精神科Q&A

【0909】パニック障害と、うつ状態


Q私は37歳、会社員の夫と一児(8歳)の母です。仕事は地方公務員で、現在「抑うつ状態」との診断名で、病気休暇180日の期限に迫ろうとしているところです。

 事の始まりは5年前に電車内でパニック発作に襲われたことです。それ以前から不定愁訴が多く、特に肩こり、頭痛がひどく、常に不調でイライラしながら生活していました。その頃はなんとか小さな発作(不安感、動悸、めまい、吐き気など)を気合で振り払っていましたが、2年前に異動し、仕事内容も未知の分野だったため、症状が悪化し、とうとう夜中に大発作を起こし、救急車を呼び、ついに精神科を受診、パニック障害と診断されました。メイラックス1mgとパキシル10mg、これですべてが劇的に改善し、3ヶ月そのまま無事に過ごしました。途中、めまいが完全に消えないのでメイラックスが朝晩になりましたが、発作と呼ぶほどのものはなく、そのままの処方が続きました。 発作がなくなるのと平行して、異常なだるさや眠気、注意力散漫、やる気のなさ、何事も億劫、といった自覚症状がでましたが、「平日の疲れでしょう」などと言われ、吐き気が強いときにドグマチールを時々処方されるくらいで、基本は変わりませんでした。ところが、昨秋より仕事のプレッシャーからか、不眠が出てきて、はじめは寝つきのためにマイスリー5mg、10mg、そのうち中途覚醒がひどくなりサイレース1mg、2mgと段々増量されました。パニック障害の方は全く自覚もなくなっていました。

 今年の4月の異動で組織改正もあり、上司が変わって方針が変わり、私達の仕事は大混乱しました。不眠症状も悪化、食欲低下、吐き気が日中も出てきました。ミスも続出しました。ついに、昨年度1年間、症状と戦いながら作り上げた本の原稿(白書もどきのものを出版するのです。)の全部やり直しを命じられたのをきっかけに感情的に爆発してしまい、上司と口論状態になり、そのまま診察のため早退、診察室で大泣きし、2週間の自宅療養を要する旨の診断書をいただき、休み始めました。 休み始めた翌日、何も出来ない私に向って疲れた夫が罵詈雑言を浴びせ、それも新たなストレスとなって、近所に転院して初めて診察を受けたときは、途中で座ってまっていられないくらいに弱っており、「これでは勤務先まで行く事だって、無理」という診断で、1月、2月単位の診断書をもらって休暇を延長する繰り返しで今に至ります。
 
 自宅療養を機に、近所の診療所に転院しました。ここではゆっくり時間を割いて話を聞いてもらえ、先生はパニック障害は無視して「鬱状態」の改善を中心に考えてくださっているようでした。休み始めてからも夫と娘(保育園)の出勤、息子の登校のため規則正しい生活はつづきましたが、どうにも不眠は解消できませんでした。8月頃までかけてパキシルを40mgに増量、メイラックス1mg×2、リボトリール0.5mgそれと毎回のように変わる睡眠薬が処方されました。先生は「睡眠が安定しない限り復職させられない」とおっしゃり、11月下旬まで試行錯誤が続き、ついにはレボトミンも加わりました。その頃、日中のだるさがひどいことから、自分から「朝のメイラックスをやめてみたい」と持ちかけて実行したところ、ウソのように熟睡できる日々が訪れたのです。これが3週間続き、ちょうど病気休暇期限も迫っていることから、復職の相談をしてみましたら、OKをいただくことができました。なのに、とたんにその晩から寝付きが悪化、日中の不安感が出てきて、早朝、日中と吐き気も出てきてしまったのです。大丈夫、緊張しすぎ・・・と言い聞かせるうち、その状態は治まりました。

 私はいつも、情緒的な部分については割りとドライに受け流しているようでいて、じきにそれが身体症状として現れます。今回もそれなのでしょう、不安・緊張状態を抑え込んだからでしょうか、再び早朝覚醒、中途覚醒・・・。かなり落ち込みました。が、その状態で色々自分で考えるに、完治でない状態で復帰する以上、今までのような完璧主義的、強迫的な働き方はできない、それをうけいれられるかどうか、今試されているのだ、と思うに到りました。復帰を焦ること自体が既に復帰失敗を意味するのだ・・・と。そう思ったら不眠も治まりました。
 ですが、精神的にはかなり前向きになったと先生もおっしゃいますが、依然、レジャーや旅行の話も億劫だし、日中も何もしたくない日が多いです。非常につかれやすく、ついうたた寝をしてしまいます。本当は病休がもっとあればもっと自分は休みたいのだと思います。これは自分を甘やかしているだけなような気もしますが、母の口ぐせ「あんたは体が弱いんじゃない、意思が弱いのよ!」とお尻をたたかれ続け、頑張り続けた結果こうなったんだから、あまり頑張らない方がいいんじゃないかと思ったり・・・。
 病休の次は休職に処遇が変わるだけで、まだ休めるという、非常に恵まれた環境にありながら悩んでいます。
 このような状態で職場(人間関係はよく、休み始めた当時の課長も異動しました)に戻ることはどういう結果をもたらすのか、不安です。主治医からは、不安が強いようなら又メイラックスを飲んでも・・・といわれていますが、不眠のぶり返しがいやで飲んでいません。
 現在の私の状態はなんなのか、まだパニック障害もあるのか、うつなのか、甘えなのか、・・・を伺いたく、長々と失礼しました。宜しくお願いします。

現在の処方薬は
 パキシル 40mg
 メイラックス 1mg
 リボトリール 0.5mg
 ロプヒノール 2mg
 レボトミン  0.5mg
です。 


: あなたはうつ病だと思います。

事の始まりは5年前に電車内でパニック発作に襲われたことです。それ以前から不定愁訴が多く、特に肩こり、頭痛がひどく、常に不調でイライラしながら生活していました。その頃はなんとか小さな発作(不安感、動悸、めまい、吐き気など)を気合で振り払っていましたが、2年前に異動し、仕事内容も未知の分野だったため、症状が悪化し、とうとう夜中に大発作を起こし、救急車を呼び、ついに精神科を受診、パニック障害と診断されました。メイラックス1mgとパキシル10mg、これですべてが劇的に改善

ここまではかなり典型的なパニック障害といえます。診断も治療も妥当でしょう。

発作がなくなるのと平行して、異常なだるさや眠気、注意力散漫、やる気のなさ、何事も億劫、といった自覚症状がでました

パニック障害と思われた方に、このような症状が出てくることは時おりあることです。こうした症状はパニック障害によるとは言えず、むしろうつ病の症状と言えます。

パニック障害とうつ病の関係については、多くの研究がありますが、まだはっきりしたことはわかっていないのが現状です。ただ間違いなく言えることは、パニック障害からうつ病に移行する方は、そう多くはないものの、確かにいらっしゃるということです。

パニック障害にも抗うつ薬が効くことなどから、パニック障害とうつ病の脳の状態には何らかの共通点があると考えられます。時にパニック障害からうつ病に移行したり(つまりあなたのようなケースです)、あるいは同時に両方の症状を呈して診断がつけにくかったりすることの背景はここにあるのでしょう。

あなたは、パニック障害からうつ病に移行したケースといえます。(うつ病の前駆症状としてパニック障害があった、という言い方もできるでしょう。しかし、脳内のメカニズムの詳細がまだわかっていない以上、「前駆症状」とか、逆に「誘発した」というような表現にはあまり意味がなく、単に時間的関係を示す「移行」という表現が適切だと私は考えます)。

ですから現実的な対処としては、うつ病の治療をする、ということでいいと思います。そして不眠はうつ病の症状の指標のひとつと言えますから、

先生は「睡眠が安定しない限り復職させられない」とおっしゃり

をはじめとする、あなたの主治医の先生の対応は適切だと思います。
一方、

母の口ぐせ「あんたは体が弱いんじゃない、意思が弱いのよ!」とお尻をたたかれ続け

これはうつ病に対する悪い対応の見本です。(うつ病の相談室もご参照ください)

今あなたが感じておられる迷いや自責感は、うつ病が回復に向かい、しかしいま一歩のところで寛解には至らない段階では多くの方がお持ちになるものです。ここはあせらずに今の治療を続けることをお勧めします。うつ病は、治ります。





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