精神科Q&A

【0031】  パニック障害なのですが、32条の適応はありますか。


Q: 34歳の女性です。パニック障害で心療内科に通院中です。治療を始めて約半年になるのですが、生活パターンは大きく乱れ、家族にも負担をかけています。こういう場合に、通院公費負担制度(精神保健福祉法32条)を利用することはできるのでしょうか。

林: 申請すれば、32条が適用される可能性は大きいと思います。今かかっておられる先生によくご相談のうえ、申請の方向で考えられるべきだと思います。

 あなたの場合、適用されるかどうかに関してのポイントは2点です。すなわち、32条が@「パニック障害」でも適用になるか。A「心療内科」通院中でも適用になるか。ということです。

@に関しましては、別の項にも解説いたしましたが、32条の適用に関しては厚生省(当時)から次のような通達があります。

法第32条に基づく通院医療の対象となる精神障害は、精神病、精神薄弱、精神病質であって、神経症のうちでも、心因精神病もしくは精神病質のうちに属せしめらるものは、通院医療の対象となる。

(昭和40年9月15日、各都道府県知事あて厚生省公衆衛生局長通達: 精神衛生法第32条に規定する精神障害者通院公費負担の事務取扱いについて より抜粋)

 ここにあげられている疾患の中にパニック障害が含まれるかということが問題ですが、結論だけを言えば、「神経症」に含まれると考えるのが妥当なところだと思います。

 厳密なことを言えば、パニック障害が「神経症」に含まれるかどうかというのは難しい問題ですが、WHOの分類に従えば、パニック障害は「神経症性障害」に含まれていますし、また現在の日本での一般的な考え方としても、神経症のひとつとして構わないと思います。

 また、上の通達には「神経症のうちでも、心因精神病もしくは精神病質のうちに属せしめらるものは・・」とあります。これは現代ではちょっと解釈し難い表現ですが、パニック障害が「精神病質」に含まれるものでないことは確かです。そうすると「心因精神病」に含まれるかどうかが問題ということになりますが、本来は「心因」の「精神病」というのは矛盾した表現とも言えますので、この点についての解釈は人によって違ってくると思います。ただし現実には、神経症でも症状が重い場合は32条が適用されていますので、結論としてはパニック障害でもあなたのように生活パターンが大きく乱れている場合には適用されると考えていいと思います。

 次にAの心療内科通院中であることがネックになるかどうかということですが、32条の適用は、「精神疾患を有し、通院している人」と明記されていますので、精神科でも心療内科でも問題はないはずです。

 というわけで、あなたのケースでも、申請すれば32条が適用される可能性のほうが高いと私は思います。ただし、あなたの症状がどの程度の重さであるかはメールだけでは判断が困難ですし、何より32条の運用は地域によって微妙に違っていますので、「適用される可能性が高い」という以上のことは言えません。主治医の先生によくご相談されることが、結局は第一ということになります。 (2001.4.5.)

 

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