精神科Q&A

【0505】統合失調症と診断されている知人の恋愛妄想


Q:  統合失調症と診断されている41歳の独身女性(Eさん)と、そのケアに憔悴しきっている家族に対してどのような関わりを持っていくべきかを教えてください。私は39歳の男性で、Eさんの参加しているボランティアグループの責任者です。Eさんは私よりずっと前からこのグループのメンバーでした。

 Eさんの主症状は恋愛妄想です。最初に症状が出たのがいつかはっきりしませんが、10年以上前からだと思います。同じボランティアグループ内の人、職場の人など様々な人と結婚話が進んでいると妄想するのです。そして妄想の度に「寿退社」を重ねてきました。ボランティアグループ内では風変わりな人として受け止めらていました。

 4年前に、その関係で警察沙汰になりました。Eさんが、会社で直属の上司から深刻なセクハラを受けているとボランティアグループの会合で告白したのです。それと前後してEさんは警察に訴えました。実際には、Eさんがその上司に恋愛妄想を抱き、ストーカー行為をし、社長とその家族に大迷惑となっていることが判明しました。その件が落ち着くと、今度は同じボランティアグループのメンバーが恋愛の邪魔をしていると大騒ぎをはじめました。ボランティアグループのメンバーは根も葉もない噂を小さな町で流布され、憔悴しきりました。結局、Eさんの家族が初めて入院させることとなり、半年ほどで退院し、数ヶ月の自宅療養後、再就職しました。

 恋愛妄想以外にもこんなことがありました。一年ほど前のことです。ボランティアグループの会合中に、空笑、独り言が始まると同時に、悪魔から攻撃されていると悩みを訴えたのです。このときに初めて、Eさんの両親に連絡をとり、Eさんの奇行振りを通報。

 家族の説得により、Eさんは入院しましたが、2ヶ月で退院し、主治医の勧めでEさんは仕事探しを始めました。

 最近は、ボランティアグループの会合に頻繁に来て、「大いなる者」との交信と称して、空笑、独り言を繰り返しています。Eさんの両親に通報したところ、家族もEさんの両親に対する憎悪感と、病識の完全な欠如、服薬の完全拒否に悩まされ憔悴しきっていることを吐露され、「薬を飲めば収まるから、あなたからも薬の服用を是非とも勧めて欲しい」とEさんの父親から依頼されました。また、その父親は私を理解者として信頼してくれて、電話のたびに苦労話を延々としています。時々の電話で私に苦労を吐露することで、父親は随分とストレス発散になっているようでもあります。

 ところで、Eさんの妄想が始まるのは、決まって、ボランティアグループ内のメンバーのだれかが結婚するときか、出産をするときです。現在も、メンバーで出産を控えている人がいます。これまでの経験から悪化するのは目に見えています。

 Eさんは求職中ですが、奇行ぶりは周囲に伝わり、ほとんど門前払い状態です。Eさん自身はそれについて、自分の就職を妨害している人がいると考えているようで、それを調査している様子です。ボランティアグループのメンバーにまた憎悪のターゲットが現れないかと非常に心配しております。

 最近、私はEさんにものすごい剣幕で怒られたことがありました。原因は客観的に見ても非常に些細な、怒るようなことではなかったと思います。そこでやんわりと「体調が悪そうですよね。いつもの明るいEさんらしさが全くないですし。」と言うと、「ヘラヘラ笑っていれば体調がいいとでも言うんですか!!! あなたは薬の副作用を知っているんですか???」と次々に攻撃的な言葉を浴びせられました。発病していないときにはきわめて穏やかな方だけに、驚きの言動でした。

 Eさんの父親には、ボランティア活動でどのような行動をしているか、教えて欲しいと頼まれています。この父親は良識のあるとてもいい方ですが、孤立無援という孤独感があるようで精神的に弱っているように見受けられます。

 私の質問は、今後Eさんとどのように接するのがいいのかということです。また、Eさんの家族とはコンタクトを取り続けてあげた方がいいのでしょうか。


: Eさんの診断は統合失調症(精神分裂病)に間違いないと思います。発症が10年以上前とのことですので、今の症状とあわせ、慢性化した状態とみていいでしょう。薬を定期的に飲めばある程度までは落ち着くと期待できますが、薬を飲まなければ妄想はどんどんエスカレートし、時には攻撃的になることも予想されます。また、たとえ薬を飲んでいても、ある程度以上のストレスが加わると悪化するのも、統合失調症の方にはよくあることです。あなたはEさんの状態をかなり正確に把握されていることがメールから読み取れます。あなたのEさんに対するこれまでの行動、Eさんの家族への対応、Eさんの病状についてのご理解は、ほぼ正しいと私は思います。

 それでもなおあなたは困っておられる。それもよくわかります。統合失調症の方の症状には様々なレベルがあり、健康な人とほとんど変わらない、あるいは薬さえ飲んでいれば健康な人とほとんど変わらない人から、Eさんのような人、さらには長期にわたり入院を余儀なくされるレベルまで、様々です。

 あなたのボランティア活動の具体的内容が不明ですので、細かいところまでは判断しかねますが、Eさんの現在の症状を見ると、ボランティア活動を続けること自体がかなり難しい状態であるようにみえます。

 その一方で、もしEさんからボランティア活動を取り上げてしまったら、Eさんは拠り所を失ってしまうという危惧もあります。ですから、治療する側の立場からすれば、なんとかEさんには今の活動を続けさせてあげたいところです。おそらくEさんのご家族もそう考えておられると思います。

 けれども実際に一緒に活動しておられるグループの方々は、必ずしもそれには賛同されないと思います。あなたが心配されているように、グループのメンバーが妄想の対象になり、攻撃の鉾先が向けられるようになったら、Eさんの治療を最優先に考えることは、現実にはできないでしょう。

 Eさんをどこまで受け入れるかは、責任者のあなたを中心とするグループの皆様に決めていただくべきことだと思います。

 Eさんへの接し方については、あなたのこれまでの接し方が正しかったと私は信じます。あなたが書いておられるように、統合失調症では、病状が悪い時期には攻撃的になったりするものです。それは妄想を伴うことが多いのですが、妄想と直接関係のない攻撃性がみられることもしばしばあるものです。

 そしてEさんのお父様がおっしゃっているように、服薬さえきちんとしていれば、かなり落ち着いた状態が期待できます。統合失調症の方が服薬を拒否するのは、Eさんの言葉にあるように、副作用を理由にされることはよくあります。けれどもそれは必ずしも事実を正確に表していません。やはり病識がないから、というのが主な理由でしょう。そして服薬をしなければ病識はどんどんなくなっていきます。ですからEさんのお父様のおっしゃるように、服薬を確実にすることは、基本として何より大切です。服薬を確実にして初めて、周囲の人の接し方の病状への影響がはっきりしてくるのです。服薬されていなければ、残念ながら接し方をいかによくしようとも、病状の好転はほとんど期待できません。

 また、あなたのご質問にもある、ご家族とのコンタクトは非常に重要で、ぜひコンタクトを取り続けてあげてください。統合失調症が慢性化すると、ご家族がまいってしまうことは非常に多いものです。そしてもしご家族がサジを投げてしまうと、もう病状の改善はほとんど望めません。

 以上、あまり実効ある回答にはなりませんでしたが、病識の欠けた、しかも慢性化した統合失調症の方への対応は、時に非常に難しいとご理解ください。そういうなかで、あなたの対応はかなり適切であったと思います。今後もグループの現実とEさん・Eさんのご家族の利益のバランスを見据えた対応をしていただけることを期待いたします。

 また、どうしても今のボランティア活動を続けることが困難と判断された場合には、デイケアや作業所など、精神障害者のための福祉施設にスムースにつなげていただけることが、もっともEさんのためになると思います。
 


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