精神科Q&A

【0034】 2種類の SSRIの併用について


Q: 21歳の女性です。デプロメールという薬とパキシルという薬を併用しています。どちらもSSRIに分類される薬だと聞いています。どのような場合にSSRIを併用するのですか?

 

林:  2種類のSSRIを併用するのは、意味はあるかもしれないし、ないかもしれません。ただ、私なら原則として併用はしません。「原則として」というのは、少なくとも治療開始の時点では併用はしないということです。たとえばデプロメールで治療を始めて、ある程度の効果はあっても十分とは言えない場合、別のSSRIに変えてみることはあります。この場合、一度に全部の処方を変えることはせず、まず少しだけパキシルならパキシルを加える(同時にデプロメールを減らす)というのはよくある方法です。したがって、一時的には2種類のSSRIを併用することになります。そして、もし、全部をパキシルに変える前に、症状がすっかり良くなった場合には、それ以上処方は変えませんので、そのまま2種類のSSRIを使い続けるということがあり得ます。

けれどもこれは結果的に2種類併用になったということで、はじめから併用することは、私ならしません。理由の第一は、併用したほうがいいという根拠がないからです。第二は、もし副作用が出た場合に、どちらの薬が原因かがわからないからです。この理由のため、SSRIに限らず、薬の種類は少なくするのが原則になります。

ただし、経験からいいますと、2種類以上の薬を併用したほうが効くことは確かにあります。その本当の理由はわかりません。偶然かもしれません。副作用が打ち消し合うためかもしれません。もうひとつ、私が可能性が高いと考えている理由は、精神科の薬はどれも脳内の神経伝達物質やそのレセプターを調節するものですが、薬によってその度合いや作用する部位が違いますので、薬の併用によってある一定の比率で調節が起きた時点で症状が良くなっているということです。ただこれは証明することが非常に難しいので、可能性としか言えませんが。いずれにせよ、たとえはっきりした証拠がなくても、経験上は2種類以上の薬を併用したほうが効くことがあることは確かなので、どの薬をどのように併用するかは医者によって見解が違うものです。

 

精神科Q&Aに戻る

ホームページに戻る