精神科Q&A

【0411】統合失調症(精神分裂病)の治療中に、急に舌がひっぱられて、ろれつが回らない状態になりました


Q: 23歳女性です。半年前に精神科を受診し、統合失調症(精神分裂病)と診断され、ルーラン(8)、アキネトン1mgを、1日2回服薬していました。
 その三ヶ月後、婦人科の薬エリスロシン錠200mgを、1日3回14日分もらい服薬していたところ、一週間後に、急に舌がひっぱられて、ろれつが、回らない状態になりそのときは、アキネトン錠を、2錠服薬し30分ぐらいでおさまりました。
 その数日後、同じ症状でさらにあごが横にずれよだれがかなり出ました。そのときもアキネトン2錠服薬し婦人科の薬を飲み終わるまで、アキネトン錠2錠ずつ服薬しました、後は、副作用はなかったのですが、その一ヶ月後、婦人科の薬(同じ薬)を飲みはじめました。
 三日後、また副作用がでました、今度は、頭が後ろにひっぱられるみたいでした。そこで主治医に聞いた所、ルーランは副作用が無い薬との回答でした。念のため薬剤師に調べてもらいましたが、婦人科の薬とルーランの飲み合わせでの副作用では、ないとの回答でした。
そうすると、この「ひっぱられる」というような症状は何なのでしょうか。

: ルーランの副作用です。急性ジストニアといいます。また、婦人科で処方されたエリスロシンを一緒に飲んだために、ルーランの副作用が出やすい状態になったと考えられます。

 急性ジストニアは、程度の差はありますが、統合失調症(精神分裂病)の薬であれば、どの薬でも起こりうる副作用です。主治医の先生が「ルーランは副作用が無い薬」とおっしゃった、というのは、おそらく、「ルーランは副作用が少ない、または出にくい薬」ということの聞き違いではないでしょうか。「副作用が無い薬」というのはあり得ません。
 「ひっぱられる」という状態になった時、アキネトンを飲むことで対処されたとのことですが、これは急性ジストニアに対してはごく普通の対処法です。アキネトンの注射で対応することもあります。おそらく、この時にアキネトンを飲まれたというのは主治医の先生の指示だと思われますので、主治医の先生は、「ルーランの副作用としての急性ジストニア」と正しく診断しておられたのだと思います。(なお、この副作用はルーランの添付文書に明記されています)
 
「念のため薬剤師に調べてもらいましたが、婦人科の薬とルーランの飲み合わせでの副作用では、ないとの回答でした」

とのことですが、それは直接の飲み合わせの副作用ではないというような意味だと思います。エリスロシンは、CYP3Aという酵素と結合します。CYP3Aは薬を代謝する酵素です。このためエリスロシンは、CYP3Aで代謝される薬の血中濃度を上げる作用があります。あなたはルーランとエリスロシンを一緒に飲んだため、ルーランの血中濃度が上がり、急性ジストニアという副作用が出たのだと思います。事実、あなたの場合、ルーランとエリスロシンを一緒に飲んだ時に限って二回もこの副作用が出ていますので、これは間違いないでしょう。
 
 あなたがエリスロシンを飲まなければならない理由が書かれていないため不明ですが、他の薬に変えることが可能なら変えるべきだと思います。
 
 なお、急性ジストニアについては、【0412】もお読みください。


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