精神科Q&A

【0644】復職後、うつ病が治りかけの状態での過ごし方(【0549】の続き)


Q: 【0549】の項目でご意見を伺わせていただいた30歳代の女性です。
その節は、お世話になり、ありがとうございました。
病状や周囲の状況にも変化があり、現在も治療中なのですが、再度ご相談に乗っていただきたく、メールさせていただきました。

ご意見をいただいた後から、「自分はうつ病で、病気なのだからきちんと治す努力をしよう」と考え、メンタルクリニックの先生にも通院(2週間おき)時にはささいな事でもそれまでの体調などを報告し、会社の上司にもかなり相談に乗ってもらいました。その結果、昨年末から約2ヶ月半の休職で、自宅療養をするとともに処方する薬の量を増やしてみることになりました。増量などを経て、現在処方してもらっているのは以下のとおりです。

・ルボックス50mg×1日2回(=100mg)
・トレドミン75mg×1日2回(=150mg)
・セパゾン×1日2回
・パキシル40mg×1日1回
・デパス0.5mg 就寝前
・ハルシオン0.25mg 就寝前

特にトレドミンは、以前処方されたときに「胸がぱくぱくする感じがする(動悸が強くなった感じがする)」という理由から一度やめたのですが、うつ症状そのものの改善があまり見られなくなってきたため、再度少量から始めましょうということで、25mgから徐々に増量し、現在の量に至っています。
処方量としては「多め」だということは主治医とも確認しましたが、トレドミン50mg×2回の段階での状況が「安定はしているが、精神的にはかなり低いところでとどまっている(決して元気がある、という感じではない)」との相談したところ、処方量が多いのを承知で、副作用などに注意しながらやっていきましょうという話になりました。

2ヶ月間の休職中、最初の2週間ほどは疲れと「明日の朝、死にそうになりながら出勤しなくてもいい」という安心感から、ひたすら布団にもぐっていましたが、年末の片付けや新年の準備などは、少しずつですが手伝う程度の気力が回復していきました。
休職に入る前、「絶対に仕事は持って帰らないように」とのありがたい指示を上司からもいただき、ときおりゆり戻してくる悲壮感(自分なんていらないんだ、死んでしまいたい、面倒を見てくれるすべての人への強烈な罪悪感)などで大泣きし、ひどく落ち込むことがありながらも、ゆっくりと回復に向かっていったと自分では考えています。
(食欲が戻ってきて、少しは外出して散歩してみたり、新聞なども読めるようになってきた、など)
ただし、私が最も望んでいる「やる気の回復」はそれほどではなく、趣味や旅行などのレジャーに対しては今も億劫だという気持ちが先に立ちます。

こうしたゆっくりした回復の中、「劇的な回復はないが、あまり長期の休職はかえって復帰のときの苦労が大きくなる」との主治医の意見で、3ヶ月前から復職して現在にいたっています。
会社もかなり協力的で、
・朝の出勤時間を1時間程度遅らせてもよい
・昼をすぎてしまったとしても、まずは「会社に少しでもいいから来る」ことを継続する
(もちろん半休扱いですが、それで怒られることはない)
と、相当寛大な処置を人事公認でしてもらったおかげで、最近では1ヶ月に1・2度休んでしまうことはあってもなんとか通勤を続けています。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、現在の問題として、
(1)業務が徐々に量・質ともに休職前と同様を求められるようになってきたが、心身ともにまだついていけない
(2)主治医としては薬の処方量を減らしていきたい、とのことだが、(1)の状況
のため回復した実感がなく、減量に不安がある
といった点が出てきてしまいました。

(1)については、上司が決して無理解なわけではないのですが、元々少人数で多様な(雑多な)業務をこなす部署にいるため、他部署からの依頼が常に重複している状態で(調査や書類作成など)、しかも基本的に担当者一人が準備から作成・報告・スケジュール管理を並行で行わなければなりません。
業務内容自体が嫌いなのではないので、今できる範囲で私としては精一杯やっているつもりなのですが、どうしても時間がかかったりアイデアが出なかったりで、2〜3時間もやっていると頭の中で物事を整理するのが非常に辛くなり、やる気が出ず、同時に身体にも倦怠感や頭痛などが出てきて仕事が手に付かなくなってしまいます。
(このため、毎日のように市販の鎮痛薬を服用しています)

以前であれば、15分ほど席を外して頭を冷やして休憩すれば一息つけたのですが、今ではちょっとの休憩のつもりが、椅子にもたれて1時間も眠り込んでしまっていたりします。
先日もそのせいで、残りの業務を結果的に上司に押し付けた形になり、そんな自分の行動が不甲斐なく情けなく、以前のうつ状態のように泣きながら落ち込んでしまったりします。
しかも、こうした状況にひきずられているのか、仕事以外でもいわゆる「落ち込んでいる」「元気がない」「何事にも興味がわかない」という精神状態が常につきまとっている感じがします。

そんなタイミングで(2)の薬の減量の話が出てきており、自分としては「確かに、一時期よりずっと改善しているけれど、仕事がまともにできているとは到底感じられない」ため、主治医の意向にどのように対応したらよいのか、わからなくなってしまっています。
ちなみに、前述の処方量が「かなり多いほう」とは聞いているので、(1)の問題があるにしても主治医はこれ以上薬を増やすのはためらわれるとの話もされました。

復帰して丸3ヶ月にもなるのに、毎朝、這い上がるようにして会社に行き、任された業務もこなせず、まるでさぼっているかのような自分が、今後どのように治療を続けていけばよいのかわからなくなっています。

長々と書いてしまいましたが、今の私の希望は「一日、会社で自分の業務をきちんとまっとうできるようになりたい」「ほがらかに、毎日を過ごしたい」という些細なことなのです。
薬の減量は私もできればしていきたいですし、ささいな話でも聞いてくれるので主治医への不信感は特にないつもりです。

このまま、気長に薬を中心の治療を続けていけば回復していくものでしょうか?
職場復帰したことでよけいに落ち込んでしまうのも、その回復とともに薄れていくものなのでしょうか?

非常に漠然とした相談で申し訳ないのですが、病気の最悪期は抜けたと思っているので、今、こうした時期の自分はどうやって仕事と治療に向き合っていけばよいか、ご意見や助言をいただくことはできませんでしょうか?
ゆり戻しや再発で、あんな苦しい思いは二度としたくないのです…。
どうか、よろしくお願いいたします。


: うつ病が回復し復職したものの、あと一息か二息の完全回復までなかなかたどり着けないというケースは時にあるものです。あなたのケースが特殊というわけではありません。メールにあなたがお書きになっている内容は、まさにうつ病の治りかけの状態として典型的なものです。
 この時期の考え方は、あせらずに治療を続けるということに尽きます。うつ病は、治ります。

職場復帰したことでよけいに落ち込んでしまうのも、その回復とともに薄れていくものなのでしょうか?

その通りです。

このまま、気長に薬を中心の治療を続けていけば回復していくものでしょうか?

そうです。幸いあなたの会社はかなりの理解があるようですので、あせる必要はないでしょう。
もっとも、

(1) 業務が徐々に量・質ともに休職前と同様を求められるようになってきたが、心身ともにまだついていけない

この点に関しては、主治医から会社に診断書などの形で現症をよく説明していただくことが必要でしょう。

 薬については主治医の先生と今後もよく相談しながら決めていくことをお勧めします。
 今のあなたの薬の量が多いことは確かです。量だけでなく、種類も多いのはやはり気になるところです。パキシル、トレドミン、ルボックスという3種類の抗うつ薬を同時に飲むというのは、少なくとも理論的にはお勧めできないところです。
 けれども、結論からいうとこの処方があなたに合っているのだと思います。【0402】【0311】にもお書きしたように、もし初めからこのような処方がなされたとすれば、不合理な治療ということになります。しかし、いろいろ処方を変更した結果このようになったというあなたのようなケースでは、理論はともかく、効果が出ているという事実を重んじるべきでしょう。

それでも、

(1) 主治医としては薬の処方量を減らしていきたい、

というのももっともなことです。私が主治医だとしても、本心としてはやはりこの処方は何とか減らして整理したいと考えると思います。その理由は、仮にもし重い副作用が出たような場合に、多くの種類の薬を処方していると、【0402】【0311】に書いたような理由のため、治療が瓦解してしまうからです。ですから、このような処方で結果的に治療がうまくいっている場合には、現実の効果と、副作用の可能性や理論のジレンマに、医師としては悩むところです。

 けれども、今のあなたの状態を客観的に見ると、今は薬を減らすべきではないと思います。

(1)の状況のため回復した実感がなく、減量に不安がある

というあなたの不安はもっともです。それをよく主治医に伝えることをお勧めします。


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