精神科Q&A

【1021】うつ病の入院治療を終え職場復帰しましたが、経過が思わしくありません(【0867】のその後)


Q【0867】とても苦しいのですが、通院を躊躇していますで回答をいただいた者です。
その後、どんどん症状がつらくなっていき、その医院の先生に相談したところ、入院設備のある大学病院を紹介していただきました。そして昨年秋から半年ほどの入院治療を行いました。(家では気を遣ってしまい、うまく休むこともできないと相談したところ、任意入院となりました)
主治医の先生にも恵まれ、充分休養でき、三ヶ月前には退院、以後は週2回のペースで通院を続けながら自宅で休んでいました。おかげさまでずいぶん元気になり、休んでいた趣味にも手が伸ばせるようになり、本も読めるようになりました。

約一ヶ月前から復職し、“仮出勤(病休扱い)”という形で3ヶ月をかけてだんだんと勤務時間を増やしていく、というやり方で職場復帰しました。病休扱いのため、わたしの仕事担当にフルタイムで働く“補助”的な人も配置されました。入院中は早く職場復帰がしたいという気持ちでいっぱいだったため、復帰してからは周囲からも「飛ばしすぎでは」と言われるくらい、やってくることができました。周りの人たちが「元気になったね」と安心してくださったり仕事を任せてもらえることがうれしくて、夢中でした。

しかし、ひと月が経とうとしている今、また不眠などに悩まされるようになりました。本は読めますが復活した趣味(オーケストラです)にも行かれなくなってきました。家で楽器にさわることもなくなりました。
夜中に首筋や手首がむずむずして、ひっかいてしまったり、どうしようもなくなって救急外来で診てもらい、注射で眠らせてもらうことも何回かありました。

仕事は好きだと思います。前に症状が悪くなったときも、仕事が原因とは思いませんでした。・・だからといって、何が原因かと言われてもわからないのですが・・でも、今は以前より仕事にストレスを感じているような気がします。
補助で入ってくれている人は新卒で、仕事については何もわからず、結局のところわたしが全部指示をしてやりやすいように用意しなければいけません。けれども、1日学校にいられないわたしよりもフルタイムでいられる彼女の方が学校や生徒のことを把握できていることもあります。ですから、逆に、「こんなに問題なくがんばれる人がいるなら、わたしがへんにがんばってここにいるのは学校や生徒にとってよくないことなのではないか」「自分のわがままなのではないか」など考えてしまうこともあります。

外来の先生には「10やることがあったら、今は2〜3できればいい」「とにかく無理をしないこと」と言われています。けれど、どうしても、「ちゃんとがんばれないなら、いないほうがましだ」と思ってしまいます。
先生は、心配をしてくださって、あまり負担のないようにと学校の方にも連絡を入れてくれたようです。それはわたしにとっては不服なことだったのですが・・その後、管理職の先生に「○○さん(わたし)が、こき使わないように先生に頼んだのか?」と聞かれました。とてもショックで、本当に、自分はこの場所からいなくなったほうがいいのではないかと思いました。・・でも、実際にはいなくなることをしないし、わたしは、ただ仕事から逃げているだけなのでしょうか?そう思うと、甘えている自分が本当にいやになってしまっています。それとも、また病気が悪くなってきたのでしょうか?

退院後も続けていた睡眠薬は、朝残ってしまうことがあり、仕事に行かれなくなるのでは・・と不安になるとどうしても飲むことができない、ということで一時期すべてカットしてもらいました。(だから眠れないのでしょうか)

隔週だった通院も、今では毎週になっています。

先週まで飲んでいた薬は
毎朝夕食後にトレドミン50mg、リーマス100mg、リボトリール0.5mg
毎食後にガスモチン5mg
就寝前にリボトリール1mg、ユーロジン1mg
でした。

ですが、毎朝3時ころには目が覚めてしまい、体の方もだいぶ疲れてしまったので
薬が変わりました。
毎朝夕食後にトレドミン50mg、リーマス100mg、テグレトール100mg
毎食後にガスモチン5mg
就寝前にリボトリール1mg、ユーロジン2mg
です。

テグレトールが気になって調べたところ、てんかんの薬、と書いてありました。
わたしはてんかんの疑いもあるのかな・・とも不安です。

以前にもお話しましたが、外来の診察のときにはどうしても「大丈夫です」くらいしか言えません。
眠れなかったり、頭痛で気分が悪くなったり、いろいろつらい症状はあるのですが、そういう弱いところをみせると、自分が本当に情けなくてその場にいられなくなってしまうからです。・・でも、もう自分だけではがんばれないと思うので、病院へは行っているのだと思います。

他に頼るところもなく、また林先生に相談させていただいてしまいました。
お忙しいと思うのに、本当に申し訳ありません。。
・・もし、甘えや、擬態うつ病、と思われたら、はっきりおっしゃってください。
わたしもそうですが、周りの人や主治医の先生もそう思われているのだとしたら本当に恥ずかしくて、生きていかれません。



林: 【0867】で回答した通り、あなたはうつ病です。甘えや擬態うつ病ではありません。かなり典型的なうつ病の症状ですから、診断に間違いはありません。入院治療によって回復したという経過も典型的です。そしてもうひとつ典型的なのは、残念なことですが、せっかく回復したのに無理をしすぎて再発しかかっているということです。

外来の先生には「10やることがあったら、今は2〜3できればいい」「とにかく無理をしないこと」と言われています。

この先生のおっしゃるとおりです。おそらくこの言葉をあなたは外来で繰り返し言われているのではないでしょうか。うつ病の回復期の注意はこのことにつきます。実に単純なことなのですが、残念ながらこれが守れないためにスムースに回復できないうつ病の方が多いのです。あなたもその典型的な例になってしまっています。

入院中は早く職場復帰がしたいという気持ちでいっぱいだったため、復帰してからは周囲からも「飛ばしすぎでは」と言われるくらい、やってくることができました。周りの人たちが「元気になったね」と安心してくださったり仕事を任せてもらえることがうれしくて、夢中でした。

この時点で、おそらく主治医の先生は、あなたの今後の経過が悪くなることを予測されたのだと思います。「周囲からも「飛ばしすぎでは」と言われるくらい、やってくることができました」この一文からは、この時点であなたは「飛ばしすぎ」といわれることに一種の喜びや誇りを感じておられたことが読み取れますが、実はこれはうつ病の回復期としては最も好ましくない行動のひとつなのです。この時点で、今のあなたの状態はほぼ確実に予測できたといえます。

先生は、心配をしてくださって、あまり負担のないようにと学校の方にも連絡を入れてくれたようです。

普通はこういうことはしません。あなたが不服に感じられたのももっともです。けれどもおそらく、当時のあなたの状態をみて先生は、これは確実に悪化する、しかし本人(あなた)にはその認識がどうしても持てない、悪化を防止するためには職場に連絡する以外にない、と判断されたのだと思います。残念ながらこれはむしろ裏目に出たようですが・・・

わたしは、ただ仕事から逃げているだけなのでしょうか?そう思うと、甘えている自分が本当にいやになってしまっています。それとも、また病気が悪くなってきたのでしょうか?

ここまでの回答でご理解されたと思いますが、逃避や甘えではありません。うつ病です。そのうつ病が悪くなってきたのです。そして、繰り返しますが、残念ながらこれは悪くなるべくして悪くなったと言わざるを得ません。

【0867】にもお書きしましたが、あなたの主治医の先生はかなり良い医師だと思います。この先生の治療方針に従っていれば、あなたの病気は最短距離でスムースに治ると思います。「とにかく無理をしないこと」などのアドバイスに忠実に従うことをお勧めします。処方についてもこの先生に全面的にお任せしたほうがいいでしょう。ですから、

退院後も続けていた睡眠薬は、朝残ってしまうことがあり、仕事に行かれなくなるのでは・・と不安になるとどうしても飲むことができない、ということで一時期すべてカットしてもらいました。

このようなことはすべきではありませんでした。また、

テグレトールが気になって調べたところ、てんかんの薬、と書いてありました。
わたしはてんかんの疑いもあるのかな・・とも不安です。


テグレトールはうつ病の時にも使う薬で、あなたのケースではてんかんとは何の関係もありません。
ここで申し上げたいのは、このようなことを自分で調べて不安になるのなら、最初から調べないか、または先生に直接お聞きするべきです。

以前にもお話しましたが、外来の診察のときにはどうしても「大丈夫です」くらいしか言えません。

これは治療のためには好ましくないのは言うまでもありません。症状をお話し、疑問点は質問するべきです。

眠れなかったり、頭痛で気分が悪くなったり、いろいろつらい症状はあるのですが、そういう弱いところをみせると、自分が本当に情けなくてその場にいられなくなってしまうからです。

このように感じられるうつ病の方は時々いらっしゃいますが、正確な治療のためには正確に症状をお伝えしなければなりません。あなたの状態は弱いとか情けないというものとは質が全く異なります。病気の症状です。ですからそれを医師に伝えれば、それだけ早く良くなります。

他に頼るところもなく、また林先生に相談させていただいてしまいました。

この考え方は間違っています。主治医の先生に相談してください。先にお書きしたとおり、あなたのケースでは、今の主治医の先生の方針にすべて従えば、最短距離で治ると思います。私などには一切質問されないことが、あなたの経過をむしろ良くすると思います。ですから、今後は私にメールを出さないでください。そして今の治療を続けてください。


P.S.
「今後は私にメールを出さないでください」と言いましたが、それは、完全に回復されるまでは、という意味です。そしてあなたが完全に回復されることは確実です。その時にメールをいただくのを私は楽しみにしています。



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