精神科Q&A

【0390】入院中の妻が、家に帰りたくないと言っている( 【0385】の続き)


Q 【0385】のお答えに深く感謝いたします、お話のように背景も申し上げず現象面だけを書かせていただきました取り乱しを今深く反省しています。
 言い訳がましくなりますが、自殺未遂、入院、面会拒否と余りも激しい変化に自分が対応できず、慌ててメイルさせていただき論旨が明確でなかったことを反省しています。限られたスペースに盛り込むことが出来ませんでしたが付け加えさせていただきます。
 確かにうつ病も含めて面会拒否がありうることは納得いたしました。今現在一ヶ月を過ぎた時点ですが面会は普通に出来るようになりましたし、今では一時外出もやっています。
 家内の此れまでにいたった経過をお話させていただきます。
 家内の性格は几帳面で、責任感が強く、潔癖症の上に完全主義です。そして学校を出て直ぐ結婚に入ったことで社会経験が無く、所謂お嬢さん育ちで、これまで金銭面等で全く困ったことが無く、命令支配欲が強いように感じられます。
 そんなことで子供をなしてから養育に全力を打ち込み学校での役員等を引き受けたり(頼まれると嫌とはいえない性格)、豊かでないサラリーマン家計を切り回し、主婦および妻としての存在を充分果たしてくれました。この間家を建てたり、家内実家との問題で辛い日々を経験しました。子供も二人大学に通わせ卒業と同時に就職し、一旦は家を出ました。此処に子供養育と言う空白が出来ました一方夫たる私は家を省みず殆ど24時間会社人間で仕事を家に持ち込むありさまで、家内の相談相手として養育にも家のことにも全く役をなしていませんでした。
 こんな状態にあって、所謂更年期を迎え不安定状態といっていますがそんなストレスの上に息子が突然勤務地変更家に帰ってきてさらに養育負担が増えたようです。息子も親に似て24時間勤務で出社、退社時間が一定せず、加えて私はと言えば海外の店舗を任されて月に10日は海外に出かけていました。住宅街でサラリーマンが多く日中は静かな環境ですが、空き巣等もあり我が家も一度狙われました。そんなことで昼も夜も不安全の為にセコムを設置したりして物理的解決のみを図ってきました。此処までくるまでには色々サインがあったのですが子供達や私は、自分の仕事に熱中してこのサインに応えようとしなかった日々が続きました。
 そんなことで家内は、こんなに身を切り刻んで尽くしたのに感謝が足りない、もう緊張の糸が切れた、何か相談しても、子供も私も仕事に逃げてしまうと嘆いていました。そして困ったときだけ頼りにされてこき使われていると言い出す始末でした。実際は色々手助けしたつもりですが仕事を投げ出して自分を守ってほしいというのが真意だったようです。しかし夫としては老後を考えた保証が大切と勝手に仕事に打ち込み定年を延長して海外を面倒見てきた始末です。こんなことから自分(家内)の体をこうしたのは家族、特に夫たる責任を果たすどころか敵役に回ったようなものだと深く考えるようになって、もう一緒の生活は嫌だ尼になりたい、死にたいを言うようになったのです。勿論何もしていない訳でなく心療内科に通って手当てを受けていたのですが、この時点でうつ病と診断されて週一回の通院をしていました。此れは心療内科の先生の話ですが、落ち込んだとき以外に話せば、夫である私への感謝の気持ちをもらし、仕事人間になるほど一生懸命な点は評価できるとも話すようです。
そんな折10日間ほどのアメリカ東海岸旅行をしましたが、いきなりのアメリカは時差の事も有り大変出ないかといったのですが、此れまで夢として考えていたことなのでと強行しました。こんな緊張、疲労も加わってところに、老後の為新しい場所に家を建てることを決めていたことの実行設計が始まりました。この話にも私の援助がないと思い込むようになったり、或いは相談にのればのったで全て自分の思い通りにしてしまって、自分(家内)の立場が無いと詰ったりする始末でした。丁度そのとき此れまで付き合ってきた建築会社の営業マンが転勤して離れた事もあったり、さらに仕事で海外出張中であったりで不安が増したようです。そして 【0385】に書いた自殺未遂をはじめとする事件が起こったのです。
 以上が家内の私に会いたくない背景であると理解しています。
 
 これまでは一方的にこちらに非があるように書きましたが子供達は自分達の社会経験から判断して決してそうではなく、家内にも自分勝手があると、どちらかといえば私に好意的で味方をしてくれます。家内のご機嫌をとってはいけないんだとも言います。ご機嫌取り甘やかしがさらに身勝手を生んだとも言うくらいです。確かに甘やかすばかりで真剣な対話が欠けていたことはいえます。もっと会話をしていれば良いこと悪いことが話しあえて、家内も社会の狡さを知れば、心の負担を取り除くことが出来たのではないかと今反省していますが覆水盆に返らずです。
 そんな訳で、以下の質問にもお答えをいただければ幸いです。
 3ヶ月になる入院生活で家族との面会、話し合いで興奮することは無くなったようですし、此れまでは住んでいた家の地名だけ聞いても身震いがしたのに今は冷静に聞くことが出来るところまで来たと話し合っています。しかし、未だ思い出の詰め込まれた家には帰りたくないと言い出しました。主治医も一段階として一旦近くに居を構えて一時外泊、通院を経験するのがいいと後押ししています。二段階で退院独り住まい。そして家族が新しい居に通う。第三段階としてたまに此れまでの家に日帰りしてみる。
 経済的にも時間的にも大変な負担ですが此れまでの家内に与えた苦労を考えると希望をかなえてやろうかと思いますが、子供達は其れも甘やかしと否定的です。子供達の意見は、今の段階で笑顔を期待するなら上のような三段階も良いが、究極は家に二人して住み、老後を迎えることであるはず、それならもう少し別な手立てもあるのではということです。思い余ってご好意に甘えさせてご質問いたします。     

: 入院中は症状が落ち着き非常に良い状態であっても、退院すると間もなく悪化する人は比較的よくいらっしゃいます。家庭環境が悪化の要因になるのです。人によっては、そういうケースは例外で、精神科の入院病棟が家庭に勝るはずはないと考えるかもしれませんが、そう素直に考えられる人は実はかなり幸せな人であって、現実には家庭のストレスはしばしば悪化や再発の原因になるものです。
 奥様のケースはどうでしょうか。
 確かに、奥様が精神科にかかるようになった一因として、あなたの接し方があることは否定できないでしょう。そして、奥様はそれが中心的な要因になっていると感じておられるようです(あくまでも奥様の主観という意味です)。
 では現時点で、家庭に帰られる手順として、主治医の提案された三段階を採るべきでしょうか。
 結論を先に申し上げますと、私はそれには賛成できません。
 ここで急いで付け加えますが、直接診療をしておられる主治医の先生の判断よりも、私の意見が正しいということはあり得ないでしょう(こちらもご覧下さい)。あくまでも私は、メールでお伝えいただいた情報のみからの意見を申し上げているにすぎません。
 私が賛成できない理由は、ほぼあなたのご子息のお考えと同じです。「今の段階で笑顔を期待するのなら」というのは誠に至当な表現で、おっしゃる通り、一旦近くに居を構えてから段階を踏んでいく、という方法は、今は確かに奥様の顔を立てることになっても、長期的にはあまりいいとは思えません。経済的なご負担も、当然ながらあまりに大きいと思います。
 患者さんの症状悪化の主因がご家族であるケースも確かに存在します。この家族といる限り、何回も再発を繰り返すのは避けられない、と考えざるを得ないことも確かにあります。しかしそれは病気に対して文字通り全く理解がない、または理解する意思もない、というようなご家族の場合です。例として挙げるのは気が引けるのですが、【0380】の「父」のようなケースです。
 あなたの場合はそれとは全く異なっていると思います。
 これまでの奥様の経過を見ても、当初の面会拒否の状態からはかなり進展しているようにも見えます。ご自宅に退院されることを前提とした上で、家庭環境をどのように改善できるかを、話し合われることがいいと私は考えます。


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