精神科Q&A

【0954】うつ病といわれた主人の診断への疑問


Q私は41歳 会社員(女)です。主人(49歳)のことで相談させてください。

3ヶ月ほど前から、心臓が締め付けられる感じがすると言い出し、徐々に回数が増え、日に5〜6回程胸を押さえていることがあり、会社の産業医の勧めで近くの開業医(内科)に受診しました。

心筋梗塞の薬をもらい、発作時にはニトロを服用しましたが、軽減しませんでした。何回か通いましたが、症状は変わらず、何度目かの受診時に、胸が苦しくなる症状が出て、その様子を見た先生にすぐに総合病院を受診するように言われました。
その週のうちに総合病院で心臓カテーテル検査をしましたが、異常なしでした。
総合病院の先生からは、「特に心臓に問題はないけれど、痛みなどに過剰な反応を示すタイプの人です」と言われました。
元の開業医の先生にも、あとはするべきことがないと、さじを投げられてしまいました。

その後、1〜2週間して、朝、会社でいつもと違う体の不調を感じ、社内診療所で血圧を測ったところ160/110くらいあったそうです。
その日は週に一度産業医が来る日だったので、2〜3時間そのまま診療所で休んで、その後、来訪した産業医に何か薬を飲まされたそうなのですが、その薬を飲んで1時間ほどして再度血圧を測ったところ、相変わらず160/110位の数値で、産業医に「すぐに心療内科を受診しなさい」と言われ、その場で、心療内科の先生に予約を取ってくれて、受診することになりました。

心療内科の受診結果は「うつ病」でした。
主人の仕事内容や、職場の状況・いろいろな体の状態を細かく聞かれたそうです。
その結果、心臓が締め付けられるような感じがしたり、血圧が安静にしていても下がらない状態なのは、ストレスと過労により、体が興奮状態になったままでリラックスする状態に戻れないのが原因だと言われた。ということでした。
「できれば、会社を2週間から1ヶ月休むように」といわれて、主人は「一ヶ月の休みを出してきた」というのです。

飲んでいる薬は、<一日3回>ガスモチン錠5Mg ユーパン0.5Mg <一日1回>パキシル錠20Mg サイレース錠1Mgです。
パキシルは、最初の2週間は10Mgでしたが、「毎日ごろごろしていて何もする気にならない」と言う主人の言葉で、翌週から20Mgになり現在に至っています。

ご相談したいのは「主人はうつ病ではない」と、私は思っているのです。
・主人はどんなに必要とされているときでも、自分がしたくないこと、面倒くさくて嫌なことはしない人。(ふだんからやる気がない)
・普段から、平日は帰ってくると毎日晩酌をして、食事を食べたあとは、ごろっと横になるとテレビを見たまま寝てしまい、お風呂にも週に2回から多くて3回しか入りません。
 休日は、朝早くに目が覚めるようですが、起きてきて居間でテレビを見ながら寝て、朝食を食べてまたテレビを見ながら寝て、昼食を食べた後も同様で、夜はお酒も入るので、またすぐに寝てしまいます。
・うつ病と診断される前も後も、自分の好きな宝くじと競馬はちゃんとやるし、食事も毎晩晩酌するのに、ご飯をお変わりして食べるほどです。
・うつ病と診断されたことを、会社の人に積極的に話そうとする。(私は、診断書を提出する必要がないのだから、ストレスと過労に体が興奮状態にあると言う先生の言葉を伝えればいいとアドバイスしたのですが、 「病名を言ってきたから」とけろっとして話します。)
・受診時に、出来ていることは話さずに、出来ないこと(自分に都合のいいこと)だけを話してくる。
・病気については、自分から一切積極的に動こうとしない(家庭用血圧機で計るように言っても測らない)
 復職についても、先生が良いというまで休む気でいます。(産業医は治るまで3ヶ月かかるって会社には言ってあるからとややもすると、それまで休む気でいるのかも知れません)
・職場の人にも、復職後はいきなり今までの仕事に戻らずに負担にならない仕事にしてくれると言われているのに、復職しないことに不安を感じないようなんです。

私の考えすぎでしょうか?
仕事量は多いですが、主人は職場では誰にでも臆面もなく何でも平気で言ってのける人です。
しいて言えば、3ヶ月前に部下が定年で辞めて、残った部下の意味不明な言動に悩まされ、今までのように怒鳴りつけても直らずにいて、かなり腹を立てていました。症状が出だしたのもそのころからです。

主人の病名は、うつではなく、単なる職場逃避にしか思えません。
私の単なる思い込みでしょうか?林先生はいかがお思いでしょうか?ぜひお考えをお聞かせください。
よろしくお願いいたします。                  
                   


「主人はうつ病ではない」と、私は思っているのです。

その根拠としてあなたが箇条書きしておられる内容は、確かにうつ病ではないというあなたの見解を支持するものです。どれもほぼ擬態うつ病に特徴的な症状であるといえます。
 そうしますと、

主人の病名は、うつではなく、単なる職場逃避にしか思えません。

というあなたのおっしゃることは正しいということになります。

けれども一つ問題なのは、今の私の判断は、うつ病ではないと思っているあなたが書いている内容に基づいているという点です。メールでの相談ではこの問題は常につきまといますが、特に質問者が病気についてのある程度の知識とかなり確固とした見解を持っておられるときは、重要な問題になります。この【0954】はまさにそれに当たると思います。

・ 受診時に、出来ていることは話さずに、出来ないこと(自分に都合のいいこと)だけを話してくる。

ご主人について、あなたはこのように書いておられます。
しかし、ご主人が出来ていることを言わないのと同じように(といいますか、逆に)、あなたもご主人が出来ていないことをメールで言っていない可能性も否定できないところです。

したがいまして、メールの内容そのものからは、ご主人はうつ病でないと判断できます。しかし、このメールは偏った立場から書かれたものであると推定できますので、判断は困難というのが私の最終的な回答になります。

ですので、私の回答はあくまで参考にとどめ、あらためてご主人の状態を客観的に見たうえで、主治医の先生に報告・相談されることをお勧めします。


その後の経過(2006.3.5.)


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