精神科Q&A

【0479】うつだからやる気が出ないのか、仕事がいやでやる気が出ないのか


Q: 35歳の男です。非常につらい気持ちで助けていただきたいのです。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は医薬品工場の品質管理室で働いております。経営難から昨年会社が変わり、別の親会社の子会社になりました。親会社から新しい上司が来ました。また工場ももともと食品メーカーの医薬品工場だったので医薬品メーカーとしては管理上の問題などいろいろ改善すべき点があり、私も試験責任者となってそれらに携わっておりました。

 しかし、仕事の結果をだすのが遅れてしまい責任者から下されてしまいました。理由は理解できますが、それなりには努力していたつもりでしたのでショックでした。それから、慣れない検査作業をすることになったのですが、単純作業ですが製品の出荷に間に合わせるため仕事に追われる感じで休むこともできず、ストレスが溜まってまいりました。簡単な仕事でも失敗ばかりして、検査のやり直しなどが重なりました。また、他の人に手伝ってもらうなど、周囲の同僚や上司にも迷惑をかけることもありました。そして、何も考えられないようになり、何をするのも面倒なような状態になりました。ピペットひとつ持ち上げるのも億劫なような感じです。夜も眠った気がしないまま朝早く目が覚めるような感じで、目が覚めても体は起こせないような感じでした。

 それから、私はだらしのない性格で、使ったもの、捨てなければならないものなどがその場に置きっ放しで、自宅の部屋はごみ部屋になってしまっていました。仕事上でも、無くし物、忘れ物などが多く、書類の提出期限が守れなかったことなど問題がありました。そして、インターネット上で調べているとADD(注意欠陥障害)に関する記述があり、関係する本を読んだりして自分もそうではないかと思いました。

 つらいので、助けて欲しいと思い日曜診療をしているメンタルクリニックを受診しました。そこでADDの話をしたのですが、子どもの病気としてはあるが大人のものは認められていないということでした。簡単なアンケート調査に解答したのですが、それの内容と問診からうつであると診断されました。抗うつ薬としてデプロメールを夜2錠、それからやる気が出てくるというドグマチールを毎食後1錠ずつ頂きました。

 1ヶ月続けましたが、それまで下痢気味だった胃腸の調子が良くなったのがドグマチールのせいではないかと感じた以外は特に変化は感じられず、つらい状態が続いていました。また、肝臓の数値が悪かったことを告げたため血液検査をして、肝臓のためにユベラニコチレートとグリチロン錠を出していただきました。

 それから更に2週間続け、先生に効果が全く感じられないことを伝えると、先生はおかしい、変だとおっしゃってドグマチールをやめ、柴胡加竜骨牡蛎湯エキスという漢方薬を代わりに出してくださいました。

 それを1週間続けていると、妙な不安感と焦燥感が出てきて、確かに仕事上でも客観的にそういう状況はあるのですが、ベッドに入ってもじっとしていられない。疲れているはずなのに全然休めないような状態になりました。じっとしていられないので起き上がり部屋の中に散らかったごみを集めて捨てるなどしました。でも、これはやる気が出てきた、うつが直ってきたという幸福な感じではなく、つらくてじっとしていられない焦燥感からのように感じました。夜も眠れず、疲れ、仕事では凡ミスばかりしている状態でした。予約の2週間を待たず、クリニックを受診し、焦燥感のことをお話しました。先生はおかしい、漢方薬でそのような症状は見たことが無いとおっしゃって、症状なのか副作用なのかは分からないが焦燥感を抑えるためにということで、メイラックスを朝夕1錠ずつ追加で出してくださいました。メイラックスは少し効いたような感じがしました。しかし眠くなるような気がし、だらしない性格が戻ってきてしまうような気もします。焦燥感のある間部屋の中のゴミは半分くらい片付きました。

 今でも、仕事がまるで三途の川の石積みのように感じられ、考えはまとまらず、失敗ばかりという状況は変わっていません。この間、会社の集団検診がありましたが、そこでも問診の際にうつの話を先生にしました。問診していただいた先生は優しく、産業医の先生に話して自宅療養を申し出た方が良いかもしれないとおっしゃってくださいました。でもクリニックの先生は特に会社を休むようにはおっしゃっていません。

 仕事がつらいので休むことができたらどんなにか楽かとは思います。でも、この状態で休むのはずる休みのような感じもします。買い物に行くこともできますし、太っているのでダイエットをしたいところですが、食欲だけはあり全く痩せて来ません。物の味も良く分かり、おいしい物を食べたいなどと思います。死ぬことなどは怖くて考えられません。つらさから逃れるために、自然に消えてしまうならそれも良いかとは思います。でも、そんなことはできるはずもありません。

 私は本当にうつ病なのでしょうか。仕事がつらいことだけは事実です。でも、単なる甘えかわがままのような気もします。気分を変えようと思い、今日は日曜日なので近くの温泉へ行ってきました。帰りにはおいしい焼肉を食べました。こんなことをしていて自宅療養なんて、ずる休みのように感じます。本当に自宅療養であれば、家から出ずじっと苦しみに耐えるようなものだと思います。

 仕事は向いていないとも感じております。逃避だとも思いますが、将来も考えられず、仕事をやめてしまいたいと考えております。うつ病のときは正常な判断能力が無いので退職などは延期するべきだと言われていますが、いまのつらさ、苦しさに耐えていく自信がありません。仕事をやめて、他に当てがあるわけではなく無責任だとは思いますが、私は一人身なので何とかなるのではと思っております。

 本当につらく、今の状況から抜け出すために何かアドバイスをいただければ本当に幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。


: あなたは、うつ病だと思います。うつ病は、治ります。あなたもしっかりと治療すれば治るでしょう。

 いま「しっかり治療すれば」と言ったのは、あなたの受けたこれまでの治療経過には疑問があるからです。このやり方では治る病気も治らないと思います。病院を変えたほうがいいでしょう。

「治療経過に疑問がある」というのは、うつ病の治療の基本である薬と休養の両方についてのことを指しています。

まず薬のことです。

治療開始の時点で

「抗うつ薬としてデプロメールを夜2錠、それからやる気が出てくるというドグマチールを毎食後1錠ずつ頂きました」

と記載されています。錠数だけの記載で、ミリグラムが不明ですが(これはきわめて大切な情報です。ミリグラムが不明だと、薬の量が多い少ないかの判断ができません)、おそらくはデプロメールは25ミリグラム錠、ドグマチールは50ミリグラム錠だったと推定することにします。そうしますと一日量としてはデプロメール50ミリグラム、ドグマチール150ミリグラムということになりますね。これは治療開始時の量としてはまあ標準的といえます。

そして、

「1ヶ月続けましたが、それまで下痢気味だった胃腸の調子が良くなったのがドグマチールのせいではないかと感じた以外は特に変化は感じられず、つらい状態が続いていました」
「それから更に2週間続け」

ということですので、最初の量で6週間治療を続けたということになります。

 抗うつ薬による治療では、二週間くらいで効果が認められるのがふつうですが、それより長くかかっても特に例外的とはいえません。そして長く(一ヶ月程度)続けても効果がまったくなければ、薬の量を増やすのが常識です。

 ただひとつわからないのは、
「肝臓の数値が悪かったことを告げたため血液検査をして、肝臓のためにユベラニコチレートとグリチロン錠を出していただきました」
という記載です。このときの血液検査の結果はどうだったのでしょうか。検査の後にも薬を減らしたり変えたりしなかったということは、肝機能は正常だったということか。あるいは、ユベラニコチレートとグリチロン錠を処方されたということは、多少は異常があったということか。また、

「肝臓の数値が悪かったことを告げた」
というのは、いつの数値で、どのくらいの数値だったのか。

 これらについての情報がないので、本当のことをいえばこれ以上の判断はできかねます。

 しかし、検査は正常だったが、肝機能障害の既往があるので念のためユベラニコチレートとグリチロン錠を処方された、と仮定して話を進めます。

 そうしますと、デプロメールとドグマチールの話に戻って、
「それから更に2週間続け、先生に効果が全く感じられないことを伝えると、先生はおかしい、変だとおっしゃってドグマチールをやめ」
という医師の反応は、理解し難いところです。上記の量を6週間続けて改善がないのは、期待に反することではあっても例外的なことではなく、もし本当に「おかしい、変だ」と言われたのであれば、そう言うほうがよほどおかしいと思います。

 また、この時点で
「ドグマチールをやめ、柴胡加竜骨牡蛎湯エキスという漢方薬を代わりに出した」
というのも、迷走した治療だと思います。これではうつ病は治らないでしょう。

 そして、その一週間後の、
「妙な不安感と焦燥感が出てきて、確かに仕事上でも客観的にそういう状況はあるのですが、ベッドに入ってもじっとしていられない。疲れているはずなのに全然休めないような状態になりました。じっとしていられないので起き上がり部屋の中に散らかったごみを集めて捨てるなどしました。でも、これはやる気が出てきた、うつが直ってきたという幸福な感じではなく、つらくてじっとしていられない焦燥感からのように感じました。夜も眠れず、疲れ、仕事では凡ミスばかりしている状態でした。」

 これは、先生がおっしゃるように、柴胡加竜骨牡蛎湯の副作用ではないでしょう。この症状そのものはデプロメールの副作用としてありうるものではありますが、経過からいって、副作用ではなく、うつ病の悪化とみるべきでしょう。対する

「メイラックスを朝夕1錠ずつ追加」
という対応はうなづけますが、これは対症的であってもうつ病そのものの治療にはなりにくいので、抗うつ薬を追加すべき状況だと思います。

 それ以後もあなたの症状は悪化しています。薬の増量とともに、休養をとるべき時期です。

「クリニックの先生は特に会社を休むようにはおっしゃっていません」
というのは、私には理解できません。

 それからついでに言いますと、ADDについて、

「子どもの病気としてはあるが大人のものは認められていない」
といわれたとのことですが、この説明は矛盾しています。ADDの発症は確かに小児期ですが、成人になれば全員が治るというものではありません。

 もっとも、あなたはADDではありません。うつ病です。そして、うつ病は適切な治療を受ければ大部分が治ります。あなたの受けている治療は不適切です。病院を変えて、適切な治療を受けられることをお勧めいたします。

 ただしこちらもお読みください。


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