精神科Q&A

【0665】マンションの壁越しに自分に対する噂話や陰口が聞こえてきます


Q: マンションに住む、30代独身男性です。現在、母親と二人暮しです。体調を崩し、ここ1年休職しています。
 母親が働いているにもかかわらず、大の男が一日中家にいるために隣人に不審に思われているようで、接しているキッチンの壁越しに自分に対する噂話や陰口が聞こえてきます。隣人とは直接口を聞いたことはなく、家族構成は把握していません。分かっているのは、しょっちゅう大人や子供の客が訪れていること、マンションの規則に違反して猫を飼っていること等です。
 私の方は、できるだけ関心を引かないために、物音をたてるのを控えています。テレビの音も漏れているのか、見ているテレビ番組を言い当てられたことがありました。そのときの声はベランダ越しに聞こえました。それ以来、テレビの音は極力しぼっています。

 ところが、母はかまわずに大きな声で話をするので、我が家の内情が壁越しに筒抜けになっています。私は声が漏れるのを知っているので、できるだけ声を潜めたり、大事な話の際には隣人と接している壁際から遠ざかったりしていますが、母は「絶対に声など聞こえない」と言い張って、壁越しに大声で話をします。
 そのため、母の職業や私の状況などが隣人に知られるところとなり、彼女たちに格好のネタを提供する形になっています。
 60代で聴力の衰えた母には、壁越しの噂話が聞こえなくても、私には彼女たちの会話が聞き取れて、尚且つ壁伝いに背中合わせで設置してあるトイレでは、ペイパーホルダーをカラカラ鳴らす音までが壁越しにはっきりと聞き取れます。隣人宅の電話の音も我が家に響き渡っているので、私の家の電話の音も聞こえていると覚悟して、応じる声の大きさにも気を遣います。
 この電話の音に関しては、母もはっきりと聞き取っています。他に、母の耳にも聞こえた音は、隣人が流したクラシック音楽で、あまりに大音量なうえ朝夕関係なく流れるので、マンションの管理責任者を通して婉曲に注意してもらって、解消しました。

 壁越しに聞こえてくるのが、私に対する噂話や陰口だけなら空耳だと笑って済ますこともできるのですが、母も聞き取れる事実が若干混ざっているために、私の置かれている状況が、被害妄想によるものか現実なのか明確に判断できません。壁から漏れる声に関しては、女性二、三人で話しているときもあれば、男性が混ざっているときもあります。
私の聞いている音が幻聴であるならば、相応の対処をしなければならないと思いますので、どうかご回答をよろしくお願い申し上げます。


: あなたの体験は、統合失調症(精神分裂病)幻聴・被害妄想に一致しています。病院を受診すべきだと思います。

 隣や近所から悪口が聞こえるというのは、統合失調症(精神分裂病)の方に非常に多い症状です。そして、多くの場合、聞こえるのは幻聴でなく本当であるということを、いろいろな根拠を示して主張されるものです。あなたがお書きになっている以下のことは、いずれも、統合失調症(精神分裂病)の方がその根拠としてあげることが非常に多いものです。

まず、隣の人が悪口を言う理由についてです:

大の男が一日中家にいるために隣人に不審に思われているようで、接しているキッチンの壁越しに自分に対する噂話や陰口が聞こえてきます。

それから、聞こえることの内容が、自分の生活や言動を知っていることを言い当てたりほのめかしたりするということです:

テレビの音も漏れているのか、見ているテレビ番組を言い当てられたことがありました。そのときの声はベランダ越しに聞こえました。それ以来、テレビの音は極力しぼっています。

そのため、母の職業や私の状況などが隣人に知られるところとなり、彼女たちに格好のネタを提供する形になっています。


そして、隣の人が自分の生活や言動をなぜ知っているかという理由です:

ところが、母はかまわずに大きな声で話をするので、我が家の内情が壁越しに筒抜けになっています。

私には彼女たちの会話が聞き取れて、尚且つ壁伝いに背中合わせで設置してあるトイレでは、ペイパーホルダーをカラカラ鳴らす音までが壁越しにはっきりと聞き取れます。隣人宅の電話の音も我が家に響き渡っているので、私の家の電話の音も聞こえていると覚悟して、応じる声の大きさにも気を遣います。


さらには、ご家族には聞こえなくても自分だけには聞こえるという理由です:

60代で聴力の衰えた母には、壁越しの噂話が聞こえなくても、

そして、聞こえる内容の一部は、ご家族にも聞こえているという事実です(これは、事実であることもそうでないこともあります。いずれにせよ、一部は家族にも聞こえているから、全部本当であるという主張は、幻聴・被害妄想を持っている方に共通するものです):

この電話の音に関しては、母もはっきりと聞き取っています。他に、母の耳にも聞こえた音は、隣人が流したクラシック音楽で、あまりに大音量なうえ朝夕関係なく流れるので、マンションの管理責任者を通して婉曲に注意してもらって、解消しました。

以上のような状態から、自分は間違いなく悪口や噂話の対象になっている、自分は病気ではない、というのが、統合失調症(精神分裂病)の方に非常に典型的な訴えです。これを病識がない、といいます。時にはこの妄想のために隣に怒鳴り込んだりすることもあります。「時には」というより、そういうケースはかなり多いといえるでしょう。【0396】【0296】【0293】【0277】【0223】などをご参照ください。いずれも、適切な治療を受けていない場合です。
 もっとも、あなたの症状はそこまで悪化していず、いくらかの病識を持っておられるようです。以下の文章にそれが表れています: 

壁越しに聞こえてくるのが、私に対する噂話や陰口だけなら空耳だと笑って済ますこともできるのですが、母も聞き取れる事実が若干混ざっているために、私の置かれている状況が、被害妄想によるものか現実なのか明確に判断できません。壁から漏れる声に関しては、女性二、三人で話しているときもあれば、男性が混ざっているときもあります。
私の聞いている音が幻聴であるならば、相応の対処をしなければならないと思います


そうです、幻聴の可能性がきわめて高いと思います。精神科で治療を受けることをお勧めします。


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