精神科Q&A

【0291】顎が外れたみたいになるのですが


Q: 32歳男性です。身の回りでショックな出来事が立て続けにあってから不眠と鬱になり、精神科にかかりました。その時処方されたのが、リタリン6錠、セレネ−ス3mg、アモキサン、トレドミン、ワイパックス、ドグマチ−ル、メレリルと言う薬でした。しかし眠気も鬱も一向によくならずにリタリンが無くなると無気力になり、ベッドに横になる、そしてまた薬を貰いに行く、の繰り返しだったのですが、二三日ウツウツと寝たあと何分かすると顎がはずれたみたいになり、口を閉める事も出来ず、物をかむ事も出来ず、舌は硬直し、ロレツが廻らなくなるのです。顎が外れた様に激痛が走り、それが出ると仕事を欠勤しています。主治医にそれを尋ねた所、リタリンの副作用だから、といって、アキネトンを貰いました。しかし、その発作は全然収まりません。うつうつと飯も食わず、水も飲まないで二日とか寝つづける事がいけないのでしょうか?

: これは、急性ジストニアです。「顎がはずれたみたいになり、口を閉める事も出来ず、物をかむ事も出来ず、舌は硬直し、ロレツが廻らなくなる。激痛が走る」というのは、典型的な急性ジストニアの症状です。これは薬の副作用です。あなたの処方されている薬の中では、もっともこの副作用の頻度が高いのはセレネースです(といっても、それは他の薬に比べて頻度が高いということで、そうそうあるものではありませんが)。メレリル、ドクマチールにも可能性はあります。リタリンも、能書(説明書)にはこの副作用があり得ると書いてありますが、私は実際に見たことも聞いたこともありません。頻度は低いと思います。あなたの先生が「リタリンの副作用」と断言された理由は私にはわかりません。常識的にはセレネースが原因と考えるでしょう。
 対策としては、アキネトンやアーテンのような薬を追加するのが普通です。しかしそれでおさまらなければ、原因薬を中止するべきだと私は思います。ただあなたの場合は、原因になり得る薬がいくつもあるので、どれを中止すべきか判断に迷うところです。こういうことがあるために、たくさんの種類の薬を同時に処方するのは一般にはよくないことなのです。
 ただし、初めは少ない種類の薬で治療を始めても、症状に応じて処方を調整するうちに、結果としてたくさんの種類の薬になってしまうことはあります。これもできれば避けたい状況なのですが、現実にはやむを得ないことも結構あります。しかし、あなたのケースでは、「その時処方された薬は・・」とメールに書かれていますので、最初からこれだけの薬が処方されたように見えます。だとすればちょっと賛成できないやり方です。
 しかも、処方の内容が、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、さらにリタリンとなると、一体なにを治療しようとしているのか、私には理解できません。特に抗精神病薬とリタリンは、ほぼ逆の作用の薬ですので、最初の処方としてこの両方を出すというのは普通は考えられません。
 もうひとつ問題なのはメレリルです。メレリルは長い歴史のある抗精神病薬ですが、最近他の薬との併用が危険であることが発表されています。私の感じとしては、メレリルだけが他の薬との併用で特に問題があるとは思えませんが、製薬会社から危険だというレポートが出されている以上、特別な理由がない限りは、あえて併用することは倫理的にも避けるのが当然でしょう。
 以上のような理由で、あなたに処方されている内容や医師の説明は、私には全く納得できません。このような処方では、病気がよくなる見込みはきわめて薄いと思います。

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