精神科Q&A

【0707】私よりインターネットを信用するなら他の病院に行けというのは、やはり暴言です(【0660】に関して)


Q: 60代の主婦です。いつも精神科の難しい質問に丁寧にお答えになるすばらしい先生と思って拝見していました。でも【0660】を見て残念で仕方なく、初めてメールを書いてしまいました。
 通院患者が医師に質問し、教えてほしいと思っても、それが医師の診断に対する疑問ととられると、「気に入らなければ他の病院へでも行けばいい」とたちどころに凄みをきかされるということは少なくありません。患者は病気を患っていても人間です。意思も感情も押し殺して、医師にひたすら頭を下げて、必死で薬を出してもらっているのでは、哀れな生き物になります。インターネットで調べ「薬の服用をやめた」ことがそれほど重要でしょうか。現にそれでも通院し質問しているのではないですか。本当にその患者の病気について共に考えて、「それはいかん。悪い結果になってしまう。」と心配の気持ちがいくらかでもあるなら、「他の病院へ行けばいい。」と脅かしたり、放り出したり、するでしょうか?言うことをきく素直な患者でなければ、時間の無駄だとでも言うのでしょうか。先生のお答えには、おそらく多くの人が納得していないでしょう。私は断言します。「私よりインターネットを信用するなら他の病院に行けというのは、やはり暴言です」 患者の病気を和らげ、治療し、その人の生活の質を高めることが、医療行為の喜びと聞きました。医療・福祉・保健の連携の大切さは今常識です。福祉の精神無くして、医療の一人歩きは驕りです。たとえ、精神を病もうが、内臓を病もうが、患者は「人間」なんです。「気持ち」があるのです。「指示に従わず勝手なことをするなら来るな」は、近代医療の目指すものではないのではありませんか?


: あなたは【0660】あるいは【0579】の回答の意味がわかっておられないと思います。

 あなたへの回答も【0660】の回答と基本的には同じになります。私がこの回答で伝えたかったのは、インターネットの情報を信じることの危険さです。インターネットの情報を大いに参考にすることには異論はありません。非常に有益だと思います。しかし、インターネットの情報を現実に受けている医療の上位においた瞬間から、益は失われ害のみがクローズアップされることになります。病気というものは、たとえ同じ病名であっても、一人一人の状況が全く異なり、そして時には直接生命にさえ関わります。そういう微妙な性質の事柄について、本来バーチャルで、本当か嘘かわからない、結局は無責任な、インターネットの情報を、現実に優先して行動に結びつけることには、全く賛成できません。そうです、「行動に結びつける」ことが非常にまずいのです。あくまで距離を置いた参考としての情報という位置づけにとどめるべきです。

 あなたのメールの記載は、情緒的には共感できるものです。いや、情緒的な面を別にして一文一文を取り上げても、多くは正しい記載だと思います。しかし、重要なポイントの誤認があります。それはこれです。

インターネットで調べ「薬の服用をやめた」ことがそれほど重要でしょうか。

きわめて重要です。この重要性が理解できなければ、インターネットの情報など見るべきではありません。

 私は何回でも言います。実際に治療を受けている医師よりもインターネットの情報を信用するのであれば、その医師の治療を受ける意味はありません。病院は変えるべきです。そして、当のその医師からそのように言い渡されるのは当然のことで、これは暴言ではありません。
 さらに言います。そのような人にとっては、インターネットの医療情報は百害あって一利なしです。見ない方がずっといいと思います。

 あなたはこれを暴言とおっしゃるかもしれませんが、もう一つ付け加えます。インターネットの情報を、実際に治療を受けている医師よりも信用するのであれば、私のサイトも見ないでいただきたいと思います。その理由は一つです。そのような使い方をされた瞬間に、「Dr.林のこころと脳の相談室」は、有害サイトになるからです。


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