精神科Q&A

【0677】違法薬物の使用経験がある夫婦の異常な言動


Q:  私は26歳の男性です。兄と兄嫁のことで相談に乗っていただきたくメールいたしました。

兄はわたしより10歳年上の36歳です。兄嫁は37歳です。
家族は兄、兄嫁、子供1人です。
兄、兄嫁ともに、若い頃違法薬物の経験があります。兄本人は10年くらい前に捕まったのが最後と言っていますが本当かはわかりません。
兄嫁はいつ頃まで使用していたかはわかりません。
二人ともシンナー、覚醒剤などを使用していたようです。
つい二ヶ月前頃、兄嫁がおかしくなり路上で暴れ病院に入れられるということがありました。その時は一週間ほどで退院となりました。診断は「フラッシュバック」ということでした。

退院して一週間後には仕事にも復帰しています。
しばらくは落ち着いているように見えたのですが最近また様子がおかしくなっているような気がします。
「○○がわたしのことをバカにしている」「影で悪口を言っている」というようなことを言っていたかと思うと、「お義父さんもお義母さんも大好き」と突然機嫌がよくなったりします。
子供に対しての態度もおかしく、ある時には子供が何をしても怒らずべったりと抱きしめ夜中まで一緒に遊んでいたりするのですが、別の時には邪魔にしたり些細なことでものすごく怒ります。
家事についてもおかしなところが目に付きますがこれは生活環境の違いからかもしれないので省きます。
数日前にはわたしと母に男性器を描いた絵を見せ「これから絵の勉強をしてお金を稼ぐ」などと言い、その絵を兄に怒られると「邪念があるからいけないんだ」と逆に怒り出しました。
昨日は最初賛美歌を歌っていたかと思うと急に演歌に変わり、そのうち聴いたこともない歌をぶつぶつ口ずさんでいたかと思ったら、「神さまそれは違います」と言い出し、神さまと話し出しました。
わたしも両親も病院へ連れて行くようにと兄に言ったのですが「本人が嫌がる」と言って病院には行っていません。
兄によると二ヶ月前に行った病院で「躁状態」と言われたというのです。でもそれだと「フラッシュバック」という診断はどうなるのでしょうか。
以上が兄嫁の今の状態です。

兄嫁は元から感情の起伏の激しい性格だったらしく何度も兄とも怒鳴りあいの喧嘩をしています。
その兄も機嫌のよい時と悪い時の差が激しく、時には休みの日に一日中寝ていたり、かと思うと夜通し遊び歩いてそのまま元気に仕事に行ったりします。
さっきまで怒鳴っていたかと思うと急に機嫌よくニコニコ笑い出したりと周囲にいるわたしたちが戸惑ってしまうほどです。
元々兄は調子がよく都合の悪いことからはすべて逃げる性格で、自分さえよければ他の人間に迷惑をかけてもいいといったところのある人間です。嘘も平気でつき、中途半端に知っている知識を並べその場を誤魔化そうとするところがあります。
なので兄の現在の状態が性格からくるものなのか薬の後遺症、もしくは何らかの病気なのかの判断もできません。
兄嫁の診断についてもどこまで信じていいのかわかりません。
兄は兄嫁が暴れる前に何度もおかしいので病院に行くように周囲に勧められるとその度「連れて行ったが育児ノイローゼだ」と嘘をついていました。
また兄夫婦は二人ともお金に対し異常な執着を見せています。でもこれも兄については以前からのことなので病気なのかもわかりません。
以上が兄の状態です。

これらのことから兄と兄嫁が病気なのか、だとしたらなにか注意することはあるのか、子供たちは一緒に生活させていて安全なのかなどお教えください。
長々と失礼いたしました。よろしくお願いいたします。


: 兄嫁様の現在の症状はおそらく薬物の後遺症でしょう。これだけ明らかな症状があるのにもかかわらず、受診させても嘘をつく、あるいは受診そのものをさせないという姿勢をお兄様がとっている限り、このままでは全く望みがありません。

兄と兄嫁が病気なのか、だとしたらなにか注意することはあるのか

そういうレベルの状況ではないと思います。注意もなにも、病院で治療を受ける以外ないでしょう。

子供たちは一緒に生活させていて安全なのか

危険だと思います。

 説明が前後しましたが、兄嫁様の現在の症状、すなわち、

 「○○がわたしのことをバカにしている」「影で悪口を言っている」というようなことを言っていたかと思うと、「お義父さんもお義母さんも大好き」と突然機嫌がよくなったりします。
 数日前にはわたしと母に男性器を描いた絵を見せ「これから絵の勉強をしてお金を稼ぐ」などと言い、その絵を兄に怒られると「邪念があるからいけないんだ」と逆に怒り出しました。
 昨日は最初賛美歌を歌っていたかと思うと急に演歌に変わり、そのうち聴いたこともない歌をぶつぶつ口ずさんでいたかと思ったら、「神さまそれは違います」と言い出し、神さまと話し出しました。


などは、幻聴、被害妄想、感情易変、奇異な行動などと表現することができ、ひとつひとつをとっても、また全体としても、覚醒剤による精神症状として矛盾はありません。過去にかなり乱用した時期があるようですので、フラッシュバックと考えるのが普通です。ただし、【0611】にもお書きしましたが、覚醒剤乱用歴のある人にこのような症状が突然出て、フラッシュバックだと思っていると、実は最近も覚醒剤を乱用していたということがわかることも多いので、本当に最近は覚醒剤をやっていないのか確認することも必要です。

なお、「フラッシュバック」というのは、覚醒剤という原因からの症状名で、「躁状態」というのは、原因にかかわらず単に今の症状そのものの描写ですので、

兄によると二ヶ月前に行った病院で「躁状態」と言われたというのです。でもそれだと「フラッシュバック」という診断はどうなるのでしょうか。

このように、病院によって別のことを言われたとしても診断名として矛盾するものではありません。(病院でそう言われたというお兄様の言葉が正しいかどうかは別です)

兄の現在の状態が性格からくるものなのか薬の後遺症、もしくは何らかの病気なのかの判断もできません。

この点は、覚醒剤乱用の人ではしばしば問題となることで、実際に診察してもその判断は容易ではありません。ですからここではお兄様の状態についての回答は避けたいと思います。ただはっきり言えることは、兄嫁様の状態は覚醒剤による精神病状態だということです。フラッシュバックか、それとも最近も覚醒剤を乱用しているかはともかく、原因が覚醒剤であることは間違いないでしょう。無理にでも病院で治療しない限り、望みは全くないと思います。



その後の経過(2008.2.5.)


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