精神科Q&A

【0151】母と兄が統合失調症(精神分裂病)です。私の子どもにも遺伝するのでしょうか


Q: 30歳男性、既婚です。私の母と兄と弟が統合失調症(精神分裂病)です。兄は数年前に自殺しました。現在われわれ夫婦は子供を作るべきか悩んでいます。つまり遺伝の可能性があるのではないかと危惧しているわけです。私は兄の苦しみを目のあたりにして来ましたし、本人だけでなく家族も深く悩んできましたので、われわれ夫婦の子供が欲しいという我がままをかなえる為に子供を産んで、それが、子供自身を苦しめる結果となっては申し訳ないと思ったりしています。また、そうなった場合の親としての苦しみは私にはまだ想像すらできません。統合失調症(精神分裂病)に遺伝はないと明確にHPで述べておられる先生にしてみれば、何を非科学的なことで悩んでいるのだと思われるかもしれませんが、一般に言われる統合失調症(精神分裂病)の罹患率0.8%と比較すると、私の家族内の発症率はかなり高いと思います。遺伝はないと私どもでも理解できるような本、またはアドバイスなどございましたらお知らせいただければありがたいです。


統合失調症(精神分裂病)に遺伝はないと明確にHPで述べておられる

と書かれていますが、私は決してそのようなことは書いていません。私のHP内のどこかの記載を誤解されているのだと思います。できましたらもう一度、精神科Q&Aの【0022】こころの病は遺伝しますか」を最後まで(「続きを読む」を含めて)お読み下さい。そこに私が書きましたように、どんな病気についても、「遺伝するか、しないか」の二つのうち一つのどちらか、という質問は無意味です。どんな病気にも遺伝因子はあります。ただその程度は病気によって違います。統合失調症(精神分裂病)にももちろん遺伝因子はあります。ただし、メンデルの法則に従うような遺伝病ではありません。
 
 統合失調症(精神分裂病)の一般人口での罹患率は、ご指摘の通り0.8%程度です。これが一卵性双生児ですと50%弱くらいになります(つまり、一卵性双生児のうちの一人が統合失調症(精神分裂病)であった場合、もう一人も統合失調症(精神分裂病)である率は50%弱ということです)。また、両親のうち一人が統合失調症(精神分裂病)であった場合、子どもが統合失調症(精神分裂病)になる率は6%程度です。したがいまして、一般人口の罹患率よりは高くなります。親が何かの病気であれば、子どももその病気になる率が高くなるのは、どんな病気でも同じです。問題は6%という数字を高いと見るか低いと見るかで、それは人によって見解が違ってくるでしょう。第三者か当事者かによっても違うでしょう。

 それから、統合失調症(精神分裂病)が多発する家系というものが存在することも事実です。あなたの家系はこれにあたるようです。けれども、統合失調症(精神分裂病)に関連する遺伝子そのものはまだ見つかっていませんので、お子様が統合失調症(精神分裂病)になるかどうかは、統計的な確率でしか言えません。
 
 それからもう一つ、統合失調症(精神分裂病)の経過は人によって千差万別です。残念ながらお兄さまの病状はかなり悪かったように思われますが、逆に健康な人とほとんど変わらない人もたくさんおられます。
 
 以上が統合失調症(精神分裂病)の遺伝について、特にご質問に関する事実の概略です。お子様を作られるかどうかは、事実を認識した上で、ご夫婦で決められることだと思います。


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