精神科Q&A

【0512】治療を始めて2年たちましたが、うつ病がよくなりません


Q:  私は26歳になる女性です。2年前に総合病院の精神科でうつ病と診断されました。
 当初の症状としては、訳もなく涙が止まらなくなる、ねむれない、食欲が極端に落ちる(3ヶ月で25キロ痩せました)将来に悲観的になる、何に対しても興味がもてない等の症状がありました。
 それから2年さまざまな薬を投与されましたが未だに症状が一向に改善されません。途中休職や入院を勧められ、休職は9ヶ月間しました。
 うつ病には薬と休息ということも充分認識していましたので休職という選択肢だけはとりましたが、入院は両親の大反対もありできませんでした。
 休職の9ヶ月間は、薬と休養をとるように心がけましたが、これもまた症状の改善には役に立ちませんでした。休むことでかえって罪悪感が生じ、早く社会復帰をしなければという思いが強く主治医がとめるのも無視して2ヶ月前に復職をしました。復職をしましたがもう窓際族においやられ自分がなんのためにその職場にいるのか、自分の存在価値がわからなくなり退職しようかとも考えています。
 
 うつ病は薬で良くなると云われていますが、様々な薬を処方してもらいましたがよくなりません。主治医に外来で点滴治療が受けられないか聞いてみましたが、点滴後の管理(血圧など?)が出来ないためうちの病院ではやっていないといわれました。
 ちなみに私が今処方されている薬は
レキソタン5_、トフラニール300_
不安時にコントミン錠25_
眠前にベンザリン錠5_2錠、ベゲタミンA錠2錠、コントミン錠25_1錠
ジプレキサ5_1錠
不眠時にラボナ錠50_
です。
 これだけ飲んでいても副作用はほとんどと言っていいほどありません。

 主治医からは薬の効きにくいうつ病だといわれています。しかし最近は本当に自分はうつ病なのかと疑ってしまいます。
 治らないうつ病というのもあるのでしょうか?薬が効かないと言うことはうつ病では無いということなのでしょうか?


: 結論を先に申し上げますと、入院してうつ病の治療を受けるべきだと思います。ご両親が反対されているとのことですが、2年長引いて、しかもよくなる兆しがまだ見えない。これは明らかに入院治療の適応です。あなたも書いておられるように、抗うつ薬の点滴が入院してからの治療のひとつの選択肢になります。

 結論はそうなるのですが、まずあなたがうつ病かどうかを考えてみましょう。

 まず、うつ病らしい点です。それは、まず最初の症状が挙げられます。
訳もなく涙が止まらなくなる、ねむれない、食欲が極端に落ちる(3ヶ月で25キロ痩せました)将来に悲観的になる、何に対しても興味がもてない等の症状がありました。
こうした症状が、特にきっかけなく(きっかけは書かれていませんが、なかったと解釈しています。「訳もなく涙が止まらなくなる」と書かれているのも、そう解釈した理由のひとつです)出ている場合、うつ病の可能性はきわめて高いです。

 そして、休まれた後のあなたの行動です。

休むことでかえって罪悪感が生じ、早く社会復帰をしなければという思いが強く主治医がとめるのも無視して2ヶ月前に復職をしました。

これは、うつ病の人にありがちな行動です。うつ病は休むことが必要なのですが、休むこと自体に罪悪感があり、休むことができにくい。休んでも十分治らないうちに復職してしまう。うつ病では非常によくあることです。(逆の行動は、うつ病らしくないということになります。【0406】【0387】【0356】などをご参照ください)

 そして早すぎる復職は、残念ながら良い結果に結びつきにくいものです。

復職をしましたがもう窓際族においやられ自分がなんのためにその職場にいるのか、自分の存在価値がわからなくなり退職しようかとも考えています。

というあなたの状態は、うつ病の治療がうまくいかなかった時にありがちなものです。

 以上が、あなたのメールの内容から読み取れるうつ病らしい点です。というより、ここまででほぼ確実にうつ病だと私には思えます。

 では、うつ病らしくない点はあるか。そのひとつはあなたも書いておられるように、薬が効きにくいことです。すなわち、

2年さまざまな薬を投与されましたが未だに症状が一向に改善されません
という事実。

 実際には、このような場合、うつ病の医学部講堂で解説したように、薬の量が不十分であることが多いものです。確かにさまざまな薬を投与されているが、いずれも量が不十分なため、いつまでたっても効かない。これがもっともよくあるケースです。

 けれどもあなたの場合は、現在トフラニールが300ミリグラムとほぼ上限の量が処方されていることから、量が不十分とは考えにくいと思います。ということは、あなたの主治医の先生がおっしゃるように、
薬の効きにくいうつ病
といえると思います。

 ただし、薬が効きにくいから、だから、うつ病ではない、とはいえません。
薬が効かないと言うことはうつ病では無いということなのでしょうか?
と質問される気持ちはわかりますが、
「うつ病には薬が効く」
という一般論は真実ですが、だからといって、
「薬が効きにくいからうつ病ではない」
とはいえないのです。

 それから、薬といえば、あなたの処方は一見して奇妙な処方だと思います。トフラニール300ミリグラムはいいとしても、コントミンやジプレキサといった、抗精神病薬が処方されている。また寝る前のベゲタミンAを2錠というのはかなり強い薬で、うつ病の方にこの量が必要なことはあまりないことです。もっとも、うつ病でも不安や焦燥が強ければ、抗精神病薬を処方することはありますので、あなたの処方がおかしいということではありませんが、普通のうつ病の処方ではないということはいえるでしょう。

 以上のように、うつ病らしくない点もなくはないのですが、総合的に見れば、やはりあなたはうつ病と診断できると思います。

 なお、
これだけ飲んでいても副作用はほとんどと言っていいほどありません。
というのは、この処方量を見ると、かなり例外的だと思います。ですから、あなたは体質的に、薬の本来の作用も副作用も出にくいのだと思います。つまり、このまま外来で薬をいろいろ試すだけでは、なかなか治りにくいでしょう。入院することをお勧めします。

 


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