精神科Q&A

【0112】 精神病とうつ病の違いがわかる本を紹介してください


Q: 20歳の学生です。うつ病についてレポートを書いているのですが、うつ病と精神病は違うということをテーマにしたいと思います。うつ病と精神病の違いを詳しく知るには、どんな本が参考になるでしょうか。  

: 「精神病」という言葉は、とても曖昧な言葉です。脳に原因がある病気をすべて精神病と呼ぶ場合もあります。逆に、原因がわからないこころの病気をすべて精神病と呼ぶ場合もあります。こころの病気の中で、特に現実との接触が保てなくなる病気を精神病と呼ぶ場合もあります。幻覚や妄想が出る病気を精神病と呼ぶ場合もあります。統合失調症(精神分裂病)とそれに近い病気を精神病と呼ぶ場合もあります(たとえば、笠原嘉先生の名著「精神病」は、統合失調症(精神分裂病)の本です)。ですから、「うつ病と精神病の違い」というご質問は、「精神病」とはどういうものを指すか、ということによって答えは全然違ってきます。このテーマのためには、精神科の歴史からはじめて現代の精神科全般の考え方までを網羅しなければなりません。こうなるとやさしい本というのはほとんどありません(それでもあえてご紹介するとすれば、うてな・ひろし著 精神医学の思想 創造出版 をおすすめします。比較的読みやすく、それでいてよく読むと実に内容の濃い本です)。というわけで、「精神病とうつ病の違い」というのは、残念ながら学生のレポートのテーマとしては大きすぎると思います。むしろ、うつ病とはどういう病気かなどから始めるべきだと思います。それにはうつ病の図書室の本が参考になるでしょう。

 それからこれは推測ですが、もしかするとこのテーマを考えられた背景として、「うつ病は誰もがかかる病気で、精神病は特別な重い病気」とあなたは考えておられるのではないでしょうか。だとしたらそれは大きな間違いです。うつ病の人を安心させるために、ついそういうふうに誤解される言い方がされることもありますが、これは精神病に対する偏見を強める言い方で、非常に良くないと思います。万が一あなたが「うつ病は誰もがかかる病気で、精神病は特別な重い病気」と誤解されていたら、あらためて頂きたいと思います。

 


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