精神科Q&A
【0883】手術後の妄想
Q:
私は26歳の女性です。私の父は51歳になりますが、今年に入り、心臓血管のステント手術・脳血管のバルーン手術を受けました。もともと血圧が高く「手術も難しい。」と言われていましたが、先生も驚く程に順調に手術も終わり体の回復も早かった様に思います。
しかし、手術後に、目つきや言動が日に日におかしくなっていきました。
病院食も「毒が入っている。」と食べなかったり、先生が出してくれた精神安定剤も同じ事を言って飲みません。
「同じ病室に居た患者さんを自分の鼾で殺してしまった。」とまで言うようになりました。
手術をしてくださった先生に相談したところ、「今、精神科の受診は逆効果」と言われました。さらに、「病院で自殺されたら困る」と言われ、退院させられました。
それから４日が経ちます。
退院後も、何度説明しても「自分の病気は治っていない。」の一点張り。
とにかく「自分はみんな(会社・家族・親戚）に迷惑かけている。」「自分の姿を見られたら、会社をサボってると思われる。」と毎日毎日いっています。
父の病名は何なのでしょうか?
なによりも、付き添っている母も精神的に疲れてしまい毎日泣いている状態です。
私の妹は数年前から精神科に通院し、薬を処方してもらっている状態なので同じ病院に連れて行こうかと言ってくれましたが、病院の先生のおっしゃるように、こんなとき、精神科の受診は逆効果なのでしょうか。私たちは、父に何をしてあげたら良いのでしょうか？
林: 精神科を受診することが第一だと思います。
現在、お父様の症状の中心は被害妄想です。そこまでは確実なのですが、
父の病名は何なのでしょうか?
このご質問への回答は難しいです。
手術の後には、一時的にせん妄という状態に陥ることがあります。せん妄は、典型的には、【0192】、【0640】のような症状を呈するものですが、お父様のような被害妄想が中心になることも時にはあります。ですからせん妄の可能性もあるのですが、被害妄想の内容を見ると、うつ病の色彩もあり、手術をきっかけにうつ病が発症したのかもしれません。また、統合失調症(精神分裂病)の発症も否定はできません。
病名はともかく、現在のお父様には被害妄想の治療が必要なことは明らかです。
手術をしてくださった先生に相談したところ、「今、精神科の受診は逆効果」と言われました。
この先生の言葉の意図は私には理解できません。「今、精神科の受診は逆効果」の「今」とはどういう意味なのか。妄想であることを本人が理解していないから精神科を受診させるとかえって本人を怒らせることになるとでもおっしゃりたいのでしょうか。もしそうだとすれば、いつになっても精神科を受診させる機会は訪れないということになります。精神科の治療というものを何もわかっていない医師なのではないかとも疑いたくなります。
いや、それは言いすぎかもしれません。もしかするとメールからは読み取れない何かの事情があって、「今、精神科の受診は逆効果」と判断されたのかもしれません。けれども、もしそうだとすれば、専門外とはいえ医師として何らかの対策を講じるべきでしょう。それなのに実際は、
「病院で自殺されたら困る」と言われ、退院させられました。
とのことですので、これはひどい対応と言わざるを得ません。無責任な医師と判断するのもやむを得ないでしょう。
私たちは、父に何をして上げたら良いのでしょうか？
なるべく早く精神科の治療を受けさせてあげてください。このままでは危険な状態で、ただ様子を見ているだけで、自然に改善する可能性は低いです。