精神科Q&A

【0344】うつ病の自己診断法の項目は日本語が変


Q: うつ病の自己診断法の20の質問は、由緒あるツングさんが発明したもので信頼性はあるとのことですが、要するに各質問を4段階で数値化したいのでしょうが、日本語として変です。例えば、
「気持ちはいつもさっぱりしている」の何が「無いかたまに」ですか。「時々」って何ですか。
1日のうちで「気持ち」は変化すると仮定して、瞬間々々には「いつもさっぱりしているぞ」と思えたり、「いやそんなことはない、さっきはさっぱりしていたけど今はさっぱりしていない。いつもさっぱりしているなんてことはないぞ」と思えたりするけど、時間的に「いつもさっぱりしている」と思える時間の割合が25%以下なら「無いかたまに」、25-50%なら「時々」、50-75%ぐらいなら、「しばしば」、75%以上なら「いつも」と解釈してもいいですか?
そもそも、
「いつも、気持ちはいつもさっぱりしている」
というのは、重複表現だし、
「時々、気持ちはいつもさっぱりしている」
というのは、さっぱりしていないときもあるから「時々」というのであって、ということは「いつも」に矛盾しませんか。
他の質問項目では、
「最近やせてきた」は、どう「いつも」だったり「時々」だったりしますか。
「食欲はふつうにある」という項目で、「無いかたまに」というのは、「無いかたまに、食欲はふつうにある」ですか。
これはツングさんが作ったものだから、下手に手を加えるわけにはいかないのでしょう。しかしやっているうちにだんだん頭にきて、途中から全部「いつも」にチェックしちゃえ、となってしまいます。

: おっしゃる通り、この自己診断法の日本語は変だと私も思います。あなたのひとつひとつのご指摘はどれももっともです。
 けれども、だからといって日本語を読みやすく書き直すことは出来ません。それは、作成者への義理とかそういう理由ではなく、診断法自体の信頼性が変わってしまうためです。
 というのは、こうした診断法を作成したり翻訳したりする場合は、まずたくさんの人に試験的に実施してみて、回答や得点が実際の状態(この場合はうつの程度)を反映するかどうかを確かめるという作業から始めます。その結果、実際を反映している、すなわち信頼性があるということが確認できて、はじめて自己診断法として利用できるということになります。この意味では、私のサイトのそれぞれの診察室に掲載している自己診断法めいたものの中で、そういう意味で信頼性があるのは、うつ病の診察室の自己診断法と、アルコール依存症の診察室のKASTとCAGEだけです。その他は本来は自己診断法としては使えないものです。(このことは、サイトのそれぞれのページにもお断りしてあります)
 そして、確かめられた信頼性は、あくまでもその時に使った質問項目の文章をそのまま使った時に限られます。ですからもし日本語を書き換えるのであれば、もう一度はじめから信頼性の確認の作業をする必要が出てきます。それをしなければ、適当に作った診断法と同じことになってしまいます。
 この信頼性の確認の作業の段階でわかることですが、得点が事実を反映する、といっても、それは全体として言えることであって、何パーセントかは全く得点と実際が矛盾する人も出てきます(信頼性があるといっても、ひとりひとりの回答者に関しては、得点は目安にしかならないということの背景にはそういう事実があります)。また、いい加減に回答する人や(たとえば全項目同じところにチェツクする)、途中で投げ出したり、最初から回答を拒否する人も出てきます。そうしたことをすべて受け入れたうえで、全体として信頼性があるかないかの検証が行われた結果できたのが、このツングの自己診断法です。
 というような理由のため、診断法の日本語を書き直すことはできないということをご理解いただきたいと思います。
 「やっているうちにだんだん頭にきて、途中から全部「いつも」にチェックしちゃえ、となってしまう」人がいることも、計算に入っているわけです。


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