精神科Q&A

【0076】 健康食品と薬の併用は安全ですか


Q  27歳男性です。うつ病で、抗うつ薬と漢方薬を服用しています。最近サプリメントに興味を持って、少しでも免疫力がつくように、キトサンなどを服用し始めました。健康食品なので心配はないと聞きますが、抗うつ薬と併用しても問題はないでしょうか。ハーブの中にもうつ病に効くものがあると聞いたので、それも試してみたいと思っているのですが。  

: 普通は問題ありませんが、無条件で信頼するのは危険です。もっとも、無条件で信頼しておられないからこそ、こうして質問されているのだとは思いますが・・。

 というのは、「健康食品なので心配ない」というのがまず大きな誤りです。健康食品というのは、単にそういう名前がつけられているというだけであって、それが健康にいいとか、害がないとかの保証は全くありません。むしろ、薬のように厳しい審査がない分、危ないとも言えます。薬の場合は副作用を報告する義務が製薬会社にありますが、健康食品には薬のような厳密な規定がありませんから。

 健康食品と薬の併用が必ずしも安全でない理由としては4つあげることができます。

1.     何が入っているかわかりません。

表示されている成分以外にも何かが入っていることがあります。薬が入っていることもあります。事実、自然の成分だけと称して売られているものに、ステロイド、カフェイン、アスピリンなど、色々な薬が混ぜられているものがあることがわかっています。また、製造過程で何らかの有害な物質が混じっていることもあり得ますので、製造元が信頼できるかどうかのチェックは欠かせません。

2.     自然だから安全というのは迷信です。

自然界は人間のためにあるのではありません。人間に有害なものは自然界にたくさんあります。たとえば毒キノコや毒草があります。植物以外にも、寄生虫や細菌などもあります。最近は何でも「消毒していない」ことが売りになっている物が多いですが、それは当然有害な細菌などが入っているリスクがあるということになります。自然だから安全というのは、自然が人間にとって生きやすくできているはずだという、言うなれば人間絶対中心主義の迷信だと思います。

3.     あらゆる薬との併用の組み合わせはチェックしきれません。

つまり、併用は危険とされている物を避けるのは安全のための最低条件にすぎず、それ以外については安全か危険かわかっていないことも多いということです。(これは薬同士の併用についてももちろん同じです。ただ、薬同士の併用については、何か有害なことがあれば厚生労働省から医師に伝えられるシステムができています)

4. ハーブと薬の併用によって、実際に有害なことが起きたというケースはたくさんあります。

ご質問にある「うつ病に効くハーブ」というのは、おそらくセント・ジョーンズ・ワートのことだと思われますが、セント・ジョーンズ・ワートと抗うつ薬を一緒に飲んで、重大な副作用が出たという報告はいくつもあります

というわけで、「健康食品」「自然食品」「ハーブ」などを、無条件に安全(または薬より安全)と考えるのは危険です。

 

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