精神科Q&A

【0557】脳梗塞で倒れた父の今の症状はうつ病でしょうか


Q:  父(64歳)は、3ヶ月前に脳梗塞で倒れて、右手が全く動かなく、歩行は出来る状態です。倒れてから入院を続けており、そろそろ退院と言われているのですが、1ヶ月程前から様子が変になりました。食欲も落ち、不眠や頭重を頻回に訴えるようになりました。最初は、ただの気分の落ち込みかと思ったのですが、なかなか良くならず、口数も少なくなり、常に不安を抱いている様子が見られています。この症状を見て、私はうつ病だと思うのですが、うつというのは、当然本人は気がついていないと思います。こういうのは、本人に伝えるべきなのでしょうか?病院側も、うすうす気がついていたにも関わらず、家族に説明なしに薬を出していたという事があり、父が外泊してきて以前よりもふらつきがあったり、寝てばっかりと状態がいつもと違うので、聞いてみたら精神安定剤を飲ませていることが解りびっくりした次第であります。



: 脳梗塞の後に、うつ病のような症状が見られるのは非常によくあることです。この場合、
(1) 脳梗塞の後遺症に悩み、気持ちが落ち込んでいる。
(2) 脳梗塞がきっかけになって、うつ病を発症した。
の二つがまず考えられるでしょう。あなたの解釈は(2)に近いものだと思います。
しかし、この二つ以外に、
(3) 脳梗塞による脳の特定の部位の損傷によって、脳の神経ネットワークが影響され(または破壊され)、その結果うつという症状が現れた。
ということも十分考えられます。つまり、うつが脳梗塞による直接の症状であるということです。これに関しては多くの研究があります。

 ですから、あなたのお父様のケースでも、この3通りの原因が考えられるのですが、その中のどれが真の原因かということは、事実上はわかりません。あなたのお父様のケースで特にわからない、という意味ではなく、脳梗塞後にうつ病のような症状が現れた場合、一般に真の原因はわからないという意味です。この3つの原因がからみあっている、というのが実際のところなのでしょう。

 原因についてはともかく、事実としては、「脳梗塞の後に、うつ病のような症状が見られるのは非常によくある」ということは言えます。ここで「後に」というのは、2,3ヶ月のこともあれば、1年以上続くこともあります。

 治療は、薬を使う場合は、抗うつ薬です。抗うつ薬は、脳梗塞と無関係のうつ病に対してのほうがずっとよく効きますが、脳梗塞後のうつにもある程度の効果があります。その他に、脳循環の改善薬がある程度効果的なこともあります。ご質問にある「精神安定剤」は、どういう薬を指しているのか不明ですが、もし抗不安薬だとすると、高齢の脳梗塞の方に対してはあまり勧められません。そういう方では、副作用としてのふらつきや眠気が強く出やすいからです。お父様にもそうした副作用が出てしまっているようです。(もちろん、この薬が常によくないという意味ではありません。不安感や焦燥感が強いときには、高齢者でも、脳梗塞後でも、第一に使う薬になります)

 それから、「うつであることを本人に告げたほうがいいか」というご質問ですが、これは何ともいえません。症状の程度にもよります。一般には、「脳梗塞の後では、うつの症状が出ることが多い。治る症状である」とお伝えすることで、かなりの安心感が得られることも多いものではあります。

 なお、これに関連したこととして、自殺のあとさき(うつ病の書斎)もご一読ください。


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