精神科Q&A

【0355】境界型人格障害の人に病名を告げるべきか?


Q: 友人に境界型人格障害の若い女性がいて頻繁な電話、メールや自殺未遂、脅しなどに悩まされています。本人は数年前に病院でうつ病と診断され、自分はうつ病であると思い込んでいます。私はそのとき、彼女の病気が境界型人格障害であることを医師に知らされました。
 最近、私は本人にきちっと病名を告げることが本人の治療にとって最善ではないかと思い始めました。彼女に本当の診断病名を告げるべきでしょうか?


: あなたが告げるべきではないと思います。あなたはこの方の治療者ではないからです。
 病名を告げる・告げないも治療方針のひとつです。つまり、たとえば薬を処方するか・しないかと同じように、治療的に大きな意味があります。
 ですから、治療する立場にない人が、いかなる判断にせよ、病名を告げるということは、薬で治療を受けている人に薬をやめさせようとするのと同じことです。その結果起こり得る病状の変化に対応できない以上、いずれも無責任な行為です。
 ですから最初にお書きしたように、あなた自身がこの方を治療するつもりでない以上、病名を告げてはいけません。
 病名をどう告げるかということも、薬を処方するかどうかということも、治療の担当者である主治医の先生に決めていただくべきです。
 なお、「本人にきちっと病名を告げることが本人の治療にとって最善ではないか」というのは、あなたの本心からのお考えとは思いますが、あなたは迷惑を受けている当事者ですので、客観的な判断ができているかどうかは難しいところです。あなたの中で、「本人の治療を考える気持ち」と、「とにかく迷惑だから何とかしてほしいという気持ち」のどちらが大きいか、病名を告げたほうがいいという判断はどちらからきている部分が大きいのかということもお考えください。
 ただ、ひとつわからないのは、「私はそのとき、彼女の病気が境界型人格障害であることを医師に知らされました」という一文です。この「医師」というのは、主治医ということでしょうか。だとすれば、他人であるあなたになぜ病名を告げたのか、それは確認する必要があると思います。

 


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