精神科Q&A

【0017】 70歳の父が、うつ病で入院治療を受けましたが、退院してからもぼんやりした状態が続いています。薬のせいでしょうか。


もう少し解説します・・

高齢者のうつ病は、一見してぼけてしまったように見えることもよくあります。逆に、認知症(痴呆)のはじまりに、抑うつとか無気力が目立つこともあります。特にこの方のように、70歳に近くなってからはじめてうつの症状が出た場合は、区別することはとても難しいものです。いろいろ検査してもやはり区別がつかない場合は、うつ病として治療を続けるべきでしょう。うつ病ならまず確実に治りますから。

この方は、お父様の今の状態が薬のせいだと強く信じておられるようです。入院して、薬をのみ続けたら無気力になってしまった、という事実は事実ですので、因果関係があると考えるのも無理のないことだと思います。けれども、因果関係の判断はそう簡単ではありません。薬に関して言えば、プラセボ(外見は薬だが、実はなんの効果もない粉のかたまり)をのんで病気がよくなることもあります。プラセボでも副作用が出たという人もたくさんいます。どちらも、それが薬であるという思い込みのために起こる現象です。ですから、薬の効果や副作用は、ダブルブラインド・スタディを十分行ってチェックされます。そういう段階を通過してはじめて認可されるのですから、たとえば性格を変えるという副作用などは「まずあり得ない」と言えるでしょう。

ただし、特にご高齢の方の場合、睡眠薬や抗不安薬の効果が、ふつう以上に長引くことはあります。そうすると、一見するとぼんやりしていたり無気力になったように見えることはあります(性格が変わったわけではありません)。ですから、あまり長期間状態が変わらない時は、いったんは薬をやめてみる価値はあります。ただし、その場合は必ず主治医の先生と相談してから試みることが大切です。急にのむのをやめると、リバウンドといって、いろいろよくない症状が出ることもあるからです。

 

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