精神科Q&A

【0219】クスリの副作用以外の健忘について 


Q: 20歳女です。私は今、「神経性うつ病」で通院しているのですが、最近健忘がひどくてとても怖いんです。例えば、携帯電話の発信履歴に「命の電話」(他にも実家や友だち)の番号が沢山あって、ネットで電話番号を検索してかけたみたいなのですが、全く覚えがありません。同日にリストカットをして、その前後どちらかに電話したようなのですが、切ったことは覚えているのに、電話をしたことはどうしても思い出せないのです。通話料金から見て、2時間くらい話をいていたようなのですが。。
 また、病院へ行った時に、付き添ってくれた彼に家へ忘れ物を取りに行ってもらったらしいのですが、そのことも「そういえばそうだったかなぁ?」程度にしか思い出せないのです。
 それから、もう1週間以上前の出来事だと思っていたことが、ほんの4日前のことだったり、時間がとても早く過ぎているような気がするのです。
 主治医の先生からは、この健忘はクスリの副作用ではないと思うと言われました。うつ病ではよくあることですか?と訊いてみたのですが、言葉をにごされ、先生にもよく分からないと言うような印象を受けました。薬局でも、起床時と就寝前に記憶が曖昧になることはごく稀にあると報告されているけど、やはり副作用とは違うのではないかと思う、と言うことでした。私自信も起床時、就寝前の健忘ではないので、やはり副作用とは違う気がするのですが。
 私は神経性うつ病と診断されていたのですが、この健忘は何か他の病名になるのでしょうか?こういう症状が起こる病気があるのでしょうか?もしかしたら最初は神経性うつ病だったけれど、今は違う病名が付くのではないのでは?と少し不安になっています。

: これは解離性健忘だと思います。副作用とは違います。心理的な要素が強い症状です。幼少の頃の出来事が背景にある可能性もあります(ただしそれを掘り起こすことが治療的に意味があるかどうかは別の問題ですが)
 あなたには薬物と並行して精神療法が必要だと思います。普通のうつ病に対する精神療法とは色彩が違ったものになります。
 診断については、神経症性うつ病というのは広い概念ですので、その症状として解離性健忘が生じても矛盾はありません。もし本などでお調べになる場合は、「解離性障害」「解離性健忘」をキーワードにした方が効率的だと思います。
 ただし、てんかんの可能性もあります。もっとも、症状から考えて、まず解離性健忘に間違いないでしょう。ただ可能性は可能性ですので(てんかんなら治療法は全く違ってきます)、一度は脳波の検査を受けた方がいいと思います。その結果異常がなければ、あなたの健忘症状の診断は解離性健忘ということになるでしょう。
 念のため付け加えますと、主治医の先生が言葉をにごされたのは、よくわからないからではなく、本当は解離性とわかっていても、それを告げることがあなたにとってプラスにならないと判断されたのかもしれません。


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