精神科Q&A

【0624】精神的に不安定で、恋愛・結婚を繰り返す妹


Q: 妹は18歳のころから、精神的に不安定になりました。大学に入ったとたん次々と恋愛を繰り返し、夏には駆け落ちしてしまいます。お金がなくなり戻ってきて、相手の親も出てきて、別れると、今度は拒食症になりました。

極度に被害妄想があり、電車の中でみんなが笑ってる、ばかにしてる・・などといい、引きこもりました。ようやく回復したときに、宗教団体に入信してしまい、すっかり人がかわったようになりました。両親も必死で、ようやく脱会に成功しましたが、そのころから過食症がはじまりました。被害妄想や幻聴もありましたが、宗教の影響のように思っていました。このころ自殺未遂(リストカット)があり、精神科に入院しました。精神分裂病の疑いがあると診断されたときに、両親はびっくりして、退院させました。それからは家族カウンセリングに10年以上通いました。就職は一度もしてません。両親の庇護のしたで暮らしながら、一方で両親が自分を縛って囲っていると、怒り、恋愛を繰り返します。両親の反対を押し切って2回結婚して離婚してます。現在5歳のこどもと実家に戻っています。結婚すると、相手がひどい虐待をすると両親に泣きつき、両親も見かねて助けてしまいます。相手の話はたいていかなり食い違っているのですが、結婚が破綻しているのは間違いないので。両親は将来を悲観し始めています。

ところがまたメールで知り合った妻子ある男性に夢中になり、一度しかあってないのに、すっかり夢をみてしまい、結婚できるまで生活の援助をしてくれと両親に言い出しました。こどもをつれて自立すると言い出しました。さすがに、危険なものを感じ、20年世話をしつづけた両親も思考停止状態です。妹をきちんと治療しなかったことがすべての発端ではないかと考えるようになりました。

妹はカウンセリングと共に薬ものんでます。抗うつ剤だそうです。
両親と共に妹の主治医に家族として妹にどのように接すればよいか相談したいのです。よろしくおねがいします。


: 妹さんは統合失調症(精神分裂病)だと思います。

もちろん、

精神的に不安定で、恋愛・結婚を繰り返す

というだけで病気であるとかないとか言うことはできません。けれども妹さんの場合は、さらに被害妄想や幻聴があることなどを考えあわせますと、これまでの普通でない異性関係の背景には病的な思考障害があると判断するべきでしょう。こうしたこと全体から、統合失調症(精神分裂病)であることはまず確実だと思います。そして、統合失調症(精神分裂病)であれば、一日も早く薬物療法をすることが必要です。妹さんのケースでは、10年以上前の入院の時に精神分裂病の疑いがあると診断され、その時に薬物療法を開始するチャンスが十分あったわけですから、大変残念なことだったと思います。

妹をきちんと治療しなかったことがすべての発端ではないかと考えるようになりました。

残念ながら、その通りです。

精神分裂病の疑いがあると診断されたときに、両親はびっくりして、退院させました。

ここから妹さんの経過が悪い方向に進んでいったことは否定できません。ご家族が重大な病気であることを認めたくない気持ちはよくわかりますが、現実から目をそむければ、かえって状況は悪化するだけです。

そして退院後、

それからは家族カウンセリングに10年以上通いました。

というのもちょっと信じ難いことです。統合失調症(精神分裂病)に家族カウンセリングだけを行っても、まず効果は期待できません(抗精神病薬による薬物療法との併用なら話は全く別です)。このカウンセラーがよほど特殊な人であったか、あるいはご両親が頑強に事実から目をそむけ家族カウンセリングに固執したかのどちらかなのでしょう。しかし、今飲んでおられる薬が

抗うつ薬だそうです

というのが事実なら、やはり非常識な治療と言わざるを得ません。

以上、これまでの経過は統合失調症(精神分裂病)の方への対応としては良くなかったと言わざるをえません。ご両親はもちろん妹さんのことを親身に考えられた結果このような対応になったとは思いますが、事実から目をそむけていてはいくら親身でも何もならないことの例になってしまっています。

しかし、だからといってもう手遅れというわけではありません。しっかりした病院で、統合失調症(精神分裂病)の治療を開始することをお勧めします。


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