精神科Q&A

【0387】自分の「うつ病」を宣伝している友人は、擬態うつ病でしょうか 


Q: 私は30歳男性、会社員です。自称「うつ病」の私の知人(30歳、女性)への接し方についてアドバイスを頂きたく、メールをさせて頂きました。
 彼女は勤務先の一年後輩でした。しばらくしてから、「うつ病の治療をしている」と告白されました。5年ほど前の事です。彼女は「親の育て方に問題があって自分はうつになった」と言っていました。うつ病の本をたくさん読んでいたようで、大変知識を持っており、自分の病状について、理論的に説明をしていました。仕事もうつを理由に休みがちで、そのうち、病状が進んだとかで、薬を飲まないと外出も出来ないと会社を辞めました。後に、彼女の上司が「こんなに安い給料ではやっていけない」と何度も給料の値上げを要求されて困っていたと言っていました。
 会社を辞めてからも、夜遊びをしたら朝まで深酒にカラオケ、趣味の陶芸を売るためにフリマに出店するなど、好きな事をやっている時は、人一倍楽しんでいるようにも見え、日常生活にはなんの問題もなさそうでした。ただ、何か彼女の都合の悪い事が起こったりすると「私はうつ病なんだから」と病気を盾にして逃げてしまいます。
 最近は、ホームページに自分の「うつ病日記」を掲載し始めました。フリマでちょっと仲良くなった人にも名刺を配り、その名刺にはホームページのアドレスが書いてあり、あまり彼女を知らない人でも「うつ病」があるという事を分かる状況を作っています。まるで自分の「うつ病」を宣伝しているようです。また最近自殺未遂をしたようで、それをホームページに掲載しました。私にはそれがどこか誇らしげに感じました。うつ病を治したいという気持ちはどこにも感じません。
 たまに入院しているようですが、その時はメールが入って「これから入院します。励ましのお便りを待っています。」と励ましの催促をされます。
 親の育て方が問題だと言っていながら、実家で暮らし、ここ数年働かず、その親の面倒になっています。薬の影響で、昼間も眠いので働きに出られないというのです。
 私も友人達も彼女は「本当にうつなのか」と疑問を持つようになりました。そんな時、林先生の擬態うつ病の本を読み、彼女は擬態(自称うつ病)なのではないかと思うようになりました。
 今までは、それでも彼女に調子を合わせていたのですが、最近そうも言えないような事になりました。私はずっと前から腰痛が持病で、内科・整形外科・鍼灸院・カイロプラクティクスなど何件もまわったのですが全く良くならず、ストレス性ではないかと言われ、私としては納得できないままに心療内科に通うようになりました。そこで「心身症」と判断されました。処方された薬が幸いにも良くあい、2週間程で改善され始めましたがこのことは誰にも話す事が出来ません。心の病気と医者が判断しても、どこか「うそっぱち」のような感覚を彼女を見て感じてしまっているせいか、他の人に言っても信用されないのではないか、周囲に余計な心配を掛けてしまうのではないかと思ってしまったのです。
 そんな時に、いくら与えても満足することのない「励まし」や「愛」を彼女に要求されること、それにお愛想でも答える事が非常に腹立たしく思ってしまったのです。
 彼女に忠告することは無駄な事なのでしょうか?
 やはり関わらないようにした方がいいのでしょうか?
 彼女を診察している医者は本当に彼女をうつ病だと思って診察して、入院をさせたり、薬を出しているのでしょうか?
 私は彼女とこれからどう接していけばいいのか、また、上手くフェイドアウトするにはどうしたらいいのか困っています。

: この女性はうつ病ではないと思います。ご指摘の通り、自称うつ病があてはまるでしょう。
 あなたの書かれていることはほぼもっともだと思います。ただ、この方自身に治したい気持ちがあるかないかまではなかなかわかりません。ご本人は治したいという気持ちがあっても、それが他の人にはわかりにくいというのもよくあることです。
 また、この方の主治医の考え、つまり「彼女を診察している医者は本当に彼女をうつ病だと思って診察して、入院をさせたり、薬を出しているのでしょうか?」まではわかりません。うつ病だと思っているかもしれないし、思っていないかもしれません。仮に主治医の先生もこの方がうつ病ではないと判断していたとしても、だからといって「あなたは病気でないから受診の必要はない」と本人に告げるかどうかは色々な要因がからみますので何とも言えません。(それはともかく、やはりうつ病ではないと判断していると私は思いますが)
 どう接するかは、あなたの考え方次第です。
 忠告するかどうか、関わらないようにしたほうがいいか、それはあなたが決めることです。(あなたはこの方にとって他人ですから、たとえば【0184】のご質問とは意味が違ってきます)
 最後に書かれている、「フェイドアウトする」ことがあなたの希望だとすれば、当然関わらないようにするのが最善でしょう。(あなたが今後もこの方とつきあっていくつもりなら、忠告するというオプションも考えられます。けれどもそうでなければ、「忠告」は余計なお世話だと思います。フェイドアウトするつもりで、それでもなお「忠告」するのは、しばしば捨てゼリフ的になりがちです)


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