精神科Q&A

【0534】統合失調症の再発の兆候か、それとも単なる夫婦喧嘩か


Q: 38歳男性です。27歳の妻のことでアドバイスをいただければと思い、ご相談申し上げます。
 妻とは約1年間の交際を経て一昨年結婚したのですが、交際期間中に妻から、20歳の時に統合失調症になった事、それで2回入院した事、今は寛解状態にあることを打ち明けられ、それを承知で結婚しました。
 結婚当時も今も精神科の治療は継続していて、結婚当時の治療内容は「月に一度注射を打ち、毎日アーテンという薬を飲む」というものでした。
 昨年、夫婦で子供を作るかどうかを検討し、二人で精神科に行き、今の治療を継続したままので妊娠は、母体や子供にどれくらいのリスクがあるのかを相談しました。その先生は、今の治療法でもほとんどリスクは無い旨をおっしゃいましたが、念の為、更にリスクの少ない治療法に変えましょうということになって、注射を使わない(つまり薬だけ)の治療に変えました。
 治療法を変えた2〜3ヶ月後から、交際時からこれまで一度もしたことのなかった夫婦喧嘩が、約2週間に一回のペースで起こる様になってしまいました。
 喧嘩の契機はいつも、私の言動に対して妻が非難するというパターンで始まるのですが、私がいくら冷静に説明や釈明をしても聞き入れず、次から次へと私の過去の言動まで遡って(最初の契機とは無関係な事まで)いくのです。
 最初の頃は、「あぁ、妻もストレスが溜まっていたんだな」と、軽く考えていましたが、何回か喧嘩を繰り返すうちに「どうもおかしい」と思うようになりました。

そう思う理由は....
・私の言うことを、ある程度のところで納得して、喧嘩を終息させようという意識が感じられなく、次の論点、次の論点...と、無理やりにでも探して果てがない。(まるで喧嘩をしたがっている様子)
・喧嘩の度に、過去に何度も説明した同じ論点がまた出て来る。
・妻は、自分でも喧嘩が止められなくなってしまうという様な意味の事を言った事がある。
・喧嘩中の頭の回転の速さは平穏時とはまるで別モードの様に速く、鋭い。
・喧嘩の内容はいつも「私(妻)の事を愛してないからそういう事を言う(する)」
「大事に思ってないから...」「私(妻)に対して失礼な事を言った」という様な愛情不足を訴えるものだが、喧嘩後1日もすればケロっとして、表面上は一応幸せな主婦に見える。
・妻も自分の二面性に気づいている節がある。
等々などです。
昨日も「子供の事は一旦棚上げして、注射の治療に戻そうか?」と妻に提案したところ「私が病気のせいで怒りっぽくなってると思ってるんでしょ。あなたに原因があるとは考えないの?」と、また喧嘩になってしまいました...
今の妻の状況は、統合失調症の再発/悪化の兆候と考えられるでしょうか?
それとも単なる夫婦喧嘩と考えるべきでしょうか?



: 奥様の今の状況は、統合失調症(精神分裂病)の再発ないしは悪化の兆候だと思います。主治医の先生に状況を伝えて、早めに対応していただいてください。(薬の増量、あるいは注射の再開が適切だと思います)

 統合失調症の特徴的な症状は、幻覚と妄想ですが、それ以外にも多くの症状があります。感情が変わりやすいことや攻撃性も、そうした症状に含まれます。

 ただ、幻覚や妄想であれば、病気の症状であることが比較的理解しやすいのですが、感情の変化や攻撃性は、病気でなくてもありうることなので、判断が難しいことはよくあります。あなたが、

今の妻の状況は、統合失調症の再発/悪化の兆候と考えられるでしょうか?
それとも単なる夫婦喧嘩と考えるべきでしょうか?

という疑問を持たれるのももっともなことです。

 攻撃性は、ベースに妄想があって出てくるものもよくあります。つまり、誰かに嫌がらせをされているとか、迫害されているという被害妄想があると、その相手に対する攻撃性が出るという形です。

 しかし、統合失調症の症状には、妄想や幻覚とは直接関係のない攻撃性や感情の変わりやすさもあります。統合失調症の症状が安定している時期が続いていたのに、どうも怒りっぽくなってきた、それが再発ないし悪化の兆候であることはよくあります。まさにあなたの奥様の現在の状態がそうだと思います。

 もっとも、さきほど言ったように、病気の症状とは関係なく、感情が変化することは誰にでもあります。では症状との区別はどうするか。ひとつは、それまでのその人の性格とは違う攻撃性(つまり、急に怒りっぽくなった、など)、もうひとつは治療との関係、具体的には薬を変えた時期かどうかということです。

 あなたが、単なる喧嘩とは違うと思われる理由として箇条書きにされたことは、どれも「それまでのその人とは違う攻撃性」にあてはまると思います。特に
自分でも喧嘩が止められなくなってしまうという様な意味の事を言った事がある。
喧嘩中の頭の回転の速さは平穏時とはまるで別モードの様に速く、鋭い。
喧嘩後1日もすればケロっとして、表面上は一応幸せな主婦に見える。
妻も自分の二面性に気づいている節がある。

などがよくあてはまります。

 そして、それまで安定した状態を保っていた治療法を変えた2〜3ヶ月後からこのような状態になったということは、時期的にも、今回の治療が合わなかったと判断する強い根拠になります。

 奥様が前に受けておられた注射は、デポ(depot)剤と呼ばれるものです。デポ剤とは、一回注射すればある一定期間その効果が持続するものです。奥様は月に一回注射を受けていたとのことですので、おそらくハロペリドールのデポ剤(ハロマンス)でしょう。毎日飲んでおられたアーテンは、デポ剤の副作用を出にくくするための薬です。

 その後、注射をやめてからの飲み薬の内容が不明ですが、多くの場合、注射でなくても、毎日きちんと薬を飲めば、注射と同じ程度の効果が得られます。注射の量に応じて、飲み薬に変えるときの量は大体決まっています。おそらく奥様の飲んでおられる薬は、注射の量に応じたものであるとは思いますが、それでもこのような状態になられたということは、まだ不十分ということですので、薬を増量するのが適切な対応になります。もちろんまた注射に切り替えるという方法もあります。いずれにせよ、早めに対応しなければ、悪化して再入院ということにもなりかねませんので、ぜひ早く主治医に先生にお伝えください。

その後の経過(2004.1.5.)


精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る