精神科Q&A

【0939】内分泌精神症候群が疑われる妻について 


Q私は41歳男性です。34歳の妻のことでご相談させていただきます。妻は、6年前に長女を出産した直後から、様子がおかしくなりました。

 われわれの住む宿舎にスーパーの店内専用カゴがたまり万引が疑われたり、私の実家に住む私の母が来ていないのに、「お義母さんに店内専用カゴを見られ、『ドロボウ』と言われた」と言ったり、険しいことで知られる山に生後6ヶ月の長女を抱っこ紐なしで抱いて登ろうとして私や他の2人の登山者に注意されてもなかなか登るのをやめなかったり、3年前には、「今年の正月、長女にお義母さんがお年玉をくれた時、私が嬉しそうな顔をしたといって、私を指さして笑った。もう二度とお義母さんの家には行かない」と泣き叫んだりしました。

 そこで、私は妻の実母に、妻の様子が少しおかしい旨の手紙を書きました。すると、義母は、「私の娘をキチガイ扱いする気か」と、私を強く逆恨みし、妻と長女を実家に家出させました。そこで私は、仲人さんと妻の実家に行き、手紙を書いたことを土下座をして謝罪したため、妻と長女は帰ってきました。

 しかし、妻の症状は悪化する一方でした。私がテレビを見たりやエアコンを使用していると、「電気代がもったいない」とスイッチを切った上にコンセントまで引き抜いたり、私が病院で出された風邪薬と下痢薬を飲むために電気ポットでお湯を沸かしていると、やはり「電気代がもったいない」と、お湯を捨ててしまったり、私が集めていた雑誌や旅行先等で買っていたバッジやキーホルダーの類を無断で捨ててしまったり、私が畳の上でゴロ寝をしていると足で蹴ったり、掃除機の吸い込み口で叩いたりしました。手刀で、私の下腹部を突いたりもしました。

 妻の異常行動は、長女にも及びました。長女の腕を強く引っ張って脱臼をさせたり、その1ヶ月後にはエレベーターのドアで長女の右手を挟みケガをさせたり、長女がスイミングの昇級テストに合格できないことに腹を立て毎日2時間近くも長女の頭を風呂の湯につける虐待をしたりしていました。

 昨年のことですが、私の父が訪ねてくると、妻が父に、「明日、母と話し合いをしてほしい」と言い、翌日、妻の実母がテープレコーダーを持って現れ、再び上記の手紙のことを非難したり、私が妻の実家に土下座に行った時に、私が眼鏡を投げ、暴力を振るったとのウソを父に言い、一方的に離婚を宣言しました。妻は、父が帰る際に、「あなたのお母さんがこの話を聞いたら、血圧上がって倒れるわ」と、うれしそうに言いました。翌日、私は母が心配になり、長女を幼稚園に迎えに行き、私の実家に行きました。実家に行くことは午前9時前に携帯メールで妻に連絡しましたが、妻は昼前に、私の会社にイタズラ電話し、電話口に私の上司を呼び出した上、「夫と長女が行方不明になったが居場所を知らないか」と言いました。さらに、夕方には警察官を連れて現れ、長女を連れて行きました。妻は、「親権を争っている最中に夫に子供を誘拐された。暴力夫なので暴行傷害の恐れがある」とウソをついて警察官を連れて来たのです。翌日の夕方に宿舎に帰ると、妻と長女の衣類や長女のおもちゃとともに、私名義の預金通帳と現金がなくなっていました。

 妻はその後離婚調停を起こし、離婚と長女の親権と多額の慰謝料を請求してきました。離婚理由書には、「オマエと母親をナイフでメッタ刺しにして殺してやる」と私が週に数回言っていたとか、週に数回髪の毛をつかんで部屋中を引きずり回したとか、何回も執拗に殴り続けたとか、ウソが詳細に書いてありました。調停の日に私は家庭裁判所調停委員に、「私は暴力を振るっておらず、妻は頭の病気だと思います。どうか病院で調べるよう妻にお伝え下さい」と言いましたが、妻と妻の弁護士は頑強に病気を否定、調停委員も、「あなたがそう言うことも、奥さんが離婚したい原因の一つです」と言いはなちました。

 以上の事情を、係争に詳しいある友人に話すと、「奥さんは病院に行っていなかったか」と言うので、「更年期障害で産婦人科に行っていた」と答えると、「裁判所にウソを言う奥さんのことだ。君にもウソを言っているのではないか。病院で調べたらどうか」と言うので、妻の受診していた病院に行ったところ、驚くべきことがわかりました。

 「主訴は月経不順(妊娠反応マイナス)。検査結果: 高プロラクチン血症(プロラクチン37.5)、子宮頚部細胞診異常(classU)、頭部MRI:prolactinomaはない」ということだったのです。

 そして私は妻の兄を訪れ、病気を治療させるよう説得しようとしましたが、「ウソつけ」と怒鳴りつけられ、数分で追い返されました。次の調停期日には妻は欠席し、妻の弁護士は前言を翻し妻が病気であることを自ら調停委員に説明しましたが、妻が現在金融機関で派遣社員として働いていることを理由に、精神異常はないと主張しました。

 その後妻は離婚訴訟を起こし、離婚調停と同様に夫の暴力・暴言等のウソの主張を繰り返し、私の父母に虐待された旨の新たなウソも加わりました。上記テープレコーダーの録音テープを、「暴力の証拠」として裁判所に提出しました。プロラクチンが18になり、高プロラクチン血症が治ったという診断書も出しました。私は、高プロラクチン血症と精神異常の関連について書かれた医学論文を大学の図書館で見つけ出して、そのコピーを裁判所に提出しましたが、裁判官(女性)はこれを理解していないらしく、「暴力は加害者と被害者の認識に違いがあることが普通」と、妻のウソにだまされているようです。

 私の質問は以下の2点です:
(1) 妻の精神異常は放置していても自然に治るのでしょうか。それとも何らかの治療が必要なのでしょうか。
(2) 高プロラクチン血症と精神異常の関連について書かれた医学文献をご教示願います。できましたら、病院や医師についてもご教示いただきたいと思います。 


: このようにすでに法的な争いになっている状態で、一方の当事者であるあなたからだけの情報に基づいて判断するのはフェアではないと思いますが、このメールの記載から判断する限り、奥様の精神状態は正常とは言えません。人格障害、または身体の病気による精神障害(脳内に何らかのはっきりした原因がある、器質性精神障害。あるいは、身体疾患による、症状性精神障害。内分泌異常による精神障害は、症状性精神障害に含まれます)がもっとも疑われます。統合失調症(精神分裂病)の可能性も否定はできませんが、可能性としては低いでしょう。したがって、

(1) 妻の精神異常は放置していても自然に治るのでしょうか。それとも何らかの治療が必要なのでしょうか。

自然に治るとはまず考えられません。

そこで「何らかの治療」の内容が問題になりますが、そのまえに診断が何であるかを検討しなければなりません。
あなたは、奥様の精神症状を、高プロラクチン血症が原因であると考えておられるのでしょうか。

妻の受診していた病院に行ったところ、驚くべきことがわかりました。

 「主訴は月経不順(妊娠反応マイナス)。検査結果: 高プロラクチン血症(プロラクチン37.5)、子宮頚部細胞診異常(classU)、頭部MRI:prolactinomaはない」ということだったのです。


あなたのこの記載からは、いったいどの点を「驚くべきこと」と言っておられるのか不明ですが、メール全体から判断しますと、「プロラクチン 37.5」のことと推察されます。しかし、これは決して驚くべき数値ではありません。

血中のプロラクチンの正常値は月経周期によって違いますが、ピークである黄体期でも30を超えることはありませんので、確かにこの時点で奥様は高プロラクチン血症であったと診断できます。しかし、この程度の異常値では、それほどの精神症状が出るとはまず考えられません。仮に奥様の精神症状と高プロラクチン血症に関連があるとすれば、この高プロラクチン血症の原因である何らかの疾患が精神症状を引き起こしているという可能性です。この場合、まずprolactinomaを疑うのは自然ですので、上記の記載中、頭部MRIで脳腫瘍の検査をしたのは妥当と言えます。そしてprolactinomaがないということであれば、さらに行うとすれば、他のホルモン系の検査でしょう。しかし、それがおそらく行われていないということは、この程度の高プロラクチン血症であれば、経過観察で十分と主治医が判断されたのでしょう。

したがいまして、この高プロラクチン血症を取り上げて、奥様に精神障害があるとするあなたの主張は、理にかなったものとはいえません。医学の文献も調べて裁判官に提出したというあなたの行動は、何とかしたいというお気持ちの表れであることは理解できますが、はっきり申し上げますと、素人のあなたにそこまでのことを行うのは到底無理なことだったといえます。専門家に相談してから行動すべきでした。

私は、高プロラクチン血症と精神異常の関連について書かれた医学論文を大学の図書館で見つけ出して、そのコピーを裁判所に提出しましたが、裁判官(女性)はこれを理解していないらしく、

理解していないのはあなたのほうだと思います。
かえって、医学的にも矛盾があるこのような説明を前面に出すことによって、あなたの他の訴えも裁判官から真偽を疑われることになっているかもしれません。

ただし、以上述べてきたことは、あくまでも奥様の精神症状の原因についてです。精神症状が存在するかどうかはまったく別の話です。このケースでは、あなたの主張を裁判官に認めていただくためには、精神症状が存在するということを証明するというスタンスでいくべきです。そのためには、医学的な文献を調べるなどよりも、あなたの把握している事実をきちんと報告することが第一です。あなたのメールの内容が事実だとすれば、奥様には治療が必要ですから、奥様のためにもこの裁判で事実を明確にするべきだと思います。


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