精神科Q&A

 【0773】インターフェロンによる精神障害は再発しますか


Q:友人は43歳男性の団体職員ですが、2週間ほど前から失踪中です。 彼は10年ほど前にインターフェロンの治療を受けた経験があり、その治療途中に軽い精神障害にかかってしまいました。投薬を中止し精神科へ転院したところ、数週間で退院できました。精神科の先生も驚くほどの回復だったそうです。

それから10年は何一つ異常な面も見えず安心していたのですが、1ヵ月ほど前から少しずつ変化が始まりました。
夫婦仲の良い奥さんに離婚を求めたり、父親に仕事をやめたいと相談したりもしました。
しかしそれでも仕事を休むことも無く、それどころか何かに追われるように休日まで出勤したりしていました。

そのとき周りの人間は、彼の変化の原因は仕事だと考えていました。春に職場で人事異動があってから、仕事面で大変な日々が続きかなり自信喪失の状態なっていたからです。

そして10日ほど前に、最初の事件がありました。
家にあった精神安定剤の類の薬を大量に飲み、家を出て行ってしまったのです。
帰宅したのは、翌朝のことです。そのときの姿は奇異で、片方の足にだけサンダルを履いている状態でした。

帰宅はしましたが、それ以後明らかに落ち込んだ状態が続き、話しかけても下を向いたまま、うなずくだけでした。父親には死にたいと漏らしていたそうです。

そして1週間前、再び失踪してしまいました。
前回同様、徒歩で、財布も携帯電話も持たずに、出て行ってしまいました。

今回私が教えて頂きたい事は
「インターフェロンの副作用による精神障害は10年後に再発することがあるのか」
という事です。

いまさらと思われるかもしれません。
しかし、彼の失踪の原因がインターフェロンの副作用によるものなのか、ただ単に仕事上での悩みからなのか、これは残された者にとっては大きな違いです。
副作用によるものであれば、病気であり、たとえ最悪の事態になったとしても、それは「病死」と思えます。しかしそうでなければ、単なる「自殺」とされてしまいます。

万が一最悪の事態になっても、残された子供たちや奥さんに、
「薬の副作用で亡くなってしまったけど、お父さんは立派な人間だったよ」
と、言ってあげたいのです。




「インターフェロンの副作用による精神障害は10年後に再発することがあるのか」

そのような再発はありません。
この【0773】のような経過が見られた場合、考え方としては、
1. 10年前のインターフェロンの副作用とは全く別の精神障害が発症した
または
2. 10年前のインターフェロンの副作用とみえたものが、実はそうではなく、この方がもともと潜在的に持っていた精神障害がインターフェロンで誘発され、今回はそのもともとの精神障害が再発した
とするのが一般的です。
 ですから、今回のこの方の失踪、そして万一それ以上の悪い事態が起きたとしても、それを10年前のインターフェロンに関連づけるのは無理があります。

以上がご質問への回答ですが、少々補足します。

副作用によるものであれば、病気であり、たとえ最悪の事態になったとしても、それは「病死」と思えます。しかしそうでなければ、単なる「自殺」とされてしまいます。

この記載を読む限り、あなたは薬の副作用以外の自殺は「病気」ではありえないと考えておられるようです。それは重大な誤解です。病気の結果として自殺に至ることは、特に治療を受けなかった場合にしばしばあります。自殺の項もお読みください。

 あなたがご友人のことを深く心配される気持ちはよくわかります。
けれども、原因を薬のせいにしようとされる姿勢は適切でないと思います。(もちろんあなたは決して「薬のせいにしようと」まではしていないのはよくわかります。だからこそこうしてご質問されているのだと思います。ですから「原因を薬のせいにしようとされる姿勢は適切でない」という言い方はやや一方的だとは思いますが、わかりやすく説明するためこの表現をとらせていただきました)

万が一最悪の事態になっても、残された子供たちや奥さんに、
「薬の副作用で亡くなってしまったけど、お父さんは立派な人間だったよ」
と、言ってあげたいのです。


メールの最後に書かれたあなたのこの文章から読み取れるのは、もしこの方が副作用ではなく病気であったとすれば、それは立派な人間ではなかったということでしょうか。あなたの考え方は間違っていると思います。

このようなケースで、薬が原因ではないかと疑う人は少なくないかもしれません。不可解な行動、不適切な行動を、人は薬のせいにしたがるものです。薬のせいにすれば、傷つく人が少ないからでしょう。
けれどもその判断は慎重を期さなければなりません。
もし何もかも薬のせいにしてしまうと、本当に薬が必要な人までが、薬を飲みにくくなるという事態が発生するからです。事実、そういうケースはしばしばみられます。特に目立つのは統合失調症(精神分裂病)かもしれません。

この【0773】のメールからは、そうした懸念を強く持たざるを得ませんでした。


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