精神科Q&A

【0972】入院予定の子供の件での親の覚悟


Q: 17歳の息子について質問させていただきます。息子は、中学生の2年生の後半から少し異常が見られました。最初はどこにでもあるが少し過度な程度で、異様に反抗する、自分の部屋に閉じこもる、等でした。
友人が非常に少ない様子は小学生のころからですが、それでも決して友人と会うことは嫌いではありませんでした。
 そのうち三年生の夏ごろになって問題を起こしました。幻聴が聞こえるとのことで、友人が自分の悪口を言っているというようなことでした。
この件で暴力沙汰をおこしましたが、半分はイジメが原因のようで何とも判別つかないものでした。つまり子供が原因で暴力沙汰をおこしたのか、イジメが原因でそうなったのかは確証がありません。
 ただ、夜昼逆転、パソコンゲーム依存、怒るとひきつったような顔になる、目が引きつっているなど、かなり異常な顔つきでした。
私が相当ひどくしかりつけたこともありました。刃物で反抗するようなこともありました。自分の子供のころのアルバムの写真を切り刻むなど、自己否定的な側面もありました。

 その後、しばらく落ち着いていましたが、3年3学期からは登校拒否で、高校も入学したものの1ヶ月しか行きませんでした。やはり友人との間で問題があったようです。幻聴があったかどうかは定かではありません。
 その後は家庭内ですごしていました。ほぼ昼夜逆転状態です。大量のマンガと怪しげな裏情報の本とゲームの日々です。
 ただ、精神科へ行くようになり、昨年後半から少し落ち着いて来ました。表情も以前のような険しいものではなくなりました。
 一度家庭内で暴れたことがありましたが、それほど激しいものではなくなりました。
 今年再度受験し高校に行きましたが、やはり学校では精神的に負担のようで、学校に行く、やめるという判断の迷いがありました。1ヶ月は通いましたが、その後は通学困難な様子です。学校へ行くと幻聴のようなものがあるようです。
 ただ家庭では幻聴は無いようなので、よくわかりません。本人はトラウマだと言っています。また中学の時の先生を非常に恨んでいる様子です。
 自分でもかなり『病気』であると認識しているようで、何とか苦しい状況を取り除きたいと考えているようです。
 薬が無いと眠れないなどの様子もあるようです。やる気がでない、だるいなどとも行っています。

 成績は決して悪くないのですが、現実から乖離したようなことを言います。それは、学年で一番になりたい、日本で医学のトップの学校へ行きたい、DNAの研究をしたい、自分の遺伝子を治したいというようなことです。頭がよくなる方法であれば、速聴や速読をなんでもやると言っています。研究者になりたいというものの何のためということには返答しません。さらに自分が研究者になれない場合に備えて、今から養子を迎えて英才教育して研究者にすれば、例え自分が研究者になれなくても大丈夫だというようなことまで言っております。そのために英才教育が必要だ、ロボットの修理のようにすぐに自分の精神状態を治してほしいなどと言っています。正常な人間の判断とは思えないようなことを考えています。かなり本も読んでいるようです。
 本人は隔離病棟に入りたい、直したいという意識がありますが、同時に非常にあせりがあるようです。

 しかし最近になって、精神科医の対応に幻滅して数日分の薬を一度に飲むというトラブルを発生させました。家庭では落ち着いて見えただけに、あまりの豹変に驚いています。
 別の精神科医のコンサルでは、死ぬために飲んだかという質問に、意識的に死ぬ気持ちはなかったものの、死んでもいいとこたえたようです。
 退院、数日の間をおいて登校してみたものの、やはり学校は苦しい様子でした。そこで一度入院しようということに本人も納得しています。診断でははっきりとは統合失調症とは言われておりません。

 ここで親としての覚悟ですが、明確に統合失調症であるという前提で子供に接したほうが良いのでしょうか。
 孤独にしておいたストレスが徐々に精神負担をもたらしているような気がしないでもないですが、幻聴などがあるようだと統合失調症と覚悟したほうがよろしいでしょうか。
 一度は社会的なアノミーが原因ではないか、戸塚ヨットスクールのような施設の方が実効があるのではないかと私は思っていました。
子供が器質的な欠陥が原因なら薬物が必要ですが、たとえば免疫力の欠如のように感情制御の能力が未発達でこうなっているなら、これは薬物ではなくトレーニングの方だと思っていました。
 また入院する本人にはできるたけ休養をとらせたいのですが、本人はあせりからか全部の教科書がほしい、パソコンも携帯も病棟にほしい、速聴機も速読もほしいなど、およそ入院らしからぬことを話しています。自分で入院したいといいながら休養と反対のことを要望しています。
私としては病気であるならできるだけモーツアルトなどの静かな曲を聴かせるか、宮本武蔵のような昔からの定番の本を読ませるかしてやりたいと思います。
 またマンガでわれを忘れるとか笑うチャンスができるのもよいかと思っています。
 本人の神経が病気との対決のためからか、ピリピリに緊張しているようです。どこで調べたのか、難解な学術書の書名を指定して購入しろとか言っています。すでに入手したものもあります。
 このようなものは全部撤去したほうがよろしいでしょうか。速聴も健常者ならともかく頭に負担をもたらすため、止めたほうが良いと思いますが。
 とにかくこどもの環境整備と接する態度の上での覚悟という面でアドバイスいただければ幸いです。


: 息子さんは統合失調症(精神分裂病)の可能性が高いと思います。
思春期に入ったころからの漠然とした変化とひきこもり傾向、それに続く幻聴・被害妄想と思われるエピソード、感情の不安定、衒学的な傾向などは、統合失調症として矛盾のないものです。古典的には破瓜型(はかがた)と呼ばれるものに近そうです。

 この時期にいったん入院するという対応は、診断の確定と今後の方針決定のためにも適切だと思います。このようなケースでは、本人が入院に同意しても、入院後すぐにそれを撤回して退院すると言い出されることもしばしばあります。それには本人なりの、それなりに筋の通った理由があるのですが、そこで退院してしまうようではその後の治療が危ぶまれることになりかねません。

 あなたが親として留意すべきことの第一はこれです。つまり、一定の方針に基づき治療を始めたら、それを続けるということです。本人の言葉や信頼性の低い情報に惑わされると、治療がそもそも開始されないのと同じことで、良い経過は期待できません。

 もうひとつは、あせって色々な行動を取らないことです。あなたのメールを読みますと、親としての心配はよく伝わってきますが、それがかえって的外れな行動につながりそうな危うさが感じられます。

私としては病気であるならできるだけモーツアルトなどの静かな曲を聴かせるか、宮本武蔵のような昔からの定番の本を読ませるかしてやりたいと思います。
またマンガでわれを忘れるとか笑うチャンスができるのもよいかと思っています。
本人の神経が病気との対決のためからか、ピリピリに緊張しているようです。どこで調べたのか、難解な学術書の書名を指定して購入しろとか言っています。すでに入手したものもあります。
このようなものは全部撤去したほうがよろしいでしょうか。速聴も健常者ならともかく頭に負担をもたらすため、止めたほうが良いと思いますが。


上記のように、息子さんのためにやった方がいいこと、やめた方がいいことについて、あなたが心を砕いておられることはよくわかりますが、どれも果たして適切かどうか判断は難しいところです。子どものことを考えるあまり、親として、ついやりすぎる人もしばしばいらっしゃいます。あなたがどうすべきかについても、主治医の先生によくご相談することをお勧めします。


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