様子を見ていてよいのか、と思ってはいるのですが、受診の時期を逃して、また長期間の療養になるとしたら、それは耐え難いのです。

 もうひとつは、うつ病になる前は、仕事に不安があっても、このような症状はありませんでした。「寛解した」と言っても、このようなことは、今後もあり、一生、つきあっていかなければならないのでしょうか、ということです。

 なお、うつ病を発症した時の職場は非常に大変なところで、その仕事のストレスも誘因のひとつとは思っていますが、主な原因ではないと思っています。仕事の一部分には、非常に苦手な、自信のない分野があるのですが、それ以外では、優秀であるという評価を受けていると思っています。
 よろしくお願いします。  


林: 当面の間は、通院続けたほうがいいと思います。

 本来業務に異動してから、1週間後、また症状が出ました。4年ぶりの仕事で、自信を失うようなことがあったためと思います。今回は、気分の落ち込みはありませんでしたが、@朝の寝覚めが非常に不快、A強い疲労感を感じる、というようなものです。この時も、仕事も日常生活も支障なくできており、数日で解消しました。

たとえ数日であっても、このような症状が出たのであれば、通院は再開すべきです。それ以前に、たとえ寛解していても、職場復帰前に通院を中止するのは危険だと私は考えます。したがって、

 復帰の2ヶ月前に、「寛解です」と言われ、通院をやめています。主治医からは、「気になる症状が2週間続いたら、受診してください」と言われました。

この方針には私は賛成できません。うつ病が寛解してからの職場復帰は大きなイベントで、この時に再発、あるいは再発まではいかなくとも調子を崩すことはしばしばあります。そういう重要な時期をサポートするのが、治療する者の役割であると私は考えます。ですから少なくとも私なら、あなたのうつ病の症状がすべて消失したとしても、薬の処方を続けるかどうかはともかく、しばらくは通院を続けることを勧めたでしょう。

もっとも、あなたの主治医のような方針、すなわち、寛解してからの方針は患者本人に委ねるという方針も一理はあると思います。場合によっては私もこのような方針を取ることもあります。(この【1039】のケースについてはそうしなかったと思います。うつ病の診断が確実と思われるからです)
ただし、
「気になる症状が2週間続いたら、受診してください」
この指示は決して納得できません。2週間と規定することに根拠はないと思います。再発の兆候があれば早めに治療を再開するにこしたことはありませんから、「気になる症状があれば」、あるいはどういう場合に再発の可能性を考慮すべきかを説明すべきところでしょう。

受診の時期を逃して、また長期間の療養になるとしたら、それは耐え難いのです。

おっしゃるとおりだと思います。

 お聞きしたいのは、うつ病の治癒後も、再発とまではいかなくても、このような症状が出ることはあるのか、言い換えれば、受診するまでのことではないのか、ということです。

前半(うつ病の治癒後も、再発とまではいかなくても、このような症状が出ることはあるのか)についてはイエスです。これはゆり戻しとも呼ばれるものです。うつ病の相談室のp.110〜をご覧ください。
しかし、後半(受診するまでのことではないのか)についてはノーです。医師の診察を受け、気にするほどはないレベルのものか、適切な対処法はどのようなものか、服薬を再開する必要はないのか、などを相談すべきです。

結論としては、「2週間」という期間にこだわらず、もう一度主治医の先生に相談してみることをお勧めします。



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