精神科Q&A

【0951】アスペルガー障害の診断前に自分でチェックしておくべきことは?


Q: 私は27歳女性です。先日偶然にもアスペルガー症候群(アスペルガー障害)を知り、その特徴が私の性格(以下10項目)とかなり一致します。
・世の中の常識がわからない
・TPOに応じて「言って良い事と悪い事」の違いがわからない
・同世代と付き合うのが難しい
・抽象的・概念的な話をされると理解できない
・異常なほど特定の趣味や物事に熱中する(例:家元制度、三権分立など)
・仕事上で細かい指示をされると大丈夫だが、大雑把な説明で自発的に動くように言われると全くできない
・筋道を立てて話すことができない(説明が回りくどい)
・ひとつのことに集中すると、後のことは全部忘れる
・計画・スケジュールが立てられない
・どうでもいい過去の細部をよく記憶している

などです。生活に支障をきたしているので、「傾向と対策」を知るためにも、大学病院の精神科を予約しました。1ヶ月後に受診します。その際、事前に何か用意したらいいものやチェックしておくべきものは無いでしょうか?看護婦さんは保険証だけ持って来てくださいとのことですが。「困っていること」「私の特徴」のメモ書きを用意しましたが。

受診する際、一人で行くか、主人に同席してもらうか、どちらかを考え中です。(主人が客観的にお医者様に説明するとわかりやすいかなと思いまして。また、主人は今後私をどのようにサポートしたらいいのかをお医者様に聞きたいそうです)


: 確かにあなたの挙げておられる10項目は、アスペルガー障害の特徴に一致するものです。もっとも、このような性格特徴を持っている方はたくさんおられますので、これだけで受診や治療の必要があるとまでは言えませんが、生活に支障をきたしているとなると、一度は受診することに意義はあるでしょう。

事前に何か用意したらいいものやチェックしておくべきものは無いでしょうか?

というご質問ですが、むしろ何も用意しないほうがいいでしょう。どんな病気でもそうですが、症状について受診前に調べすぎると、診察の際にもその知識にとらわれた受け答えをしてしまいがちで、それはかえって診断の正確さを妨げることになりかねません。

「困っていること」「私の特徴」のメモ書きを用意しましたが。

これだけで充分だと思います。さきほど言いましたように、生活に支障をきたしているということが、障害といえるレベルかどうかのひとつのポイントになりますので、「困っていること」の具体的な内容は重要です。

それから、一つだけは事前に確認しておいたほうがいいことがあります。それは、あなたの幼少時(特に3歳以前)の発達がどうであったかということです。
 アスペルガー障害は、広汎性発達障害の一つです。成人になった時点で広汎性発達障害と診断するための必要条件の一つは、今あらわれている障害(症状)が、あるいはその障害の萌芽が、幼少時から認められるということです。アスペルガー障害では、症状のポイントはコミュニケーションの障害で、これは幼少時には、目と目をなかなか合わさない、友達とうまく遊べない、などの形で表れます。このようなことがあったかなかったかは診断上とても重要です。

もう一つは、言葉の発達です。
広汎性発達障害の分類は、今後の研究により変わっていく可能性は充分ありますが、現在のところ、アスペルガー障害と最も鑑別(区別)が難しいのは、高機能自閉症です。この二つは、成人になってからの症状を見ても事実上区別できません。鑑別のポイントは、自閉症では言葉の発達の遅れがあるが、アスペルガー障害では言葉の発達に遅れはないということです。ですから具体的には、言葉を初めて発した年齢や、二語文を初めて口にした年齢などのチェックが必要になります。

もっとも、今の説明はある一つの立場からのもので、アスペルガー障害と高機能自閉症は同じものであるとする立場もあります。しかしいずれにせよ、言葉の発達やコミュニケーションの発達がどうであったかは、診断上重要なポイントになります。 

さきほど、何も用意もチェックしなくていい、と言いましたが、それは現在の症状に関してのことで、幼少時のことは急に聞かれても答えられないことが多いでしょう。ですからこれだけは事前にチェックしておいたほうが診断はスムースになります。

受診する際、一人で行くか、主人に同席してもらうか、どちらかを考え中です。

とのことですが、実のところ、お母様に同行していただくのが、診断上はもっとも有益です。幼少時のことを最もよく知っているのは通常お母様だからです。


その後の経過(2006.3.5.)


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