精神科Q&A

【0337】保護室使用中の患者についての研究方法について教えてください


Q:  私は入職3年目の精神科の看護師です。いま措置入院で保護室使用中の統合失調症(精神分裂病)患者についての研究発表をしています。その患者は施錠中は放尿、放便をくりかえし、暴力行為、放歌、意思の疎通が取れない等の問題点があります。私はその行為が施錠されているためのストレスからくるものではないかと考え開錠時間を長くし関わりを多くすることによりどう変化するのかという研究をしようと考えましたが、うまくまとまりません・・・・どうしたらよいでしょうか。

: 保護室に隔離中の患者さんは、多くの場合非常に重い症状を持っておられるため、なんとか早く開放治療に持っていきたいと医療者なら誰もが考えるところです。その一方で、開放するとかえって悪化する患者さんがいらっしゃることも確かな事実ですので、開放のタイミングの判断は常に苦労するところです。
 あなたのみておられる患者さんの症状が、「施錠されているためのストレスからくるものではないか」という着眼的は理解できます。ただし、施錠されているためのストレスというのは、ひとつの要因ではあっても、症状全体の原因ということはあまり考えられないと思います。もっとも、拘禁反応という言葉があるように、隔離自体は出来れば避けたいのは事実ですので、開錠時間を長くし、関わりを多くするという努力は常に必要ですが、やはり病気の症状というものは厳然として存在しますので、保護室隔離自体が原因ということはまずないでしょう。
 あなたの仮説である、「施錠されているためのストレスからくる」ということの正否を科学的に証明するには、かなり厳密にデザインされた研究が必要です。つまり、まず同程度の症状の相当な数の患者さんを対象として(すでにここで、「同程度の症状」ということをどう客観的に判定するかという難しい問題があります)、無作為に二つのグループに分け、一方は開錠時間を長くし、一方は短くする、という環境を設定し、しかもそれ以外の治療(薬など)は両グループで差がないようにし、そのうえで症状の改善度を判断する(ここでも、改善度をいかにして客観的に判断するかという難しい問題があります)という方法を取ることになるでしょう。しかし、そもそもこういう研究が倫理的に許されるのかということも考えなければなりません。
 以上のような問題がありますので、あなたの仮説を検証することは極めて困難と言わざるを得ません。ただ、実地臨床的には、開錠時間を長くする努力は常に必要だと思います。


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