精神科Q&A

【0905】軽いパニック障害でも服薬を続けるべきか


Q私は40歳女性です。33歳のとき眼科で小手術を受けたとき、手術台から逃げ出したい衝動や動悸が起こり、手先が痺れてきたので手術を中断してもらいました。その後、手術ができなかったことや手術台での恐怖感にとらわれ、うつ状態になりました。また、仕事にいくことや会議に出席すること、電話にでることなどにいちいちドキドキしていることがしんどくなり、神経内科にかかりました。(病院に電話することや、病院にたどりつくのも相当努力を要しました)
医師からは不安神経症といわれ、1種類のお薬をもらいました。お薬の効果はてきめんで、日常生活にはほとんど支障がなくなりました。2回目の受診以後、病院にはかかっていません(お薬ものんでいません)。その年は美容院や飛行機に乗るときには動悸がある程度でした。それ以降、発作はまったくおきずに数年すごしていました。(この間、インターネットなどで実は私はパニック障害だったんだということがわかりました)

その後は特に何も症状はなかったのですが、39歳のとき、友人が亡くなったときかされたとき、不安感に襲われ、動悸が起こりました。数日後には普通に生活できるようになりました。しかし昨年、家族で遊園地にいったとき、長い列に並んでいて動悸が起こりました。
そして今年、タクシーで高速道路を走行中渋滞になり、動悸が起こりました。

これらの発作が起こった時は、家庭や職場での強いストレスがかかっていました。
また何らストレスのない歯科受診の待ち時間にも動悸が起こりました。
これらの発作によって日常生活に支障がでることはありませんが(飛行機、美容院はなんともありません)、今は混雑した空間や閉所などでは「無理かも・・・」といった予期不安が起こります。

先生におききしたいのは、(1)パニック発作は、ストレスで出やすいものなのかどうか。(2)主な症状は予期不安だけでも投薬治療を受けたほうがよいかどうか。(3)ここ2年ほど1年に数回動悸が起こる発作があるのですが、悪化しているということでしょうか。(4)程度としては軽く日常生活に支障はないのですが、気にしすぎでしょうか?という4点です。


: 33歳でパニック障害が初発。直後よりうつ状態になるも一回だけの受診・服薬により症状は速やかに消失。それから数年間ほぼ無症状だったが39歳の時ストレスをきっかけに発作が出現し、以後、折に触れて動悸、さらには予期不安がある。日常生活には支障はない。
という経過ですね。
 まず診断はパニック障害でいいと思います。しかし、はっきりとパニック発作といえるものはおそらく33歳時の1回だけで(パニック発作の診断基準についてはパニック障害の診察室をご参照ください)、それ以後現在までの症状は厳密にはパニック発作とは言えませんので、今の状態はパニック障害が再発したとまでは言えず、再発しかかっているというレベルと言えるでしょう。

いま「再発しかかっている」と私が言ったのは、「このままだと再発する」ということを暗に意味しているのではありません。再発するかもしれないし、しないかもしれない。ですから今の段階では、「パニック障害が再発しかかっている」という認識だけしておき、様子をみるということでいいと私は思います。もっとも、再発防止のためすぐに薬を始めるべきだという意見もあるでしょう。様子をみるということでいいというのは、私の意見にすぎません。
以下、ご質問項目にそって回答いたします:

(1)パニック発作は、ストレスで出やすいものなのかどうか。

ストレスで出やすいです。また、客観的にはストレスに見えないような特定の状況で出やすいこともあります。さらには、まったく状況に関係なく出ることもあります。

(2)主な症状は予期不安だけでも投薬治療を受けたほうがよいかどうか。

上の回答のとおりで、投薬治療は必要ないというのが私の意見です。
ただ、発作が起きたときにすぐ飲めるように抗不安薬を常に持っていることは勧められます。持っているだけで発作が防止されたり予期不安が消えたりすることも多いものです。

(3)ここ2年ほど1年に数回動悸が起こる発作があるのですが、悪化しているということでしょうか。

これも上の回答のとおり、「再発しかかっている」というレベルです。

(4)程度としては軽く日常生活に支障はないのですが、気にしすぎでしょうか?

症状が軽い段階で対応を考えるというのは、決して気にしすぎとは言えません。けれども、考えすぎれば気にしすぎというレベルになります。あなたのケースでは、このような形で医師に意見を求めるというのは適切なレベルだと思います。今後どうされるかは、上記の回答をご参照のうえお決めください。


念のためつけ加えますと、「再発しかかっているという段階なので、様子をみているということでいい」というのは、この【0905】のケースのパニック障害についての回答です。病気によっては、再発の徴候が少しでも見えた段階で、すぐに薬の再開や増量が必要なものもあります。【0749】【0635】【0534】などをご参照ください。




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