精神障害者の犯罪と法: 2003年以後の動き


「精神に問題がある人が犯罪を起こしても、人権の問題とか医療の問題の難しさもあって、何もしないできた。反発があるからと言って、何もしないでは済まされない。全部見直す」(読売、2001年6月12日22:04)と述べた首相に大いに期待したい。

前ページの上記結びの後、法改正の努力が進められ、
2003年7月に、「心神喪失等の状態で重大な加害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(いわゆる「医療観察法」)が、国会で成立し、公布された。
そして
2005年7月に、この法律が施行された。

これによって、前々ページで指摘した
「第一は、精神障害者が事件を起こして裁判で責任能力なしと認められて無罪になったあとの法律が整備されていないということです。」
という状況は変わった。すなわち、以下の流れが法制化されたのである。

重大犯罪(殺人、傷害など)を犯したが、心神喪失・心神耗弱であるとして、不起訴や無罪になった者

    ↓検察官が申し立て

鑑定入院
(精神鑑定医が意見書を作成)

地方裁判所の審判
(裁判官と精神科医の合議)

入院や通院の決定


上の手続きが、形としては整った。
 そしてこれに従って社会は動き出しているが、さしあたっての問題は、この法律によって入院が必要と決定された者の入院病棟が不足しているということである。この入院は、医療観察法のための特別の病棟が必要だが、2007年2月現在、
花巻病院(宮城)、さいがた病院(新潟)、小諸高原病院(長野)、国立精神・神経センター武蔵病院(東京)、久里浜アルコール症センター(神奈川)、下総医療センター(千葉)、北陸病院(富山)、東尾張病院(愛知)、肥前精神医療センター(佐賀)
の9病院である。関西地方での開設の遅れ、また、北海道、四国にはまだ1病院もないことなど、まだまだ病棟の整備が需要に追いつかない状態であるといえる。


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